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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第十章 ~4年生後半 惚れ薬の真実 ~

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10-4. ハオ視点: 本音と素顔

「ん……」


ネネが俺の腕の中にいる。

その温もりに胸がぎゅっとなった。

離したくない。

このままずっと抱いていたい。

無意識に腕に力がこもる。


すると、ネネが小さく腕を回して、抱きしめ返してくれた。


「……ネネ…好き」


気づいたら、本音が口から漏れていた。

まだ薬が効いてるのか?

いや、たぶんもう切れかけてる……

でも、もうどうでもいいや。


この夢みたいな時間に、少しでも長く浸っていたい。

足を絡め、彼女を引き寄せる。


「……わたしも好きだよ」


——その声が、あまりにもリアルで。

まるで夢にしては鮮明すぎる。


「あ……ネネか」


ゆっくりと目を開けた。

視界の中の彼女。

これは夢じゃない。

現実だ。

彼女がすぐ隣にいるというだけで、全身が熱くなる。


腕と足をほどいて、俺は仰向けになった。

右手に残る温もりが、愛しい。


(……にしても、本音が勝手に出なくなってる?)


薬がやっと切れたんだな。

思わず、ため息が漏れる。


「……はぁ、くそっ……」


俺は顔を覆いたくなった。

(やばかった……昨日はほんとに)


本音が止められないってことは、つまり——

もし気を抜いてたら、「俺の正体」まで話してたかもしれない。

ネネの前で、自分が誰なのかを……。


(バレたら、全部終わる)


俺がどこから来て、何者で、何のために近くにいるのか。

それをネネに知られたら、彼女を守れなくなる。

それだけは絶対に避けなきゃいけなかった。

けど、ほんの一瞬だけ、ふと思った。


(——バレてもよかったのかも)


全部を知ってほしい。

もう、隠しきれないくらい好きなんだ。


そんな“甘え”が、少しだけ、心の隙間からこぼれそうになっていた。

俺は目を閉じたまま、静かに言った。


「俺、起きたわ」


「おはよう、ハオ。……もしかして、元に戻った?」


「うん、多分」


「昨日のこと、覚えてる?」


あぁ、きた。

ネネは俺が覚えてないと思ってる。

……けど、俺は全部、覚えてる。


「覚えてない……」


少し黙ってから、口を開いた。


「って言ったらどうする?」


ネネの反応が知りたかった。

ただ、純粋に。


「覚えてなかったら……ちょっと寂しいかな。わたしだけの思い出になるのは、さみしい」


かわいすぎるだろ、こいつ……。

薬が効いてたときなら、この感情がそのまま口に出てただろうな。

でも、今は理性が戻ってる。

だからこそ、余計に恥ずかしい。


「じゃあ、覚えてるって言ったら?」


俺は目をそらす。

覚えてるんだよ。

全部。


「覚えてくれてたら、嬉しいな。あの時間が、わたしだけのじゃなかったって思えるから」


嬉しそうな顔で言うなよ……

また心臓止まるだろ。


「……俺は、全部覚えてる」


言ってから、もう一度顔を隠した。

恥ずかしすぎて死にそうだ。


「……はぁー、くそっ」


体を起こして、横になっているネネを見つめる。

その表情をちゃんと見たくて。


「時間を……戻せたらいいのに」


切実にそう思った。


「あんな状態で言いたくなかった」


ネネの顔が少し曇る。

いけない、このままじゃ誤解される。


「ネネ、起きて」


優しく声をかけて、腕をとった。

彼女を起こして、目を見て伝える。


「……あれは、惚れ薬っていうより、“本音が出る薬”だったんだ」


「えっ?!」


ネネは驚いて、俺の腕を掴んだ。


「“惚れさせる”んじゃない。……もともと心にある気持ちを、抑えられなくなる薬だった」

「ってことは、昨日の言葉は全部……」


「待て、それ以上言うな」


俺はあわててネネの口元に手をかざした。

これ以上は、俺が耐えられない。


「薬の力は借りたけど……あれは全部、俺の本音だ」


声が震えた。

顔が熱い。

今さら言っても遅いけど、俺は——


「ほんとは、ちゃんと、自分の言葉で伝えたかったのに」


悔しかった。

ネネに、自分の意思で伝えたかった。


「大丈夫だよ。わたしは伝えてくれて……嬉しかった。愛しかった」


その言葉に、俺の胸の奥にあった後悔が、少し溶けた気がした。

ネネが両手で俺の頬を包む。

その瞳に、一瞬だけ揺れが見えて、次の瞬間にはまっすぐに俺を射抜いた。


「……ハオ、ありがとう。

——大好きだよ」


……心臓が止まるかと思った。

その一言に、すべての想いが込められていて、息ができなかった。

どう受け止めたらいいのかわからなかった。

この想いに、応えたくてたまらないのに——


(……ごめん、ネネ。俺は、君を裏切る)


心の中で呟いた。

彼女に見せられないものを、俺は背負ってる。


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