9-10. 待っていてくれたぬくもり
会場を出るとハオが待っていた。
目の前のことに集中していたら、いつの間にか緑夏の季節に移り変わっていたみたいだった。
夜風の中にあたたかさを感じて、ようやく気づく。
ハオは
「おめでとう」
と微笑み、ハオが両腕を広げた瞬間、胸の奥がぎゅうっと熱くなった。
この場所に帰ってこられたんだって──やっと、心から思えた。
これは、胸に飛び込んでもいいってことだよね?
わたしは満面の笑みを浮かべて、ハオの胸に飛び込んだ。
いつもはわたしを受け止めてくれるだけだけど、今日のハオはぎゅうっとわたしを抱きしめてくれた。
ハオの腕は、想像以上に強くて、でもやさしくて。
背中にまわされた手のひらから、あたたかさがじんわり伝わってくる。
感動で涙を流して涙腺がゆるゆるになっているところに、ハオの優しさが追い打ちをかけた。
幸せが溢れて、また涙が出てきてしまう。
「ハオ、ありがとう」
見上げたハオの瞳は、夜の光を映してやさしく揺れていた。
まるで、わたしの未来を見守っているみたいに──。
ありがとうの一言じゃ、とても伝えきれないほどの感謝がある。
でも、今はこの一言に想いをのせた。
「ネネの頑張りが全部、ちゃんと届いてたよ。そして、このグループでなら、ネネの良さを活かせるんじゃないか?」
ハオはそう言って、わたしの髪をそっと撫でてくれた。
ハオに撫でられて、わたしは落ち着いた気持ちになった。
もっと甘えたくなった。
ハオの留学期間が終わってしまう前に、わたしの進む道をしっかり示すことができてよかった。
きっと、わたしはまだまだ未熟で、頼りないけれど。
でも、ハオの隣にいるって決めたから──わたしも負けないように、強くなる。




