二話 加護の内容と初めての探索
「あなたの加護は『妖精の寵愛』スキルの所得の補助が主な効果です。」
「『妖精の寵愛』・・・スキル所得の補助か」
「『妖精の寵愛』、元は妖精が特に気に入った生物に対して与える加護です。効果は、妖精が特に得意とする風、木、光、闇の属性魔法、時間、空間の特殊魔法を得やすくなります。
具体的には、本来適性が無かったこれらの属性を使えるようになり、加護持ちとそうでない人の修行量を比べると何倍も早く魔法を早く得ることが出来ます。」
修行で何倍も早く得る事が出来る。つまり始めから使えるわけではないってことはないってことか?
「今この加護が役に立つことは」
「身体強化系統のものは妖精は持っていませんし、魔法も今すぐ使えるわけではありませんので現状、異世界にいた時と同じ状態と思ってください。」
日本にいた時と同じ・・・運動なんてほとんどやってないんだ。とてもじゃないが直接戦闘なんて無理だ。魔法も現状使えない。
「えっとつまり今の状態は人のいる安全な場所に向かうことも出来ず、魔物のはびこる森の中、戦う手段が無いことでいいのかな。」
「はい、それと私は身体能力は見た目通りのものす。魔法も戦闘に使えないものが一つあるだけですので戦闘は出来ないと考えてください。」
最後の希望が絶たれたようだ
いや、予想通りだったけれども!あいつは成熟したところ以外は未成熟って言っていたし
「そうか・・・。でもこれからどうするか、ここに留まり続けても魔物とか危険な生物が寄ってくるかもしれないし」
「それは大丈夫です。『鏡花城』は元々神が収める国の首都としてあり、同時に転移陣の配置場所として
存在していました。魔物に荒らされてはいけないため『鏡花城』には神が直接魔物払いの結界を作っています。なので現在廃墟になっていますが、この廃墟の中だけは魔物が入ってくることはありません。」
「じゃあ廃墟の中だけは安全ってことか。村まで出れるようになるまでここで鍛えることが出来るな。食料は・・・」
廃墟の中にはところどころに木や草が生えている、廃墟の外にはうっそうとした森になっている。木の実を見つければ食料は持つと思う・・・サバイバル経験なんて無いし、異世界の実なんて分からないから毒が混ざる可能性があるから怖いが
「食料が安全かどうか、その知識は覚えさせてもらっています。毒物かどうかは見させてもらえればお教えします。」
「本当か!よかった・・・」
「ただ、廃墟から外に出れば魔物が現れますので襲われる可能性はあります。」
やっぱり生き残るには力を付けなきゃだめか、それも急速に。廃墟の中で手に入る食料なんてそんなに多く見つからないだろうし
「これからどうしますか?」
ルティナは首を少し傾け、顔を覗き込むように聞いてくる。元々かわいい、って違う
「まずは寝床の確保からだな。野宿を続けていたら体を壊す、最低でも雨風を防げるような場所でないと。そんなわけで廃墟で使えそうな場所を探すぞ、使えそうな物と食料も一緒にな。」
「はい」
ルティナは頷き、俺たちは二人で廃墟の中を歩いていく。廃墟の中には軽く100歳は越えてるような木が何本かあるし、物にはあまり期待が出来ないけどな
閑話休題
俺たちが転移してきたのは朝方だったようだ。日が傾け始めた頃、寝床は見つからず、転移陣のある石部屋を寝床にすることにした。しかし、掃除をしなければならないことに気付き探索を止め、見つけたものを部屋の前まで持ってきた。
「結構沢山あったな」
「木の実や食べれるキノコが廃墟の中でも手に入ったのは行幸でした。」
見つけたもの
ぼろ布 沢山
錆びた剣 一本
錆びた鍋
錆びた金属の板、欠片
木の実、キノコ 一週間分
薬草 五束
小さな池
「水の確保が出来たのが大きかった。水が無かったら死んでたよ。にしてもあの赤いキノコが食べれるとは思わなかったよ」
傘の部分が見事に赤一色のキノコがあったが、毒と思ってダメ元でルティナに聞くと食べれる物だったのだ。
ルティナは聞かないと教えてくれない。探索中に薬草を見つけたのも刺々しい葉っぱで気になって聞くとすり潰せば傷薬になると知った。
ルティナの精神は未成熟なのだと思った。あの女から聞いてはいたけど、実際に関わってみるとわかった。自主性がない、というよりもどうすればいいか分かっていないのだろう。一度教えれば次からはそうしてくれる。でもそれ以上は何をすればいいか分からずそこで止まってしまう。
他に感情が無いわけではないらしい。探索中も表情がほとんど動かなかったが、つい、頭を撫でて褒めたことがあった、その時、口元がほころんでいるように見えた。
神っぽいのが作ったってことで色々気にしていたが、普通の子供と思っていればいいと思う。探索中ぽよんぽよんと弾む胸に目が行きそうになったとしても!子供手は出せないからな!(自己暗示)
「どうしましたか?」
「なんでもない。それじゃあこれからすることを確認するぞ。探索した結果、雨風を防げるのは転移陣のあるこの部屋しかなかった。」
「はい。他は破壊されたり、天井に穴が空いたりして使える状態ではありませんでした。」
「この部屋は長らく封鎖されて埃だらけだ。このままこの部屋で休んでも喉を傷めたりで満足に休めないどころではない。そんなわけで掃除するぞ」
「どのようにするのですか?」
「奇跡的に残っていたこのぼろ布で全部拭くんだ。水拭きもするから鍋に水を溜めてな。今の状態を覚えておくといい。かなり変わるだろうからな」
俺は袖をまくり、埃に埋め尽くされた部屋に突撃するのだった。