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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第八章 ~4年生 前期~

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8-1. 新しい朝、新しい出会い

お兄様は学校を卒業して、騎士団へ入った。


そしてわたしは4年生になった。

紅秋の季節――それは、新しい学期の始まりでもある。


ハオがミドバーレ魔法学校へ来て、もう3年目。

彼にとっては、この学園で過ごす最後の年。

わたしにとっては――夢を現実に変える、大事な一年にしたい。


気づけば、彼と過ごす日々が“当たり前”になっていたけれど、

それが永遠に続くわけじゃない。

――だからこそ、わたしもちゃんと前を向いて進まなくちゃ。


16歳になる今年、いよいよアイドルオーディションへの応募が始まる。

今学期から、わたしはアイドル養成所に仮所属することになった。

歌やダンスのレッスンが受けられる新しい環境は、きっと厳しい。

でも、それ以上にまぶしい世界だと思う。

……この道のどこかで、本当の自分に出会える気がしている。

緊張で足がすくむ瞬間もあるけど、それでもワクワクしてる自分がいる。


ハオがこの学校に来てから、わたしの日常はぐんと彩りを増した。

彼との時間は、毎日を特別にしてくれた。

だからこそ、彼が帰国したあとも、自分の中で支えになるように――

大切に、心に刻んでおきたい。


……新学期なのに、ちょっとしんみりしちゃった。

最初の一年目なんて、仮面をしていて顔もわからなかったのに。

今じゃあたりまえのように、素顔の彼と過ごしている。

ほんの小さな出会いで、こんなにも世界は変わるんだ。


4年生になってからも、わたしはアイドルになるための自主練を続けている。

朝早い時間が好きだし、ハオを無理に起こすのは申し訳ない。

だから、護衛の彼には朝食前に迎えに来てくれるようにお願いしている。


ハオがいると緊張しちゃうから、練習は一人の方が気楽。

今朝もいつものように、鏡張りのダンスホールへ向かう。

鳥のさえずりが聞こえる、静かで澄んだ朝。


準備運動と筋トレを終えてダンスの練習に集中していると、

――コンコン、とドアを叩く音がした。


入口に目を向けると、見知らぬ男の先輩が立っていた。

赤毛をハーフアップにまとめた、少し長髪の人。

瞳はオレンジ色。

……ちょっとチャラそう、なんて思った。


「おはようございます。あの、何かご用ですか?」


「おはよう。ネネルーナ様って、いつも朝早く練習してるよね?

あ、ごめん、俺のこと知らないよね。俺はアレキ・セルシオン。6年生。」


「アレキ先輩、初めまして。練習のこと、知ってたんですね。

それに、年上なんだから敬語じゃなくて大丈夫です。

名前も呼び捨てで構いませんよ。」


「そっか、ありがとう。

実は俺もアイドルを目指してて、よくここで自主練してたんだ。

ネネルーナが踊ってるのを、何度か見かけたことがあって。」


「そうだったんですね!先輩もアイドル志望なんだ。

最近、男性アイドルも人気出てますよね!」


少し立ち話をして、せっかくなので一緒に練習することに。

アレキ先輩は水属性の魔法使いで、美形。

中性的な顔立ちと大きな目は、まさに“アイドル顔”。


髪が長くてチャラいのかと思ったけど、実は努力家で真面目な人だった。

人って、見た目だけじゃわからないんだなと思った。

いつも一人でやっていた練習が、今日は誰かと一緒。

ちょっと意外だったけど――すごく楽しかった。

自分じゃ気づけない癖を教えてもらえたりして、とても有意義な時間になった。


アレキ先輩も、わたしと同じ養成所に所属していることがわかった。

夢に向かって努力している人って、こんなにも真剣なんだ。

わたしもちゃんと頑張らなきゃ。

負けたくないって、素直に思った。


練習が少し長引いてしまった。

ハオが待っているかもしれないと思い、急いで寮に戻ると、

いつもの場所でハオが待っていてくれた。


「ネネルーナ、おはよう。今日は練習長めだったんだな」


「うん。たまたま会った先輩と一緒に練習してたら、時間忘れちゃって。

今、シャワー浴びてくるから待ってて。ごめんね!」


その時、ハオの眉がピクリと動いた気がした。

でも彼は、何も言わずに、いつもの笑顔でうなずいてくれた。


――わたしの気のせい、だよね?

そう思いながら、急いでシャワーへ向かった。





アレキ・セルシオン視点


俺の名前はアレキ・セルシオン。6年生。

今日、初めてネネルーナとちゃんと話した。


だけど――彼女の存在を知ったのは、もっと前。

2年前、魔力共鳴ライブのステージ裏でぶつかった時のことだった。


「あっ、ごめんなさい」


そう言って駆けていった彼女の背中が、なぜか心に残った。

アイドルになりたいと宣言する、明るくて前向きな子。


王族の血を引く彼女は、赤い瞳が印象的で、校内でも目立つ存在。

最初は“かわいいだけ”で注目されているのかと思っていた。


でも、毎朝誰よりも早く来て、黙々と自主練をする姿を見て、

――衝撃を受けた。


この子は、本気で夢を追いかけてる。

俺と同じように、アイドルになりたいって願ってる。


それから何度かすれ違ったが、彼女はずっとハオに夢中だった。

仮面をつけて素性がわからなかった頃から、なぜか彼にまっすぐ気持ちを向けていた。


ハオはそれに反応することもなく、淡々としていたけど、

それでも一生懸命な彼女の姿が、健気でかわいかった。


今日、練習を一緒にしてみて、思った。

ネネルーナは、素直で愛嬌があって、本当に魅力的な子だった。

……こんな子をスルーし続けるハオ、逆にすごいな。


俺もアイドルを目指している。

同じ夢を追う者として、彼女の力になりたい。

彼女と一緒にステージに立ちたい。

ネネルーナのまぶしさに――

正直、心が揺れた。

初めて、「隣に並びたい」と思った。


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