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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第12章 〜5年生 アイドル1年目〜

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12-7. ハオ視点: 赤の瞳と黒の影

連れてこられた場所はソランティア様の部屋だった。

そう、魔法の仕掛けがいっぱいの(おり)の中だ。

俺がスパイだと告げた時を思い出した。


「ソランティア様、お連れしました」


黒いフードを被った青年が告げる。


「…もしかして、レオハルド王子か?まさか王子自ら変身して来るとはな。」


完全にバレている…どうしてだ…

ここまで来たら仕方ない。

俺は変身をといて人間の姿に戻った。


「ソランティア様、お久しぶりです。」


「久しぶりだな。」


何か話すでもない、疑うでもない、不思議な間があった。

俺は口を開いた。


「生誕祭での襲撃事件、阻止できず申し訳ありません。」


俺は頭を下げた。


「襲撃事件は許されるものではないが、レオハルド王子のおかげでこちらも事前に準備をすることができた。そこまで被害も大きくなく、死者もでなかったのは幸いだった」


「そのお言葉に少し救われます。」


「ところで、今日、ここに来ていることはバレンシャン側は知っているのか?」


「知りません。バレないように計画を立ててきましたから。」


「そうか、しかし、これから先、頻繁にこちらに来ることは控えた方がいいだろう。」


「わかりました。」


「さあ、ここへ来た目的を話してもらおうか?」


威圧感はなかったが、威厳の感じられるたたずまいだった。


「……こんな立場の自分が言うのは、おこがましいのは重々承知の上です。でも……お願いがあります。」



ソランティア様は無言で頷く。俺は一呼吸置いてから続ける。


「バレンシャンが行っている違法行為や、他国への内政干渉……それらの証拠を押さえるために、力を貸していただけないでしょうか。

魔法評議会や中立監査機関を動かすには、ソランティア様の後ろ盾が必要です。」



ソランティア様はゆっくりと座り直した。


「なるほど。わたしの元王子としてのつながりを使って、裏から手を回してほしいということか。」


「わたしは、大切な人を……そして民を、守りたいんです。父の独裁を止めなければ、国はやがて自滅します。」


俺は目を伏せ、拳を握った。

俺の気持ちと連動するように。


「でも、力で押さえつけても、また新しい憎しみが生まれるだけです。

だからこそ、私は“正しい方法”で父を追い詰めたい。

法と証拠で、誰もが納得するかたちで……この国を、変えたいんです。」



沈黙が長く感じる。俺の心臓の音が響くようだった。


「そうか、わかった。わたしも力を貸そう。」


「ありがとうございます。」


ソランティア様の目が揺れた。

何か考えがあるのだろうか…


「それから、君に一つ、わたしから強力な味方を一人送ろう。」


ソランティア様が視線を送ると、フードを被った青年が一歩、前へ出る。


「彼の名はクロ。黒魔術に長けた、私の影だ。これからは、彼を通して連絡を取り合おう」


フードの下から青い目がわずかに光り――彼は静かに、低く一言だけ言った。


「……御意」


「…え?」


俺は息を飲んだ。

喉がカラカラになり、心臓が一瞬だけ跳ねた。

監視…?いや、守り…?

思考が一瞬止まった。



「レオハルド王子、わたしが協力的で、不思議に思ったり、疑いの気持ちが出てくることは十分理解している。だが、わたしは、駆け引きや裏切りに疲れる生き方は、好まない。わたしはバレンシャンの未来を、君の明るい未来を応援したい。」


ソランティア様からの言葉が俺の心にあたたかいシミをつくる。

そこからじわっとぬくもりが広がっていくようだった。

バレンシャンでは、互いに疑い、傷つけあい、騙しあうことが当たり前だからだ。


ごほん、と咳ばらいをし、ソランティア様は続けた。


「ネネも、君との未来をあきらめないだろうからな。」


俺はハッと見上げた。

ソランティア様の赤い瞳の中に熱が帯びていた。

バレンシャンの未来、そしてネネの未来も見ているということか…

ソランティア様にはかなわないな。これが子を想う父の姿か…


「ありがとうございます」


俺は胸が熱くなった。

必ず、明るい未来を築く。


そのための一歩が開かれたことを感じた。

その先に、誰もが笑える「未来」があると信じて。


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