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希望の光  作者: 文月 夏
8/21

異変

私は誰もいない真っ暗な道を歩いていた。

進んでも進んでも何も見えず、ただ、同じ景色が続いていた。

もはや、真っ直ぐ歩いているのかどうかも分からなくなってきていた。


(ここは、何処なんだろう。どうして誰もいないんだろう。もう、何も分からない・・・。)


もう歩くのは限界だった。

私は、孤独が支配する真っ暗な闇の中、地面に座り込んだ。

そどうせ誰も来ないと、私の心はすでにあきらめていた。


(やっぱり私はひとりぼっち誰にも気づかれないで一人で消えていくんだ。)


そう思ったその時だった。


「真理。」


誰かが私の名前を呼んだ。

そして、誰かがそっと私に近づくと優しく抱きしめてくれた。

誰なのかはよく分からなかったが、その人に抱きしめられると、ついさっきまで冷え切っていた心が、まるで優しい日だまりにいるかのような温かさに包まれた気がした。

私は、その温かさに包まれながら私はゆっくりと意識を失った。



しばらくして、私はゆっくりと目を覚ました。

私は、薄暗い部屋の中、ベットで横になっていた。

どうやら、さっきのはいつも見ている夢のようだった。

でも、いつもの夢とは異なり誰かが私を助けてくれた。


(あの人は誰だったんだろう。)


あの人を私は知っている気がする。

でも、いくら考えても、誰なのかははっきりと分からなかった。


(それよりも、ここ何処だろう。)


自分の寝ている部屋がいつもと違うことに気がついた私はゆっくりと首を動かして、周りを確認した。

すると、薄暗くてわかりにくかったが、誰かが椅子に座り前後にゆらゆらと揺れていることに気づいた。


(レオさん・・・。)


誰だろうと思い暗闇の中、目をこらして見てみると椅子に座っているのが彼だということが分かった。


(レオさんがいるということは、また、別の世界に移動してしまった訳では無いみたいね。でもどうしてレオさんがここにいるんだろう。)


そのようなことを考えながら彼の顔を眺めていると彼が目を覚まし、お互いの視線が重なった。

すると彼は心配した様な、安心したような顔をし、いつもの様に優しく微笑んだ。


「目が覚めたんだね、気分は悪くないかい。」

「大丈夫です。ありがとうございます。・・・あのところで、ここ何処なんでしょうか。」

「ここかい。ここは病院だよ。真理が家で倒れてたから、ここまで連れてきたんだ。」

「そうだったんですね。すみません。またご迷惑をおかけしてしまったみたいですね。それに、せっかくお食事に誘ってくれていたのに、行けなくなってしまって・・・。本当にごめんなさい。」

「いや、仕方がないよ。そんなことは気にしなくてもいいよ。」


また、彼に迷惑をかけてしまった。

この世界にきてから、私はずっと彼に助けてもらっていた。

誘ってくれていた食事をすっぽかしてしまっても気にしなくて良いと笑ってくれた。

いつでも彼は優しかった。

素直では無い私は、その彼の優しさを疑っていた時もあった。

私は彼のことを直視するのが少しつらくなった。


「なんだか、やっぱり顔色が悪いよ。もう休んだ方がいいかもしれないね。」


私が申し訳無い気持ちになり黙っていると、彼は優しくそう言った。

私は静かにうなずき目を閉じた。

でも、すぐに目を開けて彼の方を向いた。

彼は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻ると、「どうしたの。」と聞いてきた。


「あの、お願いがあります。」


私が彼にそう言うと、彼は黙って小さく首をかしげた。


「少しでいいので手をつないでもらえませんか。」


私は、眠った時、あの悪夢を見るかもしれないと思うと怖かった。

でも彼が、手を握ってくれていれば、なぜか大丈夫な気がした。

しかし私は言った後で後悔した。

別に、彼とは恋人というわけでも、家族というわけでも無い。

関係があるとすればそれはただの主従関係だ。

本当なら、こんなことは頼んではいけないと思う。

でも、なぜか彼には言ってしまった。

彼を見ると目をまん丸にして私を見ていた。


「いや、ごめんなさい。何でもありません。おやすみなさい。」


私は慌ててそう言うと彼から目をそらして、目を閉じた。

すると小さく笑う声が聞こえ「別にいいよ。」と言って彼は私の手を優しく包み込んでくれた。

私は驚いて彼を見るといつもの様に微笑みながら「おやすみ。」と言った。


「おやすみなさい。」


私は小さな声で彼に返事をすると、あの夢と同じような温かさに包まれながら眠った。

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