12-13. 胸騒ぎと魔力暴走
青空の下、会場の熱気がどんどん高まっていく中で、わたしの心は、それとは真逆に冷えていった。
──嫌な予感がする。
胸の奥でざわめいていた違和感が、今でははっきりとした不安となり、無視できなくなっていた。
アイドル大運動会はまだ続いている。
でも、わたしは今すぐにでも動き出したかった。
どうすればいいかは分からない。
ただ、この場にじっとしているのが、苦しくて仕方なかった。
「ネネ、顔が真っ青よ。大丈夫?」
ヒヨナが心配そうに声をかけてくれる。
「わたし……信じたくないけど、ずっと嫌な予感がしてるの。ハオに、なにかあったんじゃないかって……」
「ブレスレットのことね……ネネを不安にさせてしまうかもしれないけれど、魔力共鳴が起きたのかもしれないわ」
「魔力共鳴……? ブレスレットが……?」
「このブレスレット、ハオからもらったんでしょ? 彼がいつも身につけていたなら、その水晶に彼の魔力が残っていたとしても不思議じゃない」
「そうかもしれない……でも、壊れたことと、どう関係が……?」
その時だった。
体が、震え始めた。
──何かが、切れた。
胸の奥にあった細い糸が、ぷつん、と音を立てて消えていったような気がした。
わけもなく、涙がにじむ。
「……どうして……なんで、こんなに苦しいの……?」
胸の中がひどく空っぽで、寒くて、寂しい。
まるで、自分の一部がどこか遠くで、傷つけられているような感覚だった。
その瞬間、周囲の空気がビリ、ビリと電気を帯び始めた。
「ネネ、あなた──魔力暴走しかけてる!」
ヒヨナが状況に気づき、すぐに騎士団の方へと助けを求めに動く。
わたしは、なんとか抑えようとする。
だけど、抑えようとすればするほど、焦りと不安で魔力が逆に膨れ上がっていくのを感じた。
このままじゃ……
何かを壊してしまう。
誰かを、傷つけてしまう──!
……そんなの、いや。
わたしの呼吸が、どんどん浅くなっていく。
目の前が、ぐらぐらと揺れた。
お願い、誰でもいい……
止めて、わたしを──
「ネネ、大丈夫だよ」
その声が、雷鳴の中の光みたいに、胸に届いた。
肩にそっと触れる、しっかりとした手。
冷静で、落ち着いた声。
あたたかくて、やさしいぬくもり。
……アレキ先輩だ。
「……よかった……来てくれて……」
わたしの目から、ぽろりと涙がこぼれそうになるのを、必死でこらえた。
「いや、でも、ダメです、先輩!」
でも……このままじゃ。
わたしを抱きしめたら、魔力暴走がもろにアレキ先輩に当たってしまう!
わたしは慌てて彼を押し返そうとした。
だけど──その腕は、ぐっとわたしを抱きしめて離さなかった。
「俺は大丈夫だ。安心して、暴れていい。……俺が、なんとかするから」
その言葉に、わたしの心臓はぎゅっと握られたように感じて、呼吸すら忘れてしまいそうだった。
ぐわっと、涙があふれた。
抑えていた感情が、全部、こぼれ落ちた。
──ピカン。
まばゆい光が周囲に広がる。
わたしは思わず目を見開いたけれど、すぐに気づいた。
私たちのまわりには、魔法の防御壁が張られている。
外への被害は、ない……よかった……!
でも、アレキ先輩が──
「もう、大丈夫?」
わたしの暴走をまともに受けたはずなのに、
アレキ先輩はやさしく、いつもと変わらぬ笑顔で、わたしを見ていた。
胸が、どくんと痛んだ。
そのまま、わたしの体が力を失っていく。
わたしは、彼の腕の中で、そっと気を失った。




