表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第12章 〜5年生 アイドル1年目〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/121

12-3. 待つという強さ

卒業式が終わると、わたしは事務所の寮へ戻った。

デビュー前の今の時期だけ、事務所で寝泊まりして、パフォーマンスの仕上げをしているからだ。


生誕祭での出来事はメンバーのみんなが知っている。

でも、そっとしておくスタンスでいてくれて、逆に気を遣われなくて有難い。


いよいよ明日が、わたしたちのデビューなんだ…


わたしの表情を見て、何か感じたのか、ヒヨナがこちらへやってきた。


「…ネネ、大丈夫…じゃないよね?」


生誕祭のことを聞いているのだと思う。


「ネネはなんでも抱え込みすぎだよ。話ならいつでも聞くから。」


「ありがとう、ヒヨナ…」


彼女の優しくてあたたかい眼差しに、感情が溢れそうになる。


「ネネ、泣いていいんだよ。我慢しなくていいよ。涙は感情の結晶で、とても美しいものなんだよ」


ヒヨナはわたしの肩を抱いた。

そして、頭をなでてくれる。


あぁ、我慢してたのに…

やっぱり涙が出ちゃうよ…


「わたし、いっぱい泣いてるのに、まだ泣けるんだね…自分でもビックリしてる」


「それだけ、ネネはハオのことが好きだったんだね。」


「そう、とても好きだった。でも、だからこそ、裏切られたって思ってしまうの。ハオの言葉を信じたいけど、でも、どうしたらいいかわからなくて…」


ヒヨナは少し下を向いて考えた後、わたしに伝えた。


「追跡魔法って知ってる?過去の出来事をもう一度、見返す魔法。ネネが見た景色を、私も一緒に感じ取れるの」


わたしはなぜ追跡魔法をするのかわからなかった。


「今、生誕祭から数日経ってるでしょ?追跡魔法で遡って、生誕祭の様子を客観的に見るの。きっと、今、その状況を見たら、何か見えることがあるんじゃないかな?」


確かに…ハオからたくさん言葉をもらったけど、全て覚えているわけではない。

もう一度聞きたい。

ハオの伝えていたことをしっかり受け取りたい。


「でも…そんな高度な魔法……わたしの家族はみんなできるけど、お父様、お母様、お兄様の前で一緒に見るのは…ちょっと気まずいわ…」


「…実はね、わたし、追跡魔法ができるの」


「…え?」


「わたしの魔法がネネの役に立てたらって思って」


わたしは目を見張った。

控えめに言うヒヨナに驚いた。

追跡魔法は上級魔法だから、全ての人が使える魔法ではない。

わたしには、難しくてできない魔法だ。


「どうしてそんな高度な魔法を使えるの?」


「わたし、アイドルになれなかったら魔法省で働こうと思ってたの。まあ、わたしのことは置いておいて、まずは生誕祭をもう一度見てみようよ」


ヒヨナがわたしに魔法をかけた。

私が実際に体験した出来事をさかのぼっていくからだ。

わたしとヒヨナの前にふわふわと映像が映り始めた。


✴︎

「安心して。…君の足を踏んだりしないから」

私の緊張をほぐそうとしてくれた言葉。

「俺で…よかったのか?」

わたしに問いかける姿。

✴︎

「ハオ、リードうまいんだね」

「そうか?」

・・・

「…ねえ、ハオ、あなたって本当にただの護衛なの?」

「…うーん。ただの護衛じゃないかもしれないね」

「…え?」

・・・

「それを言うのはすべてが終わってからにしたい。いいか?」

✴︎

「ネネ……誰よりも、君を大切に思ってる。ずっと」

✴︎

「……踊ってくれて、ありがとう」

✴︎

「これから先、何があっても、俺はネネを裏切らない。覚えていて」

画面越しに響くその声は、まっすぐで、迷いがなかった。

たしかに、その時のハオは、わたしに嘘をついているようには見えなかった。

✴︎

「……お腹、空いてない? ネネの好きな料理、用意されてるよ」



・・・


追跡魔法が解け、わたしはヒヨナを見た。

ヒヨナもわたしを見つめる。


「ねぇ、ネネ…ハオの言葉、改めて聞いてみて、どうだった?」


「ハオはわたしを裏切ってなんかないって思った…」


「他には何を思った?」


ヒヨナはわたしに優しく問いかけてくれる。

追跡魔法では見ていないけれど、バレンシャン襲撃の時の一言がわたしの脳内に響いた気がした…

『…待ってて。必ず、迎えに行くから』


ハオはこれで終わりって思ってない。

そう確信した。


「未来につながる言葉をたくさん言ってたって感じた…」


「うんうん、そうだよね。ネネはそれを感じてどう思った?」


「ハオはわたしとの未来を見据えていて、そのために動いてるって感じた…」


わたしはハオとの映像を見て、やっぱり泣いてしまった。

すごく恋しくて、会いたくて、また声が聞きたいと思ってしまったから…

でも、わたしの中に、はっきりとした気持ちが芽生えていた。

まるで、霧が晴れたように。


「わたし、ハオを信じるよ」


ヒヨナを見て決意を伝えた。

ヒヨナは頷いてくれる。


「いつになるのかわからないけど…ハオを信じて、すべてが終わるのを待つ。」


「ネネ…、辛いと思うけど、その決断ができたことは凄いと思うよ。」


ヒヨナはわたしの全てを受け入れてくれた気がした。

わたしの心が生き返ったかのようにあたたかくなったのを感じた。


「それにさ…」


ヒヨナは明るい声で続けた。


「わたしたち、3年間恋愛禁止じゃん?だから、その間はどちらにしても恋愛できないんだし、ハオ君を信じる期間にしてみてもいいんじゃない?」


「確かにそうだよね…!」


泣きくれてたけど、明日のデビュー後からは恋愛禁止になることは決まっているし…


「明日のデビュー曲では、わたしの気持ちを込めて歌える気がする。」


わたしの中に一筋の光が輝いた気がした。

この歌詞は、まるで今のわたしに語りかけているみたいだった。

『同じ空の下で願うだけで

 わたしは強くなれる どんな未来でも』

ハオと離れていても、空はつながっている。

そう思ったら、少しだけ胸が落ち着いた。

わたしが歌う部分は、きっと偶然ではないはず。


「たくさんいろんな感情を経験して、彼を信じるんだって芯が通ったネネだからこそ、伝えられることがあると思う。明日のデビュー、一緒に楽しもうね」


わたしはニコッと笑うヒヨナを抱きしめた。


「ありがとうヒヨナ、元気出た」


「こちらこそ、力になれて嬉しいよ」


わたしの歌は、バレンシャンにいるハオに直接届くことはないかもしれない。

でも、私たちの歌を聴いた誰かが美しいエネルギーを伝播して行って、その先でいつかハオにも届くといいな。


ハオ、元気にしてる?

ハオが幸せでありますようにー


わたしはハオを信じるよ。

待ってるね。


わたしの中に小さく灯ったこの灯火をこれからも守り、温めていこうと思った。


(この物語に出てくるヒヨナは私の親友がモデルになってます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