ギルドへ登録ーーー喧嘩は売られなかったーーー
早くも評価ポイントがついててびっくりしてます。
「・・・おはよう?」
「おう、おはよう」
疑問形だったのは俺が台所に立っていたからに違いない。昨日頂いたアーデお手製の夕飯はお世辞にもうまいとは言えなかった。とはいえアーデが味覚音痴とかそういうことは無いようで単純に料理の経験値不足だと思われる。大して料理をしたことがない子供に教えておかなかった親の責任だろう。
「勝手に使わせてもらってるが、ダメだったか?」
「ううん、構わない・・・料理・・・できるの?」
ふるふると振ったあとにこてんと首をかしげる。・・・破壊力(可愛さ)半端ないなおい。
さて、俺の料理力がどれぐらいかというと少なくともアーデよりは上なのは間違いない。前世で一人暮らししていればつく最低限の料理スキルはある。
「まあ、いわゆる男料理ってやつだが味に問題ないことは保証する。なんか苦手なものとかってあるか?」
「・・・特にない・・・たのしみ」
好き嫌いがないのはいいことだ。
できた料理を皿に移してテーブルに運ぶ。朝食だし軽めでいいだろうと作ったメニューは簡単なサンドイッチだ。卵とハムサラダ、まず外すことはないだろう。
「そんじゃあいただきますっと」
「ん・・・我が糧となる生命に感謝をささげます・・・」
うん、まあこんなもんだろ。村では見たことのない野菜を使ったので少し味に不安はあったが大体見た目で予想したとおりの味で安心した。
そもそも村には極端に野菜がなかったんだよな・・・やっぱり竜だから肉食なのだろうか・・・?
「・・・!・・・おいしい!」
「口にあったら何よりだ」
目を輝かせてサンドイッチを食べるアーデに思わず苦笑する。やっぱり美味しいと言ってもらえると作りがいがあるもんだ。
さて、食べ終わって人心地付いたところでそろそろお暇するとしよう。なんにしろやることは多いのである。
「それじゃあ、世話になったな」
「むぅ・・・」
アーデの寂しげな表情に内心嬉しくなる。
「ちょっとまってて・・・」
と言って昨日、俺が目覚めた部屋に入っていくアーデ。一体どうしたのだろう?
すぐにアーデは戻ってきた。手に持っているのは小さな革袋だ。
「これ、登録の時に必要だからつかって・・・」
受け取って中を確認すると数枚の銀貨が入っていた。確かに金は持っていないからありがたいけれど・・・
「本当にいいのか?助けてもらって一晩泊めてくれただけでも十分感謝してるんだが・・・」
「ん、昔お母さんがギルドに登録するときに前借りしたら返すのにとても苦労したって言ってた・・・だから遠慮しないで」
「そういうことなら・・・ありがたく貸して(・・・)もらうとするよ。出来るだけ早く返しに来る」
そう言うとアーデは驚いた顔をした本人としてはあげるつもりだったのだろう。
別に俺だってくれると言うならもらうがあくまで借りとしておけばまた会うことの理由付けになるからだ。
「ん、待ってる。気をつけて・・・無理はしないで」
「おう、もう死にたくないから気をつけるさ」
どうせなら村の奴らを見返せるぐらいには強くなりたいものだ。
そんな事を思いながら、アーデの家を後にした。
やって来ました、アウロディアの街の中央道。
この街の主要なお店なんかは大抵この通りにあるらしい。
目の前には明らかにそうなんだなと納得できる立派な建物がある。
そう---冒険者ギルド---だ。
とりあえず建物を眺めていても始まらないので西部劇の酒場にある様な両開きの扉を開けて中に入ると何ともテンプレ的ないかにも冒険者ギルドと言った光景が広がっていた。
「おお・・・なんか感慨深いな」
ファンタジーに憧れを持っていた身としては中々にテンションが上がる光景である。
ギルド内には冒険者の数は少なく、遅くほとんどは依頼をこなして居るのではないだろうか?
