12-1. わたしの王子様へ
お父様の生誕祭での出来事は、サーラーン王国で大きな事件として取り上げられた。
ミドバーレ魔法学校へ3年間留学に来ていた生徒たちは、実はスパイだったことも書かれていた。
卒業式に出席するはずだった留学生の姿は、もちろんない。
いつもくっついていた、そしてわたしを護衛してくれていたハオの姿も。
わたしは涙の出ない朝が来るなんて、想像もできなかった。
こんなに感情があふれた経験は初めてだった。
わたしたちのデビュー曲のフレーズで「感情というプレゼントをありがとう」とあるが、本当に大きくて重くて辛いプレゼントだった。
わたしの心に大きな傷をつけたのだから。
でも、感情という嵐がすぎたあとに、静かに残ったものもあった。
惚れ薬は本音薬だったという事実に救われた。
あの時、ハオからたくさんの言葉をもらったから。
そして、生誕祭でダンスをしながらも、ハオはいろんな言葉を送ってくれた。
「ハオに裏切られた」と思っていたけれど、
ハオは何度もわたしに伝えようとしてくれていたんじゃないか…
悲劇のヒロインで泣き暮れたからこそ、
ハオの想いや他の視点が見えてきた気がした。
でも、頭では理解してても、心はやっぱりまだついていけなくて…
ハオに大好きと伝えられたのは、惚れ薬の翌朝の一度きりだった。
でも、突然やってきた別れの前に、ハオにわたしの想いを伝えられてよかったと、思えるようになりたいって思う。
もちろん、今のわたしは心にぽっかり穴が開いた気分。
当分落ち込むし、ズルズル引きずると思う。
今のわたしの支えは近々予定されているアイドルデビュー。
そして、なぜか、勉学も頑張りたいと思った。
きっと、「王女様、自分の身は自分で守れたらどうですか?」とハオに言われた言葉がわたしの中に残っているから。
きっとこれから、日常生活の中で、ふとした瞬間にこうやってハオを思い出すんだろうな…
夢のようで現実だった時間。
まだ、わたしはハオを想っていたい。
たとえ、それが苦しいことであっても。
ねえハオ、まだ、信じさせていて。
わたしの王子様は、あなたなんだって。




