9-4. 10人で夢を掴め!
最終審査に残ったのは、個性豊かな10人のメンバーだった。
ダンスや歌だけでなく、すでに作詞作曲をしている人、演劇出身の人、読み語りで注目された人など、いわゆる“アイドル”の枠にとらわれない人たちばかりだった。
そんなメンバーを見たとき、私はただ純粋に「おもしろそう」と思った。
ここから生まれる音楽には、無限の可能性がある
――そう感じたら、ワクワクが止まらなかった。
最終審査の審査員の中には、以前の公開オーディションでお世話になった方の姿もあった。
見つけた瞬間、私は迷わず駆け寄って声をかけた。
「こんにちは。ネネルーナ・エストラーダです。以前のオーディションではお世話になりました」
「ネネルーナさん、お久しぶりですね。こうしてまたお会いできて嬉しいです。夢を追い続けてくださっていて、安心しました。最終審査は思いきり表現してくださいね」
その言葉に、胸の奥からふつふつと強いエネルギーが湧いてくるのを感じた。
今回の最終審査の課題は、“10人で一曲をつくりあげる”こと。
与えられた課題をこなすのではなく、曲作りから演出、完成までのすべてのプロセスが評価されるという。
正直ハードではあるけれど、その分、心が躍った。
しかも、与えられた時間はわずか2週間。
楽曲制作に加え、パフォーマンスや演出の練習までこなす必要がある。
時間的にはかなり厳しい。
でも、やるしかない。
やるからには、10人全員で合格したい。
みんなで一緒に、アイドルになりたい。
「これは最終審査だけど、アイドルとしてデビューするつもりで“デビュー曲”を作るっていう意図で進めたらどうかな?」
「いいと思う!みんなで合格しようよ!みんなで夢、叶えよう!」
私の提案に、一番に声を上げてくれたのはヒヨナだった。
可憐でおとなしい印象だけれど、芯があって、とても優しい子だ。
「デビュー曲を考えるって思うと、すごくワクワクするね。それでいこう!」
「これが本当に、デビュー曲になったりしてね」
グループの雰囲気も、すごくいい感じだった。
私たちは輪になって手をつなぎ、「全員でデビューする未来」をイメージした。
それぞれの波動を共鳴させ、エネルギーを高めていく。
中には、直感的に映像を受け取れる子もいて、見えたイメージをシェアしてくれた。
「青春ソングのイメージが浮かんだな。さわやかで、ピュアで、透き通るようなエネルギーだった」
「恋をしたときの幸せな気持ちとか、心がポカポカする感じ、くすぐったい想いとか」
「今恋をしてる人も、過去に恋をした人も、これから恋をする人も、みんなが“キュン”とする瞬間を詰めこみたいね」
そうして、私たちの曲の方向性が少しずつ固まっていった。
すると、普段から作詞作曲をしているドロテアが、楽曲づくりについて提案してくれた。
「私、作詞作曲は慣れてるから、中心になって進めようと思う。でも、興味ある人がいれば一緒にやりたい」
自分がリードしつつも、周りを巻き込もうとする姿勢がとても頼もしくて、素敵だなと思った。
実は私も、このプロジェクトを通して「いつか自分の想いを曲にしてみたい」という気持ちが芽生えていた。
これはまさにチャンスなのでは――そう思い、勇気を出して手を挙げた。
「わたし、作詞作曲したことないんだけど、興味ある! 一緒にやりたい!」
「私もやりたい!いいかな!」
私とヒヨナの声が同時に上がり、顔を見合わせてふふっと笑った。
「じゃあ、私・ネネルーナ・ヒヨナの3人で進めていこう。時間が限られてるけど、こだわるところはしっかりこだわって、いい曲を作ろうね!」
頼れるドロテアを中心に、私たち3人で楽曲制作を担当することになった。
残る7人のメンバーは、それぞれの得意分野を活かして、演出や構成の土台づくりをしてくれることに。
演劇出身のソフィアは演出が得意とのこと。
頼れる仲間がそろっていて、これからが楽しみで仕方ない。
今回の2週間も泊まり込みでの審査になる。
だけど、公開オーディションのときのように無理をして自分を苦しめるのではなく、
**“自分を大切にしながらやりきる”**と、私は心に決めた。




