2-4. 魔力共鳴ライブ、開幕!
リハーサルの時間になり、わたしは控え室へ移動した。
小さな部屋に見えるけれど、中は防音と空間拡大魔法が施され、広いスペースになっている。
私たちはそこで最後のリハーサルをする。
練習もいっぱいしたし、あとは悔いの残らないようにステージ発表をするだけ。
ステージ横へ移動して前の発表者のパフォーマンスを見る。
アイドルを夢見て、これまでいろんなところで発表してきたけれど、やっぱり緊張する。
でも、わたしはこの緊張してる瞬間が好き。
心臓の高鳴りが、まさに、生きてるー!って感じるから。
9人で円陣を組む。
互いに目を合わせ、頷き、リーダーが声をかける。
リーダー「声出していこう!」
みんな「はい」
リーダー「笑顔で行こう!」
みんな「はい」
リーダー「私たちならできる!」
みんな「はい」
「せーのっ!ファイティーン!」
「フゥー!」
そのままみんなでステージへ駆け出していく。
発表は最大10分間。
私たちは3曲披露する。
会場を暗くして、曲と共にわたしの雷型魔法で照明を当てる。
この瞬間が、本当に魂が震える。
さあ、私たちの魔法ステージの幕開けだ!
観客一人一人の前にペンライトが出現し、握るとその人の魔力と繋がってオーラの色を映し出す。
ペンライトを強く降るとオーラ色の光を発射することができる。
この魔法は「エンチャント・リフレクター」って呼ばれてる。
ステージで放たれた感情が、そのまま観客の魔力と共鳴して、心に刻まれるの。
忘れられない一日になるように——
そう願って何度も磨いてきた、私たちの魔法。
ステージの私たちに合わせて、会場が一体となっていく。
たくさんの人の応援で胸がいっぱいになる。
幸せすぎて、楽しすぎて、嬉しすぎて、心から笑顔が溢れ出すような…
曲の途中でわたしは聖獣にまたがり、観客の頭上を飛んでいく。
クリスタルシャワーを降り注ぎ、観客の波動をあげ、クリアリングしていく。
私たちの発表を観た人たちに、たくさんの幸運が訪れますように—
そう祈りながら…
上から飛びながら観客たちの表情を眺めて、わたしの方が力をいっぱいもらっていると実感した。
客席に視線を送ると、留学生グループの中にハオの姿があった。
わたしが手を振ると、ハオも手を振りかえしてくれた気がした。
(…ねえ、今の見ててくれた?)
「観ててね」
とフゥーっと伝言魔法をハオに送った。
ステージに戻り、歌とダンスに加わる。
3曲目の曲は、みんなへの応援ソング。
夢を諦めないで、応援してるからというメッセージが込められている。
これは、私たち自身へのメッセージでもある。
自分を信じて、前に進むことを後押しする歌。
最後の曲が始まった瞬間、胸の奥がじんわり熱くなった。
歌いながら、心のどこかが震えてる。
夢を語るのって、ちょっと怖かった。
「アイドルになりたい」って言うたびに、本当にそんなことできるの?って、自分の中の声が問いかけてきた。
背伸びしすぎなんじゃないかって、不安だった。
でも、今わたしは、ステージの上で歌ってる。
ちゃんと笑ってる。
みんなと手を取り合って、同じ夢に向かって走ってる。
—あぁ、わたし、ちゃんと進んでる。
大丈夫。
夢って、こうしてひとつずつ近づいていけるんだ。
観客のペンライトが、まるで応援の光みたいに見えて、涙がこぼれそうになる。
この光景を、きっとわたしは一生忘れない。
リーダーが
「みんな、愛してるよー!」
と叫んで、観客がその想いに声援で応える。
私たちはペンライトに魔法をかけている。
この最後のフィナーレの魔法は、わたしたちがこだわり抜いた演出。
何度も話し合って、何度も試した、渾身の魔法がかかっているのだ。
私たちの発表中に感じた、興奮、喜び、楽しさ、ポジティブな気持ち、応援の気持ちなどのエネルギーがそっくりそのまま、ペンライトの持ち主に浸透するようになっているのだ。
盛り上がれば盛り上がるほど、その効果は大きくなる。
私たちも、体力の限り、最後まで輝き続ける。
わたしたちの発表が終わり、会場が大きな拍手、そして、幾重にも発射されるオーラの光が会場を包み込む。
この光景を見て、私たちは感動した…
わたしは今日、夢に一歩、近づけた気がする。
本日21時にも投稿します!




