12-8. 凍冴の祈り
気づけば紅秋が過ぎ、凍冴の静けさが街を包んでいた。
デビューの忙しさがひと段落し、アイドルと学校生活の両立という新しい生活が始まった。
外を見ると静かに雨が地面を濡らしていた。
わたしはふと、公開オーディションの練習を思い出す。
寒空の下、息が白くなっていたあの夜。
「自分をもっと大切にしろ」
ハオの低くて優しい声が、今でも耳の奥で響く。
わたしがポロっと好きと言ってしまったことも、「君の力にはなれない」と振られたことも。
一年も前のことなのに、鮮明に覚えている。
デビューで忙しくしていた時は、正直、自分のことを感じる暇なんてなかった。
今はふとした時に思い出すと、嬉しいような、切ないような気持ちになる。
わたしの中にまだハオが生きていると感じる一方で、今は会えない苦しさを感じてしまうから。
ブレスレットを握りしめて祈る。
ーどうか、ハオが笑っていますように。
この祈りが届くことを願って…
ブレスレットの宝石に、光がかすかに宿った気がした。
わたしは目を閉じて、小さく息を吐いた。
わたしはアイドルとの両立が掴めてきた頃から、魔法技術の上達も目指していた。
そのきっかけはヒヨナだった。
ヒヨナが追跡魔法が出来ると知った時、とても驚いた。後から理由を尋ねると、ヒヨナの好きな人は魔法省で働いているらしく
「あの人と、いつか同じ場所で働けたらと思ってたの」と言っていた。
ヒヨナの頬は少し赤くて、その目はまっすぐだった。一途で直向きなヒヨナがとても可愛くてまぶしく映った。
魔法省はエリートが働ける場所だから、ヒヨナは相当努力したに違いない。本当に尊敬する。
魔法技術が上がれば自分の身は自分で守れるし、アイドルの場合はパフォーマンスに活かすことができる。
わたしはアイドルと勉学、両方にのめり込んでいった。




