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頼みと鍛冶師---お支払いは体(意味深)で---

前回アッシュはゴブリンを一体しか倒していませんが決してアッシュがチキンだからというわけではありません。慣れない人が林の中にどんどん入ってくと作者みたいに何時間も彷徨うことになるので気をつけましょう。

街に戻った俺はそのままギルドへ行き薬草を納品して報酬の大銅貨4枚を受け取った後、依頼が張り出されている掲示板を眺めていた。報酬は大体大銅貨数枚から高くても金貨1枚程度といったところで、書いてある内容からしてもそこまで難易度が高い依頼がある様子は無いようだ。


何か街中でできそうな依頼はないだろうかと思いつつ探してはいるがそういった依頼は大体が専門知識が必要になりそうな依頼だったり条件が指定されている。

特に知識が必要だったり条件のない依頼はないのか受付の青年に聞いてみたが、そういった依頼は低ランクの冒険者がすぐに受けていってしまうため朝の比較的早い時間じゃないとあまり無いようだった。


「うーん、流石にまだまだ時間も早いし・・・これからどうするかな」


あまりにも時間があるのでいくら早めに宿を取っても意味がない。

まだアーデに借りた額も稼げていないのにアーデの家に行っても迷惑だろうし本格的にやることがない。

お婆さんに塗り薬の作り方でも教えてもらおうか・・・いや、そもそも教えてくれるだろうか?なんて事をブツブツ言いながら考え事に熱中していたら気づかぬ内に近づかれていた何者かに肩を叩かれた。


「ちょっといいか?」


「うおっ!?」


口調は少し粗野だが女性の声に慌てて振り返ると思わず目の前の人物に見とれてしまった。およそ160センチぐらいの身長にグラマーで冒険者とは思えない白い肌をした身体。気の強そうな顔だが相当な美人だ。銀色のロングヘアーがとても似合っていて左目に眼帯をつけているが女性の魅力を損なってはいない。革鎧を来て背にロングソードを背負っている。


「いきなりで済まないが、おまえは竜人で間違いないよな?」


「・・・あんたは?」


「これはすまん。気が急いて礼を欠いてしまった。私はサーシャ・アリアダイトだ。それで、君は竜人で間違っていないよな?」


「俺はアッシュ・グレイスケイル。確かに竜人だがそれがどうかしたか?」


いきなり不躾な質問のようにも感じるが特に悪意を持っているわけではなさそうなので素直に答える。さて、一体何のようだろうか?


「そうか!なら話がしたいのでついてきて貰えないだろうか?頼みがあるんだ。もし、聞いてくれるなら報酬も払う。どうだ?」


「頼みって・・・そもそも俺は登録したばかりだぞ?あんたの役に立てるとは思わないんだが・・・」


「いや、ランクなんて関係ない。おまえだからこそ頼みたいんだ・・・ダメか?」


不安げな顔になるが・・・うん、可愛いな。美人顔だが不安そうになると子供っぽさが出てきた。よし、とりあえず話を聞くだけ聞いてみよう。下心?もちろんあるに決まってる。俺だって健全な男だ。


「わかった。とりあえず聞くだけ聞こうじゃないか。どこで話をするんだ?」


「む!聞いてくれるのか!よかった、それならうまい飯屋がある。そこで食事でもしながら話そう!もちろん私のおごりだ!」


不安そうだった顔が一転して華やかな笑顔になる。うん、なんだこいつ、可愛いぞ。なんて考えていたら手を取られ引っ張られていく。




「それで、頼みたいことっていうのは何なんだ?」


一通り食べ終わったところで話を切り出す。

飯屋についたとたん彼女は止めるまもなく色々と注文していった。運ばれてきた料理はどれもうまかったのだが食べきれなかったらどうするつもりだったのだろうか?