幾つかのカウンターは受付の人と冒険者が話をしていたりする。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件をお聞きします」
空いていたカウンター行ったらごく普通の青年っぽい受付だった。
ああ、テンプレ的に受付嬢がかわいい子揃いなんて早々ないよなぁ。
「冒険者ギルドは初めてでしょうか?」
「ああ、そうなんだ。冒険者登録をしたくてな」
「畏まりました。説明は必要でしょうか?」
「頼む」
「それでは説明を始めさせていただきます。冒険者ギルドは平民、貴族を問わずに一般の方から受けた依頼を冒険者に斡旋する機関です。冒険者にはある種の特権が与えられますが、その分命を賭ける事も時には必要となります」
特権---特殊な税計算や街から街、国から国への移動がしやすくなると言った所が分かりやすいだろう。
税はこなした依頼から1割が毎回自動的に引かれる様になっている。依頼をこなすノルマは一応あるが遥かに優遇されている。
また、魔獣などの素材の買い取り時もギルド内に限り売却価格の2割で済む様だ。
街や国の移動は普通、移住となってくると過疎化対策のため領主や顔役の承諾が必要な事が多いが冒険者はある程度の実績が出来れば移動が可能になるそうだ。
「別に実績が無くても依頼で外に出られるならそのまま別の街に移動したりする事も出来るんじゃないか?」
「過去に移動するためだけにギルドへ登録した者が数多くいたため現在では対策がなされています」
領民の大流出が起きかけた所為で対策されているらしい。
ギルドカードに記載されている実績が足りない場合は門番に拒否されるし、何らかの方法で入れたとしてもギルドカードの書き換えを受け付けてもらえ無く登録し直そうとしても過去の登録情報からばれるとか。
「ノルマは年間にランク相当の依頼10件となりますが、高ランクになってくるとそもそもランク相当の依頼が少なくなってくるので変わってきます。また、税が優遇されるのはあくまでも依頼に対する報酬やギルド内の素材買い取り時に限ります。街で家を買った場合などはその街に税を納める必要が出てくるので注意してください」
年間10件っていうのは破格だな。まあ冒険者なんて職業だしこんなものだろうか?
「依頼に関してですが常設依頼に関しては受け付けを通す必要はありません。指定部位の納品で処理させていただきます。その他の依頼はランク以下の依頼が受注可能となりますが、一部特例で高ランクの依頼を受ける事が出来る事もあります」
「その一部特例ってのは?」
「例えばですが特殊な採取依頼ですね。ランクが達していなくても対象に関する知識を持っている方に受けていただく必要があるものなどです」
なるほど、そういった知識がないとそもそも無駄になるからか。
「後は犯罪関連でしょうか?・・・冒険者同士であればちょっとしたケンカ程度なら多めに見られますが、流石に殺してしまった場合は何処でも犯罪者として扱われますので。ああ、と言っても命に関わる場合はある程度の武力行使は許されますよ。多少の聴取は受けますが」
「わかった、と言っても流石に犯罪なんてしようとはしないさ」
「では登録に移らせていただきますね。まずは登録料金として銀貨2枚を・・・はい、確かに。それではこちらのカードにどれでもいいので指を押し付けてください」
言われた通りに指を押し付けてみるとカードに名前とランクが表示された。
アッシュ・グレイスケイル
現在ランク H
「無事登録完了ですね。ああ、伝え忘れてましたがステータスや依頼の実績に関してはカードにエンチャントされている共有と記録の魔法によって保存されています。確認したい場合はカードを手に持って「開示」と唱えてください。また、同じようにエンチャントされている保管と重封の魔法によって容量にしておよそ1トンまでの物を重さを感じさせず収納する事も可能です。もし、それ以上の容量が必要となった場合各支部で有料ですがアップグレードが可能です。収納する場合は対象にカードを当てるだけ、出す場合は出したい場所にカードを向けて取り出したいものをイメージしてください」
驚いた。たった銀貨2枚で俗にいうアイテムボックス機能のついたカードが貰えるのか。
「本当に銀貨2枚なのか?もっと高くても不思議じゃ無いと思うんだが・・・」
「ええ、本当に銀貨2枚です。この保管と重封のエンチャントは高名な付与魔術師であるジップ・デクレー氏が5年前に作り出した画期的な低コスト付与魔術だからこそこの価格なんです。持つ荷物が格段に減る為冒険者にとって何よりもありがたい術ですよね・・・おや?如何されましたか?」
思わず頭を抱えてしまう。いや、ジップ・デクレーってツッコミ所ありすぎだろ!まさか俺みたいな転生者なんじゃ無いだろうか・・・
「いや、なんでも無い。少し名前に聞き覚えがあってな・・・」
「そうですか・・・こちらはギルドで常設されている依頼です。比較的に簡単な物となりますのでよろしければご自分の指標としてください」
そういって渡されたのは複数のドックタグのようなものだった。
依頼名がそれぞれ記載されている。
「これはどう使えばいいんだ?」
「こちらもギルドカードと同じく手に持って「開示」と唱えて使用します。依頼によってはどの部位を納品すればいいのか、対象がどんな姿なのか、対象がある場所までの地図などといった情報が見れるのでとても便利です」
それは確かに便利だ。
「幾つかの依頼は討伐対象の指定部位のみで結構、というよりは素材としての使い道のないものなので余裕があれば死体はグール化した時に驚異とならないよう手足の腱を切って置くようお願いします。できれば歯も叩き折って頂ければありがたいです」
確かに腱を切っておけば動けなくなるので驚異でなくなるのだろう。歯を叩きおるのも万が一噛まれても歯がなければ対して問題にならないからだ。
「わかった。色々とありがとう。とりあえずいくつかやってみることにする」
「ええ、頑張ってください」
青年の一礼を受けてギルドを後にする。ここから本格的な俺の異世界ライフが始まるのだ。冒険者として行けるとこまで行ってみよう。




