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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第十章 ~4年生後半 惚れ薬の真実 ~

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10-3. ネネ視点: 朝の、本当の言葉

朝の光がまぶしい。

あれ…ここは

——あ、特別室だ。ハオは…?


ゴロんと体勢を変えると、目の前にハオの寝顔があった。

少し乱れた髪、長くて整ったまつ毛。

寝息は規則的で、気持ちよさそうに眠っている。


ハオの寝顔を見るのは、これが2回目。

結局昨日は、同じベットで一緒に寝たのだった。


レオハルド王子が心配していたようなことは起こらず、とりあえず一安心かな。


それにしても……こんなに綺麗な寝顔、反則。

息をしてるだけで、ハオが愛しくて仕方ない。


はぁ…ぎゅってしたい。

惚れ薬の効果はまだ残ってるはず。

……だったら、今だけ、甘えてもいいよね?

思い切って、そっとハオに抱きついた。


お布団の温かさ。

ハオから香るシダーウッドの落ち着いた匂い。

じんわりと、胸の奥が溶けていく。


あぁ……幸せ。


毎朝、こんなふうに目覚められたらいいのにな。

すりすりと顔を胸にこすりつけていたら、ハオの体がビクりと反応したのがわかった。


「ん…」


寝ぼけているのか、わたしを抱き寄せる手に力が入る。

まるで、わたしを失いたくないって言ってるみたい。


まだ惚れ薬効いてるのかも…


惚れ薬のおかげで、たくさんの優しい言葉をハオからもらった。

まるで夢の中の出来事みたいで、幸せで——でも、少しだけ切ない。


あれは本物のハオじゃない……。

惚れ薬の効果が切れたら、わたしたちはまた、何事もなかったように戻るの?


考え始めたら、胸がざわざわしてきた。

今だけは。今だけは……

この瞬間を実感したい。

もう一度、ぎゅっと強く抱きしめると——


「…ネネ…好き」


とハオが小さく、夢の中でささやいた。

えぇ?!これは寝言?それともー


可愛過ぎて胸が苦しい…!

顔が熱い。息が詰まりそう。


「ん〜…」


少し伸びをしたあと、次は足をわたしの足に絡めてきた。

ハオの腕がわたしの腰に回ってー


ちょっ、これは……

どうすればいいの?!


「……わたしも好きだよ」


思わず小さい声でつぶやいてしまった。

まるで、本当のカップルみたいに。

くすくすと笑みこぼれてしまう。


「あ…ネネか」


ハオが目を開けた。

わたしの体を少し離して、ゴロンと仰向けになった。

その右手だけは、まだわたしの下にあるまま。


「……はぁ、くそっ」


左手で顔を隠し、ぽつりとつぶやく声。

え?急にどうしたの?


「俺、起きたわ」


天井を見上げたまま、そう言った。

いつもの口調に戻ってる……?


「おはよう、ハオ。

……もしかして、元に戻った?」


「うん、多分」


淡々と答える声に、少し寂しさを覚える。


「昨日のこと覚えてる?」


聞かずにはいられなかった。


「覚えてない」


……やっぱり。


「って言ったらどうする?」


え?

ハオのその言葉に、一瞬、戸惑う。


「覚えてなかったら……ちょっと寂しいかな。わたしだけの思い出になるのは、さみしい」


正直な気持ちを伝えると——


「じゃあ、覚えてるって言ったら…?」


そう言ってハオはまた顔を腕で隠してる。


「覚えてくれてたら、嬉しいな。あの時間が、わたしだけのじゃなかったって思えるから」


あれ?沈黙が長いな…

どうしたんだろう…


「……俺は、全部覚えてる」


その一言に、息を呑んだ。

全部——?

惚れ薬の時の、あの言葉も、表情も、行動も……?


腕の隙間から見えるハオは、何となく顔が赤くなってるような、気がしないでもない。


「…はぁー、くそっ」


ハオが上半身を起こす。

わたしの方をまっすぐ見て、真剣な眼差しを向けてくる。

ハオの手がわたしの指に絡んだ。

朝日の中、彼の紫の瞳だけが強く光っていた。


「時間を……戻せたらいいのに」


その言葉に、胸が痛む。

どうして? 

そんなに後悔してるの?


「…あんな状態で言いたくなかった」


顔を向き、絞り出すようにつぶやく声。


「ネネ、起きて」


さっきの声とは違い、今度は優しい声で言だった。

わたしにふっと微笑みを向けると、わたしの腕をとって、そっと起こしてくれる。


「……あれは、惚れ薬っていうより……“本音が出る薬”だったんだ」


「えっ?!」


思わず、ハオの腕をつかむ。

驚いて目を丸くする彼。


「“惚れさせる”んじゃない。“もともと心にある気持ち”を溢れさせる薬——」


ハオは伏し目がちに、ゆっくり続けた。


「ってことは、昨日の言葉は全部……」


「待て。それ以上言うな」


わたしの口元に、手を添えるフリ。


「薬の力は借りたけど……あれは全部、俺の本音だ」


その言葉に、胸がドクンと鳴った。

ハオの頬がうっすらと赤く染まっている。

わたしは、初めて見る“照れてるハオ”に見惚れていた。


「はぁー……俺、あんな薬のせいで……」


悔しそうに言葉をつづける。


「ほんとは、ちゃんと、自分の言葉で伝えたかったのに」


(だから“くそっ”って言ってたんだ……)

全部、ぜんぶ、大切に思ってくれてたんだ。


「大丈夫だよ。わたしは伝えてくれて……嬉しかった。愛しかった」


ハオのピンクに染まった顔を両手ではさむ。

胸の奥が、じんわり熱くなっていた。

伝えていいのかな…でも、今しかない。


「……ハオ、ありがとう。

 ——大好きだよ」


言ってしまった。

何度も心の中で練習した、あの言葉を。


でも、いまのわたしには

それが一番、まっすぐな答えだった。


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