「ああ、私は近々C級に上がるための昇級試験を受けようと思うのだが武器と防具の更新をしようと思っているんだ」


「へぇ、C級ってことはあんた相当強いんだな。しかしそれになんで俺が関わってくるんだ?」


素直に感心した。私たちでないということは恐らくこの人はソロで活動しているのだろう。

ソロで現在D級ということはパーティーでのC級相当だということだ。

ちなみにギルドのランク評価ではソロ評価の方上でパーティー評価の方が低い扱いを受ける。ソロでランクが高い方が質がいい、というわけだ。同じ依頼でも一人でこなしてしまう人間のほうが優秀なのは明白である。


「それは君が竜人だからだ。竜の血を持つ者たちの鱗を金属に溶かし込むと素晴らしい武具が作れるというからな。君の鱗を分けてもらえたらと思っている」


「へぇ、そんな効果があるのか・・・確かに丈夫だとは思うがそんな使い道もあるんだな」


「竜人なのに知らなかったのか?」


「ああ、ずっと村で暮らしてたからな」


「ほぉ、そうなのか・・・それで、どうだ?分けてくれるか?」


彼女の言葉に考えこむ・・・一応報酬も出してくれるようだし別に分けても構わないとは思う。しかも現役ソロD級の冒険者だ。縁を作っておいて損はないだろう。


「・・・うん、いいぞ」


「本当か!」


「ああ、ちゃんと報酬はくれるんだろう?ちょっと待ってろよ」


そう言って腕のあたりの鱗を剥いで行く。不思議なことに自分でやるとポロポロ剥がれるのだ。感覚的には日焼けした皮膚を向いている感じで痛みも一切ない。竜鱗生成を使いつつおおよそ500円玉を一回りほど大きくしたサイズの鱗を50枚程剥いてみたところで彼女が困惑していることに気が付く。


「とりあえず50枚程剥いてみたんだが足りないか?」


「足りないどころか多い・・・いや、多すぎるんだが・・・」


「じゃあ問題ないな、大いに越したことはないだろう」


「そういう問題じゃないんだが・・・そうだな、どうせなら私の行きつけの鍛冶屋までついてこないか?」


「ん、いいぞ。万が一足りなかったらその場でまた剥げばいいしな」


「・・・だから多いと言ってるのだがな、こんな大量の鱗の対価など持ってないぞ」


何か言ってるようだがよく聞こえなかった。まあ、はっきりと言わなかったってことはどうでもいいのだろう。一旦鱗を取り出した革袋にしまってからサーシャと一緒に鍛冶屋へ行くことになった。



「おお、いいなこの鍛冶屋、なんていうか隠れた名店って感じがすごくいい」


「そうか、確かに私もこの店の雰囲気は好きだがまさしく名店だぞ。他の形から入る鍛冶屋とは比べ物にならん」


名店っぽく見せて腕が大したことのない鍛冶屋もいるってことか。そこらへんの目利きに自信があるわけないから情報はしっかり集めたほうが良さそうだな。

サーシャは特に何も言わずに店に入っていったので俺も慌ててついて行く。


「すごいな、こりゃあ・・・男心が擽られる」


「気持ちは分かるぞ。ここの武具は素晴らしい出来がからな。こっちだ、ついてこい」


そう言ってカウンターの横にある扉を開けるサーシャ、勝手知ったるなんとやらといったところだろうか。


「おいおい・・・サーシャ、どっからこんだけの竜鱗をもって来たんだ?・・・お前さんの武器じゃ亜竜は狩れない筈だ。中央大陸に行ったと聞いたがまさか盟約を破って子竜を狩ったんじゃねぇだろうな?」


「失礼だな、ゴーヴァン。私は命知らずの愚か者じゃ無いぞ。確かに中央には行っていたが依頼を受けてだ。何だったらギルドに確認してくれても構わん」


サーシャは扉の先にあった工房の中にいるずんぐりむっくりとしたゴーヴァンというおっさんと話している。多分ドワーフじゃないだろうか?


