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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第七章 ~4年生前 学校休み編~

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7-2. 甘やかし背中と、くすぐったい夜

夜が深まったあたりで、肝試しをすることになった。

わたしは猛反対したのだが、みんながノリノリなもんだから、決定してしまった…

誰が好き好んで、肝試しをするのか…

全く理解できない…


男女のペアで行くことになり、くじを引いたら3番だった。

これは、3番目に出発するペアということ。

わたしのペアは誰だろ〜と思っていると、レオハルド王子がわたしの番号をチラっと見た。そして、耳元で「俺、変わっておくよ。ハオと楽しんで」とウインクしてさっとみんなに紛れていった。


レオハルド王子って、やっぱり気が利く男No.1だな…と改めて思った。

3番目のペアとして並ぶと、隣にはハオが来てくれた。

やったー!ハオと一緒に行ける!

もう、遠慮なく抱きつくんだからね!と先に決めている。


私たちの番が来て、わたしがビビりまくっているけれど、ハオはそれを無視してスタスタと先へ行こうとする。

わたしは必死にハオを止めて、彼にしがみつく。


「ネネルーナ、ちょっと、近すぎる」


わたし、本気で怖いのに…

塩対応スタートが辛いです…


「だって、だって、だって、本当に無理だもん」


ハオは平気な顔で歩いていく。

そして、説明をしてくれる。


「ネネルーナが怖いと思えば思うほど、怖く見えてしまうんだよ。実際、サーラーン王国にはお化けが少ないからいいじゃないか。波動が高い国だから、安心したらいいよ。この肝試しだって、魔法の演出だから、実際にいるわけじゃないし」


え?ハオってお化けのこと知ってる系?

なぜそんなに詳しいのだろう…


「実際にいるわけじゃないって、何でわかるの?」


「それは、ネネルーナが実際に見たことないから言えるんじゃない?」


わたしを怖がらせるセリフをニヤっとしながら言い放つ。

それって、お化けがいるってことを言いたいんだよね…無理ー!


「あっ!ほら!」


急に立ち止まって指を指すから、てっきりお化けがいるのかと思ってキャーっと叫んでハオに思いっきり抱きついた。

ハオはわたしの反応を見て、からかうことが成功して面白そうに笑ってる。


「ほら、見えない?」


嘘…からかってるわけじゃなくて、本当にいるの…?

わたしの心臓がどんどん早くなる。

いや、その指差す先を見たいんだけど、でも見たくもないのよ…とハオに顔を埋めていたら、


「森の妖精がいるよ」


わたしの肩をポンポンと叩いて、指先を見るように促した。

森の妖精?!

そんなの見たことないんだけど!


わたしは妖精なら見たい!と思って顔をぐいっと指差す方へ向けた。

ハオがライトをつけてくれたから、どこに妖精がいるのかすぐにわかった。

なぜか、葉っぱがくるくる回っていたのだ。

別に風が吹いているわけではないのに、その葉っぱだけがくるくる回っている。


「……これが、森の妖精…?」


「そう、可愛いよね、ダンスしてる」


「ハオってもしかして…見える人だし感じる人でもある?」


「いや、普通だと思うけど?」


普通の人って、やっぱり特別だな…。

ハオって、やっぱり“感じる人”なんだ。知らなかった。

──と、思っていたら。


「ひゃっ!?!?」


ふわっと何かが頬に触れて、わたしは本気で叫んでしまった。

魔法の演出って分かってる。でも無理。

腰が抜けて、地面にぺたんと座り込む。


「立てる?」


ハオがしゃがんで、優しく聞いてくれる。


「ごめん、ハオ、わたし腰が抜けたみたい…」


わたしは立てなくなってた。そんなわたしの様子を見て


「仕方ないな」


そう言って、ハオはくるりと背を向けて、しゃがみ込んだ。

背中──差し出されてる…!


「…うぅ、ハオ様…!」


わたしは、甘えるように抱きついた。

首もとにぎゅっと顔をうずめると、優しいシダーウッドの香り。

大人っぽくて、安心する香り。

ハオって、体温も声も、全部落ち着いてて、包まれるみたい。

わたしも、早く大人になりたいな。


*


「出口が見えてきたよ」

「ここまでおんぶしてくれてありがとう。もう、降りたほうが──」

「いや、みんなのとこまで連れてって、公開処刑にする」

「はあ!?ちょっとなにそれ!」

ハオの背中でバタバタ暴れるけど、降ろしてくれない。

そのままみんなの焚き火のところへ──


「このお姫様、怖すぎて最初のお化けで腰が抜けました〜」

ハオが涼しい顔で告げると、みんなが爆笑した。


「何それ〜!ネネ、可愛すぎ!」


「ビビりすぎでしょ〜!」


「ハオ君、ネネを助けてくれてありがとう。でも、君達距離近すぎるぞ」


と、さまざまなツッコミの嵐。

最終的には、お兄様によって強制的に引き剥がされた。


公開処刑ってこういうことか…!

でも、わたし、ちゃんと「降ろして」って言ったよね!?!?(必死)


その後、イケメン美少年ルークが抱きついてきて、わたしは後ろにバタリと倒れる。


「ちょっ、ルーク!?」


「ネネ、ぼくも怖かったの〜ぎゅってして〜」


甘え声で飛びつかれて、押し倒されるかたちに。

そのタイミングで、聖獣たちが襲来。


「ちょっ、くすぐったいってば〜!シソ!クレン〜〜!」


わたしは笑いながら身をよじるけど、ペロペロ攻撃が激しすぎて身動きが取れない。

だけど、わたしはひらめいた。

(イケメンと聖獣……そうだ、アレが見たい!)


《ミミ、お願い。わたし、ハオが動物と戯れてるとこ見たいの。癒されたいの》


《了解しました、ネネルーナ様》


短いしっぽをふりふりしながら、ミミがハオに駆けていく。

続いて、シソとクレンもターゲット変更。


「わっ、ちょっ……くすぐったいって」


ハオが珍しく困った顔で、でも笑ってる。

ミミはあろうことか、ハオの胸に飛び乗って、そのままぺろぺろ。


シソとクレンはその周りでうれしそうにじゃれまわってる。

ああ、眼福。これがイケメン×動物というやつ……。

はぁ……ずっと見てたい。

お泊まり合宿の初日は、こうして笑って過ぎていったのでした。


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