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希望の光  作者: 文月 夏
7/21

お誘い

私はリリーさんのお店を出て家に帰ると、家事の続きを始めた。

作業が一段落つき、ふと周りを確認すると太陽は西へと傾いており、もう夕方だった。

彼の朝の口ぶりからすると帰ってくるのはもっと後だろう。

夕食作りやお風呂の準備には早すぎるため、私は日課になっている読書をすることにした。

いつもの様に自分の部屋で、いつもの様に町の図書館で借りてきた本を読んでいると、途中で眠たくなり眠ってしまった。


また、真っ暗な中一人でいる夢を見た。

私は恐怖で目を覚ました。

なんだか、悪夢を見る頻度が増えている気がする。

体がだるくて頭が重い気がした。

周りを見ると、太陽がもう沈んでしまった様で、部屋は真っ暗だった。


「あの夢と同じ・・・。」


私は小さく呟いた。

少し怖くなり明かりを付けると重いからだを引きずりながら夕食の準備を始めた。

夕食ができあがるのとほぼ同時に彼が帰ってきた。


「お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした。」


彼を見るなり、私はそう言ってお辞儀をした。


「ただいま、真理こそ今日も一日ご苦労様。」


彼は優しく微笑みながら私に労いの言葉をかけた。


「お気遣いありがとうございます。ところで先に食事されますか。」


私は彼の労いの言葉にお礼を言いつつ、彼に尋ねた。


「先に食事にするよ。着替えてくるから少し待ってて。」


私にそう答えると、彼は自分の部屋に行った。

しばらくして、楽な服装に着替えてきた彼と私は食事を始めた。


「真理、少しいいかな。」


食事を始めてすぐに彼が私に聞いてきた。


「なんですか。」

「今日レストランの食事券をゆずってもらえたんだ。真理が良ければ明日一緒に行かないかい。」

「えーと・・・。」


私は彼の発言に少し戸惑った。


「あれ、まずかったかな。」


私の反応に、彼は困った様に首をかしげながらそう聞いてきた。


「いえ、特に問題ありませんし、まずくはないと思います。ただ、誘うなら家政婦では無くて、もっと別の方のほうがいいと思います。例えば、レオさんの好きな方とか。」

「うーん、好きな人は特にいないな。」

「そうなんですか。」

「そうなんだ。だから、せっかくだし行かない。ちょうど俺明日は夕方くらいには仕事終わる予定だし。もちろん強制ではないから、どうしても無理ならそれでもいいよ。」


ここに来てからそのように思うことは無いが私と彼は主従関係にある。

彼が行こうと言うのであれば、やはり行くべきだろうと私は思った。

私は彼に言葉を返した。


「うーんそうですね、分かりました。それではご迷惑で無いならご一緒させてください。」


私の答えに彼は嬉しそうにうなずいていた。

なぜかはよく分からないが、彼が嬉しそうだと、私も嬉しい気がする。

そして、さっきまで感じていた頭痛が、少しだけましになっている気がした。


「それじゃあ決まりだね。明日の夕方5時頃にリリーさんのお店の前で待ち合わせしよう。」

「はい。」


そして、その後はいつも通りに時間が過ぎて行き、一日が終わった。

次の日の朝私はいつもよりも早起きをしていた。

理由は、あの悪夢のせいだった。

眠るたびにあの悪夢を見てしまいその度に目が覚めてしまい、ゆっくりと眠ることができなかった。

そのためか、昨日よりも頭痛と倦怠感が悪化しているように感じた。

でも、体が少しだるい程度で、家政婦の仕事を休もうとは思わなかった。

それに、夕方は、彼とレストランで食事をすることになっている。

いつもよりも仕事量は減っている。

だから、私は気にせずいつもの様に過ごしていた。

しかし、太陽が少し傾き始めた頃、私が部屋を掃除していると、突然部屋が回り始め、気持ち悪くなりその場に倒れ込み動けなくなった。

しかも、何とも言えない不快な音が頭の中で鳴り響き、頭が割れそうに痛かった。


(私、死ぬのかな。)


無意識そうに考えていた。

元々死ぬつもりだったし特に恐怖は感じていなかった。

むしろ、お父さんやお母さんに会えるかもしれないという、喜びの気持ちが強かった。

彼にきちんと恩を返せなかったことと、この場所で自分が死ぬことにより、また彼に迷惑をかけてしまうと思うと、それだけは心残りだが、もう自分ではどうすることもできなかった。


「レオさん、最後まで迷惑しかかけられなくてごめんなさい。」


私はそう呟き、ゆっくりと意識を手放した。

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