「じゃあどうやったって言うんだ?これだけあればとんでもねぇもんが作れる・・・ん?後ろの野郎は誰だ?」


「彼は竜人だよ。その鱗は彼から貰った物だ」


「こっち(・・・)の大陸に竜人だと?珍しいな!おい、おめぇなんて名前だ?」


「俺はアッシュ・グレイスケイル。昨日登録したばかりの冒険者だ。よろしく頼む」


「ほう、銀灰の鱗か。名前の通りいい鱗じゃねぇか。俺はゴーヴァンだ、好きに呼べ」


「村では評判が良く無かったからいい鱗かどうかは知らないがこれで問題無いのか?」


「ああ、問題ねぇな。立派な鱗だ」


そう言われると何だかむず痒くなって来る。


「そう言って貰えると嬉しい」


「そうか、所でお前さんは武器や防具は要らんのか?冒険者なんだろう」


「武器は必要ない、基本的に蹴ったり殴ったりで何とかしてるからな。防具は駆け出しだから買うに買えないんだよ」


「だったらもうちょっと鱗を置いていってくれ。竜鱗は貴重だからな、それの対価として作ってやるよ」


おお、ありがたい。表に置いてあった武具を見る限り腕はかなり良さそうな鍛治師だ。そんな人に作って貰えるのに対価が俺の鱗程度でいいとなればかなり破格だ。


「マジか!だったら剥いておく。何処におけばいい?」


「そうだな、あっちの籠に入れといてくれ」


ゴーヴァンが指差した所にある籠の所まで行く。そう言えば枚数を聞いてなかったが取り敢えず籠いっぱいに入れとけばいいか。


「なあサーシャ、お前さんの事だからちゃんと対価は払うつもりなんだろうが金は足りんのか?」


「そこが困っている。既に剥がされた鱗を体に戻す訳にはいかないからな・・・かと言ってそのままにしておくにはもったいない。何かいい案はないか?」


「そうさな、奴さんも男なんだ。一発体で払っちまえば満足するんじゃねぇか?」


「なっ、そんなはしたないことができるか!そもそも私なんかに興味を持つ男はおらんだろう・・・」


「そんなこたぁねぇと思うんだがな・・・じゃあどうするってんだ?」


「うう・・・だからいい案がないかと聞いているんだ」


「知らんな、話し合って解決するといいさ」




「だから別に良いって。俺の鱗なんてそんなに価値は無いだろうし」


「そんな事は無いと言ってるだろう!今の私では支払えぬ価値があるんだ」


困った。実に困った。今、俺とサーシャは報酬に関しての事で揉めている。

ちなみにゴーヴァンの店からは追い出された。痴話喧嘩は別のところでやれとのことだ。サーシャは顔を真っ赤にして反論していてかわいいと思いました(小学生並みの感想)。

別に少ないと言う訳では無く逆に多すぎる。俺は銀貨数枚貰えれば十分だと思っていたのだがサーシャはギルドカードから有り金全部を出して尚、鱗の代金には足りないと言っている。

俺の目の前にあるテーブルには金貨や銀貨が積み上がっていた。


「そう言われても俺は銀貨数枚貰えれば良いかなと思ってたし、おかげでゴーヴァンっていう腕のいい鍛治師も教えて貰えたからな」


「おまえは常識が無いのか!竜鱗が銀貨数枚と釣り合う訳がないだろう!」


確かに常識はないのだが他の奴の鱗なら兎も角俺の鱗がそんなに価値があるとは思え無い。


「じゃあどうすんだ?ゴーヴァンは既に俺の鱗で作り始めてるぜ」


「むぅ・・・どうするか・・・最早体で支払うしか・・・しかし私なんかでは・・・」


何だか頭を抱えながらブツブツ言っているがどうしたのだろうか?うーん、何か彼女が納得してくれるいい案が・・・そうだ!


「よし、そんなに言うなら足りないと思う分は体で支払って貰うか!」


「ひゃぃ!?」


サーシャが顔を真っ赤にして変な声を上げた。何だかかわいいぞ。いや、かわいい(確信)。

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