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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第八章 ~4年生 前期~

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8-9. 一瞬の煌めきが、誰かの未来になる

凍冴の風が頬を切るように吹きつける朝。

わたしはマントをぎゅっと握りしめながら、公開オーディションの会場へと向かっていた。

すぐそばにはハオがいる。

わたしの護衛として、今日も学校の授業前にわざわざここまで付き添ってくれた。


「おまえの初舞台だからな。送って当然だ」


そう言って笑ったハオの声が、冷たい風の中でも温かく響いていた。

護衛という任務であっても、こうして誰かに大切にされている感覚は、心の奥に灯る希望みたいだった。


一次審査は、自分の“いちばんの魅力”を魔法で表現すること。

持ち時間は3分。

会場には観客もいて、審査の様子は放送される。

名前を呼ばれるたび、次々とステージに立つ出場者たち。

みんな輝いていて、自信に満ちていて、自分の魔法をどう見せるかに工夫が凝らされていた。


魔法で魅せる世界に、観客から感嘆の声が漏れる。

…すごいな。みんな本気だ。

この中で“順位がつく”ことの重みが、ひしひしと胸に迫ってくる。

でも――これを越えなきゃ、夢には届かない。



半分が終わったところで、休憩が入った。

次は、わたしの番。

心臓の鼓動がドクン、ドクンと、体の奥から響く。

鼓動が速くなるほど、生きてることを実感できる気がして、怖いけれど、どこかでわくわくしている自分がいる。


「大丈夫。練習した通りにやるだけ。あとは楽しむだけだよ、ネネ」


そう自分に言い聞かせて、わたしはステージへ上がった。





照明が落ち、音楽が流れる。

ステージの前に、ペンライト型の魔法装置エンチャント・リフレクターが現れる。

わたしが魔力を込めると、審査員や観客の前に光が弾けた。


この魔法は、“感動を伝える”魔法。


わたしのポジティブな想い(喜び、希望、感動)をペンライトに乗せて届ける。

掴んだ人の魔力と共鳴すれば、ペンライトが空にその人の光を放つ。


これは、ただの演出じゃない。

わたしが人に届けたい“心の魔法”なんだ。


わたしは歌い、踊った。

届け。

わたしの声が、想いが、誰かの心を震わせますように。

この舞台を見て「明日も頑張ろう」って、そんな風に思ってもらえたら、嬉しいから。





パフォーマンスが終わると、わたしの胸に拍手の音が降りそそいだ。

はあ…終わった…!

息を吸い込んで、ステージ中央に立つ。

審査員たちが、わたしをじっと見つめていた。


「素晴らしいパフォーマンスでした。ネネルーナさん、あなたは雷型の魔法使いですよね? でも、雷型の魔法を使わなかった理由は?」


わたしは少し息を整えてから、ゆっくり答えた。


「はい。最初は雷型で行こうと思っていました。でも……見てくれる人が楽しんで、心を動かしてくれるなら、わたしの属性にこだわらなくてもいいって、そう思ったんです」


「なるほど。意外性があってよかったですよ。そして、このパフォーマンスを通して、あなたが一番伝えたかった魅力は何ですか?」


わたしは少し間を置き、まっすぐ前を見て言った。


「“巻き込む力”です。

わたし一人じゃ、きっと何も変えられないけれど……でも、誰かの心を動かせたら、その人がまた誰かを動かしてくれる。

わたしの魔法が、“希望の連鎖”になれたらいいなって、そう思っています」


この言葉に、ステージの向こうからまた拍手が響いた。

一瞬だけど、夢が、ほんの少しだけ近づいた気がした。


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