11-4. ソランティア視点:裏切りという名の忠誠
「お父様!これはどういうことですか!」
アドリアンが、感情を抑えきれずに声を荒げる。
その瞳には、怒りと、戸惑いと、ほんの僅かな哀しみが浮かんでいた。
彼もまた、従者としてのハオを――
いや、友としてのハオを、少なからず信頼していたのだろう。
「……あれが、バレンシャンの、ハオの決断だ。」
わたしは、重くそう答えるしかなかった。
「納得いかない! あれが……ハオの“本当”だというのか!」
アドリアンの叫びが、胸に突き刺さる。
その言葉に、わたし自身の中にも、苦い思いが広がっていく。
ーー前夜、ハオが打ち明けてくれた、あの告白。
あのときのハオの瞳は、嘘をついているものではなかった。
自らの正体を明かし、スパイとしての立場を晒し、それでも……わたしたちに“真実”を伝えようとしていた。
危険を承知の上で。
生誕祭でレオハルド王子が離脱した際、彼の動向を探るため、密かに監視役を付けていた。
だが、結果として――彼からは、不審な行動など何ひとつ見られなかった。
バレンシャンにとって、留学生たちは、本当に、ただの駒でしかないのだ。
そして、ネネルーナのファーストダンスの相手として、レオハルド王子の代理としてハオを立てた。
ハオが、バレンシャン王国の“真の第一王子”であることを知る者は、私とマミーナしかいない。
ネネルーナは、どれほどの衝撃を受けているだろう。
彼女にとって、どれほど信じていた存在だったか――。
彼女が壊れてしまわぬように。
わたしたち家族が、全力で支えなければならない。




