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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第八章 ~4年生 前期~

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8-8. 君が気づかせてくれたわたしの魅力

ハオの後について行った場所は、相談室の一室だった。

初めて入る場所。落ち着いた照明と柔らかなソファがある、静かな空間だった。


「ここはなんの部屋?」


「バレンシャン使節団が自由に使っていいって許可もらってる。俺ら専用の“詰所”みたいなもん」


「へぇ……知らなかった。特別な場所なんだね」


そんな場所に、わたしを連れてきてくれたのが少し嬉しい。

ハオに促されてソファに並んで座った瞬間、ハオの表情がほんの一瞬だけ固まった気がした。


「…さっき、“先輩”と仲良さそうだったな」


「え?そうかな?」


「頭、撫でられてただろ。……楽しそうだった。

……ま、どうでもいいけど。」


ほんの一瞬、ハオの目が寂しそうに揺れた気がした。

でも、どうでもいいなら、なんで言ってきたんだろう?

……もしかして、やきもち?

そう思ったけど、そんなこと聞けるはずもなくて。

わたしが何も言わずにいると、ハオが軽く溜め息をついた。


「で、課題の演出は決まったのか?」


相談に乗ってくれるんだ!

朝からハオを独り占めできて嬉しい。


「みんなすごい魔法ばっかりで……。私、ただ派手なだけじゃ嫌なの。心に残るものがやりたい。でも、どうしたら“私らしい”って思ってもらえるんだろ…」


ハオは少し呆れたように笑って


「……お前、ホントに自分のことわかってねぇな」


「えっ?」


「 ネネルーナのいいとこは、明るくて、ポジティブで……まっすぐで、バカみたいに真剣なところだ。

雷の魔法にこだわりすぎるな。お前がそのまんまでいるのが、いちばん目立つんだよ」


「……そのまんまのわたし?」


「そう。変に作らなくていい。素のままのネネがいちばん輝く。それを魔法にすりゃいい」


ハオの言葉でわたしの凝り固まった思考が解き放たれるのを感じた。

そっか、雷型の魔法じゃなくてもいいんだ!

わたしを表現すればいいんだ!わたしはピッと直感を受け取った。


「そっか……! じゃあ、あれ使えるかも。青春祭でやった、“エンチャント・リフレクター”! 観客の光を集めて反射する魔法…!」


いい案を思いついたけど、わたしはあることに気づいた。


「でも…この魔法はアイドルグループみんなで考えて作ったものでもあるんだよね…わたしだけ自分の魔法として使っちゃっていいのかな…」


「一人で悶々と考えるより、直接みんなに聞いてみたらどうだ?」


ハオのストレートな考え方に救われる。

確かに…みんなにわたしの想いを伝えてみよう。


さっそくみんなを招集しないと!

わたしのやるべきことが見えてきて、行動したくてうずうずする。


「ハオ、ありがとう。道が開けた気がする」


わたしが困っている時、それに気づいてくれるハオの存在が有り難かった。

それと同時に、わたしもハオが困っていたら、そばで支えたいと思う。

正直、ハオが何を考えているのかわからないことがある。

わたしも、ハオの心に少しでも近づけたらいいな…

そして支えられる存在になれたらいいな…。

部屋を出るとき、わたしは振り返って、ハオにもう一度お礼を言った。


「ありがとう、ハオ。ほんと頼りになるね」


ハオは少しだけ眉を動かして、でもすぐに視線を逸らして言った。


「……誰にでも、言ってんのか、それ」


「何か言った?」


「いや、別に」


わたしが不思議そうに見つめると、ハオは照れ隠しのように目を逸らした。


本当は、何を考えていたんだろう――

やっぱり、今のわたしはまだわからなかった。



✳︎



早速アイドルグループのメンバーを集めて、わたしの想いを伝える機会をつくった。


「みんなに聞きたいことがあるの」


メンバー一人一人の目を見てからわたしは言葉を続けた。


「今、わたしは公開オーディションに進んでいて、課題に「自分を1番魅力的に見せる魔法審査」があるの。そこで、わたしはエンチャント・リフレクターを使いたいと思ってる。」


いつもは茶化したり、ふざけたりするメンバーも、真剣に聞いてくれている。


「この魔法は、みんなで考えた魔法だから、わたしが考えた魔法として、オーディションで勝手に使ってしまうのはよくないと思ったの。みんなの意見を聞かせてくれるかな…?」


とても緊張した瞬間だった。

たくさんの時間を過ごしてきて、信頼している仲間だからこそ、みんながどう思うのか心配だった。


「な〜んだ、そんなことか」


とメンバーの一人がクスッと笑う。


「え?なんで笑うの?」


何となく温かい空気が流れ、わたしの緊張も少し緩んだ。


「これはみんなで考えた魔法だけど、元々はネネルーナのアイデアでしょ?この魔法を作る時に、ネネが一生懸命、何度も試行錯誤してるのも知ってるし。わたしはむしろ、ネネが作り出した魔法だと思ってたよ。だから、わたしはネネには、ぜひその魔法を使ってオーディションに臨んでほしい。」


「ダメって言うわけないじゃん。私たちのこと、見くびらないでよね〜!」


「ネネが使っていいよ!私たち、そんなに心狭くないから!」


「ネネ、応援してるよ!エンチャント・リフレクターで、ネネの魅力を爆発させておいで」


みんなの言葉がわたしの心に響いて、涙が溢れた。

わたしはみんなに応援してもらってる。同じアイドルを目指す仲間として、こんなに快く送り出してもらえるなんて…

なんて最高の仲間なんだろう…


「みんなありがとうー!」


そう言ってわたしはみんなを抱きしめた。

まるで青春祭のステージが終わった時のように、わたしは涙を流していた。

わたしの涙にもらい泣きをして、なぜか最後はみんなで泣いていた。


みんながそれぞれの方法で、タイミングでアイドルの道へ進んでいく。

最後はみんなで円陣をした。


リーダー「声出していこう!」

みんな「はい」

リーダー「笑顔で行こう!」

みんな「はい」

リーダー「私たちならできる!」

みんな「はい」

「せーのっ!ファイティーン!」

「フゥー!」


最高の仲間に出会えたことに、心から幸せを感じた。

わたしは、みんなとの絆のおかげで強くなれる。

わたしらしく、オーディションでわたしの存在を解き放ってくるわ!


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