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第8話 黎明の決戦

 空が裂けた。

 闇が滲み出すように、黒い雲が世界を覆っていく。

 大地は震え、風は泣き、光葉の森の木々までもが悲鳴をあげた。

 その中心に――“セラヴェル”。

 かつて人々に「光の王」と呼ばれた存在が、

 今は闇に堕ち、“黒い霧”そのものとなっていた。

『カイル……リュミナ……来たか。』

 声は、世界の底から響くようだった。

 その言葉だけで、空気が重くなる。

『光を掲げ、人の心を救うはずだった。

 だが、光は恐怖を生み、信仰は憎しみを育てた。

 人は光を求めながら、闇を生み続ける――。』

 カイルが剣を構えた。

 その手がわずかに震えている。

「セラヴェル……あんたの理屈で、人を裁くな!」

『カイル。お前も見ただろう?

 人の弱さが、どれほど世界を濁らせたかを。』

 リュミナが一歩前へ出た。

 その身体は淡く輝き、黒の世界にたった一輪の光のようだった。

「人は弱い。でも、だからこそ“誰かを想う”。

 それが……この世界の光なんだよ!」

 セラヴェルの影が動く。

 無数の黒い腕が伸び、二人に襲いかかる。

『ならば、その光、証明してみせよ。

 お前たちの希望が、絶望を超えられるのかを!』

 黒い奔流が大地を裂く。

 カイルが剣を振り、リュミナが光を放つ。

 それでも、押し寄せる闇の量は圧倒的だった。

「くっ……! カイル、下がって!」

「お前こそ無理するな!」

 光と闇がぶつかり、

 轟音が森を切り裂く。

 リュミナの足元が崩れ、彼女の身体が宙を舞った。

 カイルが咄嗟に手を伸ばす。

「リュミナッ!!」

 彼の手が、彼女の手を掴む。

 触れた瞬間、胸の“帰還の印”が眩しく光を放った。

「この光……わたしたちの“想い”が……!」

 二人の心が重なった瞬間、

 世界が震えた。

 リュミナの光が、カイルの剣に流れ込む。

 刃が白金に染まり、周囲の霧を焼き払う。

『……その力、まさか……』

「あなたの光じゃない! みんなの心が繋がった光だよ!」

 カイルが吠えるように叫び、剣を掲げた。

「リュミナ――一緒に!」

「うんっ!!」

 二人の声が重なり、

 空に巨大な光の輪が広がった。

 その光は、まるで夜明けの太陽のように

 黒い空を裂き、世界に“朝”を呼び戻す。

『やめろォォォ……! 闇は……永遠だ……!』

「いいえ。」

 リュミナの瞳がまっすぐにセラヴェルを射抜く。

「永遠なのは、“想う心”だよ!」

 光が爆ぜた。

 黒い霧が吹き飛び、

 闇の王の姿が、少しずつ溶けていく。

『……そうか……

 これが……本当の……光……』

 セラヴェルの声が消えると同時に、

 空から金の雨が降り始めた。

 それは、滅びではなく、“再生”の雨だった。


 ――夜が明けた。

 リュミナは丘の上で目を覚ました。

 朝の風が優しく頬を撫でる。

 隣では、カイルが穏やかに眠っていた。

「……終わった、んだね。」

『きゅい! おつかれさま、リュミナ!』

 シルフが嬉しそうに飛び回る。

 森の木々が息を吹き返し、花々が再び咲き誇る。

 レイナの声が、風の中で囁く。

『よくやったわ、リュミナ。あなたの光は、確かに世界を照らした。』

 リュミナは空を見上げた。

 金色の雲の向こう、

 朝日がゆっくりと昇っていく。

 隣のカイルが目を開けた。

「……リュミナ。」

「おはよう、カイル。」

「世界……戻ったみたいだな。」

「うん。……でも、これからだよ。」

「これから?」

 リュミナは小さく笑った。

「光も闇も、人の心の中にある。

 だから、私たちはずっと“選び続ける”んだと思う。

 怖がるより、信じる方を。」

 カイルはしばらく黙って、それから――

 優しく笑った。

「……お前、本当に精霊か?」

「うん。森の精霊、リュミナ。

 でもね、たぶん……ちょっとだけ、人間に似てるの。」

 二人の笑い声が、朝の風に溶けていく。

 陽光が草原を照らし、遠くの山々まで光が届いた。

 そして、リュミナの胸の中で小さく灯る。

 “希望”という名の、永遠の光が。


  第8話 完


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