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希望の光  作者: 文月 夏
5/21

買い物

私と彼は家から歩いて20分くらいの町まで来ていた。

私は着替えも何も持っていないような状態だったので、私の身の回りの物を買うために彼が誘ってくれた。

まだ、朝早い方だと思うのに町はそれなりに賑わっていた。

彼の話だと、この世界では基本的にどこのお店も朝早くから開いているらしい。

その分閉まるのも早いらしいけど・・・。


私の買い物もほとんど終わり、後は昼食と夕食の材料を買いに行くだけとなっていた。

買い物で生じた荷物はほとんど彼が持ってくれていた。

本来なら喜ぶべきなのかもしれないが、彼との関係上私は困っていた。


「あの・・・、やっぱり私が持ちます。レオさんが荷物を持つのはおかしいです。」


そう言って私は彼の持っている荷物に手を伸ばした。


「いや、これくらい気にしなくてもいいよ、そんなに重くないし。」


そう言いながら彼は私の伸ばした手をよけていた。

こんな感じでさっきから何回言っても彼は荷物を渡してはくれなかった。


「ふぅ。」


私は小さくため息をついた。


「私はあなたの使用人だから、主であるあなたが荷物を持ったらおかしい」と言っても

「いや、真理は使用人じゃ無くて家政婦だから、荷物持ちは仕事に含まれてないと思うよ。」そう言われたし・・・。


洋品店に行った時は、「好きな服を選んで来るといよ。俺はここで待ってるから。」と言って店内の椅子に腰掛けていた。

なので、私はとりあえず店内を見たり試着したりして服を決めることになった。

とりあえず、私は動きやすそうな服を3着持って彼のところに戻った。

するとそんな私を見て彼は「それだけでいいの」と驚いていた。

私がうなずくと彼は私から洋服を受け取りお金を払いに行ってくれた。

食器などの小物を買うときも同じような感じだった。


私は彼のことが理解できないでいた。

ただ、本当に優しいだけなのだろうか、でもどうしてもそう思うことができない。

これは、私がひねくれすぎているのだろうか。

そもそも、私は彼のことを名前で呼んで良いのだろうか。

本人がそうして欲しいのならそうするべきなのかもしれないが、やっぱりなんだかしっくりこない。

私がまじめすぎるのだろうか。

そんなことを考えながら歩いていると「着いたよ。」と言って彼が立ち止まった。

どうやら、私が行きたいと言っていた食料品店に着いたみたいだった。


店の中に入ると小柄なかわいらしい感じのおばあちゃんがカウンターの奥にいた。

そして彼に気がつくと「おや、坊ちゃん、いらっしゃい。」と言った。


「おはようございます、リリーさん。その、坊ちゃんて呼び方何とかなりませんか。さすがに26にもなってその呼ばれ方は・・・。」


そう言って彼は困った様に微笑んでいた。


「私にとってはいつまでも坊ちゃんのまんまですよ。ところで、そちらのかわいらしいお嬢さんはどなた。もしかして彼女さんかい。」


そう言っておばあちゃんは私を見た。


「い、いえ違います。」


かわいらしいと言われなれて無いせいか、突然かわいらしいと言われ、お世辞だと分かっていても、照れてしまい、私はそれだけしか言えなかった。


「彼女、今朝雇った家政婦なんだ。じいちゃんとばあちゃんの家の管理をしてもらおうと思ってね。」


そんな、私に気がついたのか彼が代わりに答えてくれていた。


「おや、そうだったのかい。でも良かったね、まじめそうな人が見つかって。」

「うん、本当によかったよ。一人だと管理がさすがにきついかなって思ってたから。」


その後すぐに会話は終わって、おばあちゃんのお店で食べ物と調味料を買って家路についた。

なぜか、お互い無言だった。

町に行くときに特別話が弾んでいたということは無かったが、今ほど静かでも無かった気がする。

なんだか少し気まずいと思いながら、私は彼と歩いていた。

しばらくして、帰る途中の雑木林で彼はぽつりと話しかけてきた。


「リリーさんと俺のばあちゃんさ、親友同士だったんだ。だから、孫の俺にもよくしてくれてたんだ。」


遠くを見ながら彼はそう言った。


「そうなんですか」


それ以外、私には答えることができなかった。

太陽はもう高く上がっていた。

でも、木々が邪魔をしているせいかなんとなく周りが暗い気がする。

気のせいだろうか、彼が少し寂しそうに見える。

周りが少し薄暗いからそう見えるだけだろうか。

それとも、本当に何か考えているのだろうか。

まあどっちにしても私には関係の無い話だと思う。

私は、ただ、彼に恩を返せばいいだけなんだから。


(気にしてもいいことなんて無い)


そう自分に言い聞かせた。

そして私の家政婦としての毎日が始まった。

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