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希望の光  作者: 文月 夏
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絶望

6月の中旬、梅雨の季節。

街には雨が降っていた。

そんな中、私は傘も差さずにビルの屋上に立っていた。

「もう嫌だよ・・・。」

屋上からの街の景色を見ながら、私は小さな声でそう呟いた。

もう夜中だというのに人々が行き交い、街は人工的な光で輝いていた。

(なんて、冷たい光なんだろう。)

見ているだけで心がどんどん冷えていくような気がした。

父は事故で私が物心つく前に亡くなっており、それから、母が一人で私を育ててくれていた。

決して裕福では無かったけど、母は私をとても愛してくれたし、毎日幸せな時間は過ごしていた。

思えば母を事故で亡くして以来、自分の心が満たされることなどあまり無かったように思う。

そういえば、あの時もこんな天気だった気がする・・・。


ある雨の日、母は事故にあい亡くなった。

当時7歳だった私は、お葬式の間中ただ母の写真を見ていることしかできなかった。

子供の私だけで生きていくことはできないため、お葬式の後、誰が私を引き取るかという話になった。

しかし、家が特に資産家だったわけでは無く、私に特別な才能があるわけでも無いため、まだ幼い私を引き取るという人はなかなか現れず、長い話し合いの末,私は母方の遠い親戚に預けられることになった。 

それから月日は流れ、高校卒業と共に小さな会社に就職した。

それから3年の月日が流れ、恋人ができ、仕事は大変だったが、幸せな日々を送っていると思えた。

でも、それも長く続かなかった。

恋人が多額の借金を残して消えてしまったのだ。

そして会社も、不景気による経費削減により大幅なリストラを行い私もそれに巻き込まれることになってしまった。

職と恋人を同時に失い、手元にあるのは借金だけとなった。


裕福で無くてもいいただ普通に家族がいて、恋をして素敵な結婚をする・・・。

そんなたわいの無いことしか望んでいないのにどうしてこうなってしまったのだろう。

考えても分からない。もう何も考えたくなかった。

「お母さん・・・。私、もう生きるのがつらいよ。」

先ほどよりもひどくなった雨の中,私は小さく呟き目を閉じると、屋上から身をのりだした。






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