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第1話 「光の中のはじまり」

 目を開けたとき、そこは——柔らかな光に包まれた森の中だった。

 木々は透き通るように白く、風は歌うように枝を撫でていた。

 自分の身体を見下ろすと、小さな手。指先が少しだけ透けていて、うっすらと光を放っている。

「……え?」

 声が出た。だけどその響きも、まるで鈴の音のように透き通っていた。

 次の瞬間、目の前にふわりとした光の玉がいくつも現れる。

『おや、新しい子が生まれたみたいだよ』

『また精霊の子?珍しいねぇ』

 声の方向を見れば、光の玉たちがゆらゆらと漂いながら話している。

 どうやら、彼らが……“喋ってる”?

「えっと……ここは……どこ?」

『ここは《光葉ひかりばの森》。この世界では、命はみんなここから始まるんだよ』

『そうそう。君は新しい精霊の子。今日から私たちと暮らすんだ』

「……精霊……の、子?」

 混乱している私に、一つの光の玉が近づいてきた。

 その中には小さな女性の姿。髪は金糸のように輝き、瞳は森の緑色を映していた。

『私はレイナ。この森の長老精霊だよ。さ、名前をつけなくちゃね』

 彼女が微笑んだ瞬間、光の粒が舞い、私の周囲を包み込む。

 すると、心の奥にあたたかい感覚が流れ込んできた。

『あなたの名前は——リュミナ。光を紡ぐ者、という意味よ』

「リュミナ……私の、名前……?」

 レイナは優しく頷く。

 その瞬間、胸の奥にぽっと灯りがともる。まるで、世界そのものが微笑んでくれたように。

 ——でも、私は覚えている。

 ほんの少し前まで、別の世界にいたことを。

 ビルの屋上。仕事帰りの夜。

 星を見上げて、「もう少し、やり直せたらな」って、つぶやいた。

 それが最後の記憶だった。

『大丈夫。ここでは焦らなくていいよ。風と話して、水と遊んで、木と眠るんだ』

『この世界では、時間なんてゆっくり流れるからね』

 レイナがそう言うと、森の奥から動物たちが姿を現す。

 子リス、羽のある猫、そして小さなドラゴンの子まで。

 みんなが一斉に私のまわりをくるくると回って、歓迎の歌をうたう。

「……なんだろう。こんなに、あたたかい気持ち、久しぶり。」

 風が頬をなでた。

 ふと見上げた空には、金色の輪のような月が浮かんでいる。

 その月は——まるで「おかえり」と言っているように、やさしく輝いていた。


 *

 夜。

 レイナが私に毛布のような苔をかけてくれた。

『リュミナ、明日になったら森の奥を案内してあげるね。きっと驚くよ』

「……ありがとう、レイナおばあちゃん」

『ふふ、おばあちゃんか。悪くないね』

 光の粒がきらめきながら、森の夜は静かに深まっていく。

 虫の声も、風の音も、まるで子守歌みたい。

 リュミナは瞳を閉じた。

 明日はどんな景色が見えるんだろう。

 きっと、あの金の月のように優しい世界だ。

 ——こうして、転生した私の新しい日々が、静かに始まった。


  第一話 完

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