12-10. 水の騎士
1人になった途端、急に不安になる。
次はどこから攻撃が来る?
わたしの心臓が緊張で大きく鼓動している。
ーあ、来た!
この距離…避けきれる?
わたしは防戦するが、転んでしまった。
攻撃が当たってしまうー
そう思った瞬間、
「こっちだ!」
わたしの視界が一気に浮き上がった。
えっ、誰!?──その香りで、答えはすぐにわかった。
わたしの身体を宙に浮かせて、ぐいっと抱き締めたのはアレキ先輩だった。
反撃のため、広範囲の攻撃魔法を瞬時に放っている。
水型でも珍しい技で、しかも攻撃魔法なのにキラキラ輝いて美しかった。
抱き締められた瞬間、いつかの練習後に感じた爽やかな香りが鼻についた。
近い距離に、いまさら焦ってしまう。
「これは、なんと!!!
ORBITALのセオが間一髪でLUMINAのネネを助けました!」
アレキ先輩はファンからセオと呼ばれている。
私たちの今の瞬間が映像に収められていたことで、会場から声援が上がっていた。
「これからは俺と一緒に動くぞ」
先輩の眼光は鋭く、けれどどこか安心感をくれた。
「わかりました!」
とわたしは小さく頷いて、後に続いた。
わたしたちは連携し、狭い路地を駆け抜けていく。
敵の魔法を避けながら、アレキ先輩の指示が的確に飛ぶ。
「こっちから狙え。俺が囮になる」
「はい!」
その信頼と冷静さに、わたしの胸は少しだけ救われた。
結構最後の方まで勝ち残っていたが、最後は片足に宙吊りの魔法がかけられて、わたしは終わってしまった。
攻撃魔法じゃなかったから、気づかなかった。
わたしの気が抜けてたからだ…
あと一歩、ほんの一瞬の判断だった。
「あのとき…」悔しさが喉を締めつける。
会場に目を移すと、残るメンバーはあと3人となっていた。
もはや、鬼ごっこではなく、正面からの一騎打ちになっていた。
アレキ先輩以外の2人は違うアイドルグループのメンバー同士だったので、2人が連携してアレキ先輩を倒しにかかっていた。
「おっとー!ここへ来て1対2の戦いになっています!ORBITALのセオは2人を倒せるのでしょうか?」
場内アナウンスに会場が一層盛り上がる。
アレキ先輩は水型だが、魔力量も多いらしい。
まだ余裕がある感じが見て取れた。
でも、相手は2人だから絶体絶命のピンチ。
この状況をどうするのか、会場中が見守った。
先に攻撃を仕掛けたのは相手側だった。
広範囲の攻撃魔法だった。これはかわすのは難しい。
しかし、アレキ先輩は地面に水型の魔法を放ち、その跳ね返りで防御をしていた。
攻撃魔法を防御で使う戦い方に、会場が「お〜!」と歓声を上げている。
相手は2人なのに、アレキ先輩の冷静な判断、素早い決断、スピード力、どれもが群を抜いていると感じた。
水型のアレキ先輩から、土型の風魔法が放たれた。
相手側にとって予想外だったのか、一瞬足を取られている。
「水龍術」
アレキ先輩がさけぶと、大きな水龍のが2人を取り囲み、上から囲い込むように覆い被さり、ゲームオーバーとなった。
最後のタイミングで、魔力量の消費が多く、しかも難易度の高い上級魔法が使えることに会場中が驚き、一瞬静寂が訪れた。
そのあと爆発するかのような拍手が巻き起こり、空中にたくさんの祝いの魔法が放たれていた。




