昇級祝いとパーティー結成
スタンドでアローンなコンプレックスしてたら書き溜めできなかったなんて言えない()
久しぶりの更新ですが推敲すらせず書き連ねた物なのでおかしいところがあったら教えてもらえると嬉しいです。
昨日も泊まった宿屋の一回は食堂と酒場も兼ねているのでそこで昇級祝いをすることになった。
「アッシュ、昇級おめでとう」
「ありがとう、と言ってもサーシャのおかげなんだろ?推薦権とかいうのを使ってくれたんだし」
「推薦権、と言っても流石に推薦されたからと言ってホイホイ級を上げてくれるものではない。ゴブリン100体を狩ったのだってお前なんだしな。それにどうせ適当に使ったとしても来年にはまた復活する権利だ。それなら見込みがあるやつに使ってやってもバチは当たらんさ」
「年一で使える権利なのか。でもそれならみなし冒険者が上の級のやつに頼んできたりするんじゃないのか?」
「受付も言っていただろう?その権利について知るものから教えてもらわなければみなしの冒険者は知ることがない権利だ。そういうことはまずないな」
結局推薦権というやつはソロD級、パーティーC級以上の冒険者が持つ年間1回使える権利で功績値が足りないが実力、人格共に見込みがあると見込んだみなし冒険者に必要な功績値分の下駄を履かせてやれる権利らしい。
あくまで功績値のみなので確定試験というみなし冒険者から一人前の冒険者として認めてもらうための試験は受けなければいけないのだが当然、その試験に受かる確信があるからこそその権利を使うのだとか。
「しかしあれじゃないか?いくら確定試験が常設依頼として扱われてるからとは言え部位を既に所持している状態で試験を受けてっていうのは不正とかがありそうなもんだが・・・」
「それは他人から必要分の部位を買ったり推薦者が部位を融通するということか?」
「そうそう、例えば普段は薬草集めとかで功績値を貯めて確定試験が受けられるようになったら今までの依頼で貯めた金で部位を買って提出するとかさ」
「それをするやつはいないだろうさ。ギルドカードに付与されている記録の魔法は誤魔化せない」
「成る程、確かに受付の人も言っていたな。だからあらかじめ狩っておいてもそれを狩れるだけの実力があるから問題ないということなのか」
「まあそういうことだな。しかし何から教えて行けばいいのやら・・・アッシュ、お前にどれだけ物を教えれば済むのか私には検討がつかんぞ?」
「すまん、自分でもわからんな」
「うむ・・・提案なんだがしばらくパーティーを組まないか?共に行動しながら都度わからないところを教えてやったほうが楽だろう?」
それは、確かにその通りだ。そもそも何を教えてもらえば一通りの常識があるのかがわからない。そんな状況で近くに物を教えてくれる人がいる、ということはたいへんありがたいし願ってもいなかった提案だった。しかもサーシャはソロD級だ。そんな冒険者とパーティーを組めるとなるととてつもない恩恵がある。
「その提案はありがたいんだが・・・いいのか?サーシャはソロC級への昇格試験が控えているのだろう?それにサーシャなら俺なんかより実力のある冒険者たちとパーティーが組めるはずだ」
「試験については問題ないな、別にパーティーを組んだからと言って受けられなくなるものではない。しかしアッシュ、お前は自己評価が低いな。確かに実力だけで見れば今は(・・)お前より遥かに上の冒険者とも組めるだろうが私は女だ。冒険者の全てがそうだ、とは言うつもりはないが組んで最初のうちはともかくよからぬ考えを持ち、あまつさえ実行しようとする輩もいる。その点、アッシュなら安心出来ると判断した・・・それに、その、なんだ・・・と、ともかくだな私はお前とパーティーを組みたいと思っている・・・」
「そっか・・・それじゃあ、俺とパーティーを組んでもらっていいか?いや、俺とパーティーを組んでくれ」
そう言って手を差し出す。少し不安そうなサーシャの顔が花が開いたような美しい笑顔に変わって俺の手を固く握ってきた。
「うむ、アッシュこれからよろしく頼む」
「よろしく。早速なんだが質問してもいいか?」
「ああ、いいぞ。私が答えられる範囲で答えよう」
「まずはゴブリンを狩った時にも言ったと思うけど、イメージ通りに体が動くことってそんなによくあることなのか?」
「そのことか、それならよくあることだな。普通、イメージした動きができるような時というものはコンディションや集中力が高まってる時に起きる偶然なのだが、それは大抵の人間がイメージしている動きが多少自身の持てる能力から逸脱しているからだ。故に起きても稀なのだが加護を受けていれば話は違う。肉体の格が上がった時に体の能力がその多少の差を埋めてしまうからイメージ通りの動きが出来るようになるのだ。まあ、格が上がってもしばらくすればまたイメージと実際の動きに差が出てくるものだがな」
「加護と格ってのは何なんだ?」
「加護は神が与えてくれる物だが・・・そうか、その言い方からするに今まで加護を受けたことがないんだな?」
少なくとも俺の記憶には宗教施設に寄った覚えはないしテンプレのように神様に会ってチート能力をもらって転生をした訳では多分ないと思うので加護を受ける機会なんか無かったはずである。
「生まれてこの方神様や宗教施設には縁がないが・・・そもそも神様って本当にいるのか?」
「いなければ加護が貰えるはずがないだろう?それに始まりを司る神「オージン」様以外の神々はほとんどが人や亜人から昇神されたからたまに下界の空気を味わいたくて神界から降臨されてこられるから存在してるのは間違いないぞ」
