11-3. 信じていたのに
生誕祭も後半に差し掛かる。
ハオとのファーストダンスの余韻が、わたしの体の中に残っていた。
まるで火照った体のように。
今学期もあと数日で終わる。
わたしは4年生になり、ハオたち留学生は帰国になる。
この3年間がとても濃かった。
終わってほしくないな…
ガッシャーン
会場のガラスが割れる破壊音が響く。
とっさに目を向けると、そこにはバレンシャン王国の軍隊が攻め入っていた。
…ねぇ、どうして…
どうしてあなたが敵なのー
その中にハオの姿を見つけてしまった。
わたしは動くことができなかった。
自分を守ることすら忘れて立ちすくんでしまう。
ハオと目があった。
申し訳なさそうな、辛そうなそんな瞳でこっちを見ないでよ。
そのとたん、わたしの体は宙に浮き、何か柔らかい膜の中に放り込まれ、ぐんと端っこに追いやられる。
視界が白くぼやけて、外の音も遠のいた。
勢いがよすぎて、ベールの中で倒れこんでしまう。
…これは、魔法?
違う。
防御の…無効化のベール。
わたしを包むこの感覚。
―まちがいない、これはハオの魔法だ。
涙が溢れてくる。
敵になっても、わたしを守ろうとするなんて。
わたしの心を、ぐちゃぐちゃにするようなこと、しないでよ…。
あなたは敵なのに…
…でも、無理だよ。
あんなふうに、守られたら。
わたし、まだ、あなたを…
周囲を見渡すと、お父様もお母様も騎士団に守られながらも、バレンシャンからの攻撃に防戦している。
なぜ両国が争っているのか、わたしにはわからない。
胸が苦しい。
どうしたらいいの。
魔法攻撃が飛び交う戦場を端から見渡すことで見えてきたのは、互いに傷つけあう争いではないのかもしれない、ということだった。
バレンシャン王国の王様や側近たちは、攻撃力の強い魔法を放っていく。
しかし、バレンシャン王国からの留学生たち、騎士の人たちも攻撃をしているが、相手に怪我を負わせるような攻撃はしていないのでは?
番の連携攻撃なども見られなかった。
私たちサーラーン王国の方は、防戦メインの戦いだから、そもそも攻撃はあまり仕掛けていない。
ー何なのだろう、この違和感は…
わたしは何もできない。
でも、それで良かったのかもしれない。
誰も傷付かず、傷つけずにいられたのだから。
聖獣に乗って誰かがこちらにかけてきた。
聖獣を見れば、誰だかすぐにわかってしまう。
あの漆黒のドラゴンはハオの聖獣だ…
ハオはわたしのそばに降り立つと、わたしのベールを解除した。
わたしをぐっと引っ張り、抱き寄せられる。
もう片方の手は私の肩に乗せられた。
彼は戦っていたから、息を切らせながらも言葉を紡ぐ。
「…信じてくれ。
必ず、迎えに行く。」
低く、まっすぐな声でわたしの耳元でささやくと、わたしの横に少し攻撃魔法を打って離れていった。
その後すぐに、バレンシャン王国の人たちが一斉に転移魔法をして消えた。
まるで夢みたいだった。
けれど、あのぬくもりも、ささやきも、現実だった。
彼は去った。
敵として――
でも、わたしを守る人として。
一瞬の出来事が、わたしのすべてを、変えてしまった。




