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希望の光  作者: 文月 夏
3/21

朝食

私は一人だった。

周りには誰もいないし、何も無く真っ暗だ。

とても怖い、誰か助けてと必死に声を出す。

でもその声はどこにも届かない。

孤独に押しつぶされそうになる。

(もうだめだ。)

そう思い、あきらめたたところで目が覚めた。

(また、この夢か。)

もうこれまで何回この夢を見たのか分からない。

何回見てもなれない夢だった。

時計を見るとまだ朝の5時30分くらいだった。

早すぎる気はするが、あの夢を見た後でもう一度寝る気にもなれず、もう起きることにした。



私は部屋を出て台所を探した。

そして台所を見つけると、朝食を作るために、色々とあたりを調べた。

ひとの家の台所を勝手にさわるのは気が引けたが、朝食作りは今の私にできる数少ないことの一つだったため心の中で謝りながら調べていた。


高校入学以降は一人暮らしをしていたためか、料理などの家事全般が私は得意になっていた。

20分後、台所のテーブルの上には料理の準備できていた。

私が朝食の準備を終えた時,ちょうど彼が台所に入ってきた。


「うわー、おいしそうだな、君が作ったのかい。」

「はい、昨日色々とお世話になったみたいなので、そのお礼に朝食を作りました。ただ、勝手に台所をさわってしまってごめんなさい。」

「いいよそんなの気にしないし、それよりもありがとう。とても嬉しいよ。食べても良いかな。」

「はいどうぞ、召し上がってください。」


そう言うと、彼は嬉しそうに食事を始めた。

私は彼に向かい合うように席に着いて、彼の様子を眺めていた。

吸い込まれそうな大きな目に、長いまつげ。

ふわふわで柔らかそうな髪の毛

女の人にもてそうな容姿だと思った。


「これとてもおいしいね。」

不意にこちらを向き、彼がそう言った。

「ありがとうございます。」

ぼんやりと彼を観察していた私は少し遅れて反応した。

「君って料理が得意なんだね。」

「そんなにすごくはありませんよ、一人暮らしが長かったので自然とできるようになっただけです。」

「へぇー、そうなんだ。」


そう言って彼は少しうつむいた。

何かを考えごとをしているようだった。

しばらくしてから顔を上げ私の方に向きなおった。


「一人暮らしが長かったということは、家事は得意なのかい。」

「うーん、そうですね。得意というほどではありませんが、人並みにはできると思います。」

「そっか、じゃあさ、もしこれから行く当てがないならここで家政婦として働いてみないかい。」

(え・・・。)

私は突然の彼の申し出に驚いてすぐに返事ができなかった。

そんな私にはお構いなく彼は話しを続けた。

「そんなに悪い話では無いと思うよ。もちろんお給料も出すしこの家も好きに使ってくれてかまわないからさ。」

「は、はい・・・。」

断ろうとしたが、彼の勢いに負けてつい勢いで返事をしてしまった。

「本当。やった、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。」

そう言って彼はとても嬉しそうに笑っていた。


「それじゃあさ、せっかくここで働くんだからお互いのことは名前で呼び合おうよ。だから、俺のことはレオってよんでね。俺は君のこと真理って呼ぶからさ。」

「はい、分かりました。これからよろしくお願いしますレオさん。」

「うん、こちらこそよろしく真理。」

そう言いながら彼は私に笑いかけていた。


この人は本当に優しい人だなと私は思った。

見ず知らずの人に対してなかなかここまではできないと思った。

それに、一度捨てようとした命を、この人にひろわれた様なものだ。

だったら、できる限り家政婦として彼に恩を返そう。

私はそのように思った。

でも、これが後に自分を苦しめることになるなんて、今の私には想像できなかった。



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