7-6. ソランティア視点:その夜、彼だけが知っていたこと
「ソランティア、ちょっといい?」
マミーナの声に振り向いた瞬間、
彼女と目が合った。——その眼差しに、俺は確信した。
同じことを感じていたのだ、と。
「……あのハオ君のとっさの行動。危険から守るためだったのはわかるけど、違和感が残るの」
「……俺もだ。あの時の目、あれはただの従者の反応じゃない。……追跡魔法、かけてみるか?」
マミーナがうなずく。
二人で、爆発が起きる直前の時間まで魔力をさかのぼる——
宙に浮かび上がった魔法陣を、俺たちは再現し始めた。
「これは……ただの花火の魔法陣じゃないな」
「暗号術が混ざってる…?もしかして古代語も……」
「見たことのない陣式だ。独自の構造で、術者の意図を隠している…」
魔力の残りを手繰り寄せ、波長と性質を解析する。
そこには、思わず眉をひそめる反応があった。
「……これは、召喚系の魔法だ。しかも、危険度が高い。もう焼け落ちているから詳細は不明だが、明らかに花火用ではない」
「やっぱり……あのとき、ハオ君は何かを知っていた。
火薬のせいにしていたけど、あれは“とっさに庇いながら破壊する”という、訓練された動きだった…?」
俺はコテージでの数日間の出来事を思い返す。
「この一週間、彼の気品や魔力量、剣の腕、魔法の知識……見れば見るほど、“ただの従者”ではない。あれほどの実力を持ちながら、決して前に出ようとしないところも妙だ」
マミーナが静かに言った。
「——ハオ君、何者なのかしら……」
俺たちの間に、沈黙が落ちる。
だがその沈黙は、確実にひとつの答えへと近づいていた。
ハオは一体、何者なのでしょうか…?
次、第八章に続きます!




