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11-5. 壊れた心に残ったもの
お兄様は、すみにひとりでいた私を見つけると、迷わず駆け寄ってきた。
そして――何も言わずに、ぎゅっと抱きしめてくれた。
あたたかくて、力強くて、
その瞬間、張り詰めていたものがすべて崩れた。
ずっと、泣いちゃいけないって思ってた。
でも、お兄様の腕の中では――もう、我慢できなかった。
「……どうして……どうしてなの……!」
言葉にならない想いが、涙と一緒にこぼれていく。
ハオが、敵だった。
その事実が、心に突き刺さる。
認めたくなかった。信じたくなかった。
でも、もう……戻れない。
「お兄様……わたし……ハオが……す、すきなの……でも……どうしたら、いいか……わからないの……」
しゃくりあげながら、うまく言葉が出てこない。
胸が苦しくて、息をするのもつらい。
そんな私を、お兄様はずっと、黙って抱きしめていてくれた。
「……わかるよ。俺も、苦しい。……ハオに、裏切られたことが」
お兄様の声も、どこか震えていた。
そのひと言が、深く刺さる。
――そっか。
わたしたちは、裏切られたんだ……。
どこか現実味がなかったその言葉が、
ようやく胸の奥に落ちてきて。
涙と一緒に、心にしずかに刻まれていった。
消えない、傷のように。