どうやらこの世界は神様が実在してるどころかたまに降臨してくるのだとか・・・神様ってそれでいいんだろうか・・・というか人や亜人が神になったのか・・・。
「神様がいるってのは解ったんだが、結局加護で身体能力が上がるってことでいいのか?」
「いや、それは合っていると言えば合っているのだが・・・正確に言えば違うな。経験と鍛錬を司る神「トレール」様が与えてくれる加護『鍛身』により経験や鍛錬を積むことによって心身の格が上がることで結果的に身体能力が上がった、というわけだ」
「加護ってすごいな・・・しかし俺はその加護を受けた覚えはないぞ?」
「大抵のものはある程度の年齢で教会に行って加護を受けるのだがな・・・お前の場合は偶然トレール様の目に止まって加護をくださったかお前に興味を持った他の神がトレール様に頼んだかのどちらかだろうな。ギルドカードでステータスを確認してみろ」
言われた通りに確認してみる。
アッシュ・グレイスケイル※シール
深度:1
種族:竜人※シール
固有値※シール:体力 20⁺5 頑強 35⁺4 知力 27⁺6 精神 15⁺7 俊敏 32⁺9
種族特性※シール
竜鱗操作3 竜鱗生成2 竜化1() ブレス2 目利き3
スキル※シール
体術2 剣術1 放出1 走破3
固有スキル※シール
コントロール3 効率化4 ※※※※※2
加護
鍛身 ※※※※※※
「ステータスに深度と加護の項目が増えてるな」
しかし、加護ってそんなに安っぽく与えられていいんだろうか・・・いや、サーシャが特に何も言わないってことは神様が気まぐれ的な感じで加護を与える事ってのは珍しくないんだろうな。固有値についている+は加護のなのだろう。
「そういえば鍛身の加護以外にはどんな加護があるんだ?」
「そうだな・・・有名なところでは職業系の加護が多いな」
鍛冶や農業、様々な職業に有用な加護があるらしい。例えば鍛冶なら精錬の加護、農業なら肥沃の加護があるとか。また、剣の加護や盾の加護と言った戦人向けの加護もありサーシャも剣の加護を持っているそうだ。
「それに加護には面白い効果がある。神罰覿面と言う神官が覚える神罰の模倣魔法に加護を持ってる神の特徴が出るらしい」
「へぇ?どんな特徴が出るんだ?」
「そうだな、例えば私が持っている剣の加護だと切断の属性が乗ると聞いた事がある」
「ジャッジフィストなのに切断ってどう言う事なんだ・・・?」
「そう言う物と思うしか無いだろう」
「確かにな。しかしそれだけ神様が多いと宗教毎の対立が凄いんじゃ無いか?」
前世でも宗教同士の争いは酷い物だった。信奉すべき神が多ければその主張の差による対立は起きるのが必然だろう。
「宗教毎の対立か?昔はあったらしいが今は無いのではないか?」
「へっ?」
「昔は一部の宗教が権力を持っており宗教国家が複数存在して権勢を競っていたのだが、いくつかの国が神々の言葉を偽ったり都合よく解釈したりして余りにも酷かったため神罰と神託が下った結果、今や宗教国家は存在していないんだ。ちなみに、下った神託は「神が実在してるのに宗教で対立し伝えた事を偽り、いいように解釈するとはいい度胸だ、今後は宗教が政治に関わること、宗教で争う事を禁ずる。破ったら神罰な」だったそうだ。」
神託がそれでいいのか・・・でも確かに実在するのにそんな事をするのは愚かだとしか言いようが無いだろう。
「そうなのか・・・加護については大体わかった。
「法律か・・・どんな事が犯罪になるかぐらいでいいだろう?税に関してはギルドから自動的に納められるしな」
「ああ、それで頼む。知らずに犯罪をして捕まりました。なんてことになったら洒落にならん」
「そうだな、基本的には殺人は死刑だ。相手が殺人を犯していたりすれば正当防衛になるな。窃盗は指切りだな。偽証罪は通称嘘つきの証と呼ばれる刺青を顔に刻まれる。大まかにはこんな所だが後は場合によってはどの犯罪でも犯罪奴隷として奴隷落ちする事があるな」
「奴隷制度があるのか?」
「ああ、まあ犯罪奴隷と普通の奴隷では扱いは段違いだがな。普通奴隷は衣食住と安いが労働に対する報酬を主人が保証しなければならない。基本的に借金が返済出来ずになる物が多いな。それと人としての権利は失って無いから主人から理不尽な命令を受けたり仕打ちをされても訴える事が出来る。しかし犯罪奴隷は別だ。1番重いのが重犯罪奴隷だが衣食住の保証はされないし当然労働に対する報酬も出ない。理不尽な命令や仕打ちを受けても訴える事なんて当然不可能だ。万が一死んでも主人が罪に問われる事は無いな」
死刑と重犯罪奴隷がイコールって感じなんだろう。
「ちなみにどんなことをすると重犯罪奴隷になるんだ?」
「そうだな・・・どの犯罪でも回数が多ければ重犯罪奴隷になる可能性はあるが、一発で決まってしまうのは国家反逆罪だろうな。まあまともな冒険者なら犯罪に関してはあまり気にする必要はないだろう」
「確かにな。しかしまともじゃない冒険者もいるってことか?」
「表向きまともそうに見えて裏で犯罪を犯している者たちはいるな。気をつけておけ」
確かに気をつけなくてはいけないだろう。一度うまみを知ってしまった奴らはそこから抜けることができなくなる。特に冒険者のような力が物をいう職業だとなおさらだ。
「アッシュ、せっかくの昇進とパーティー結成祝いなんだ。お互いのことをもう少し知っておくべきだと思わないか?」
サーシャがジョッキを片手に何だか不安になる笑顔を浮かべる。あ、これは酔ったら人に絡み出すタイプのやつだ。