6-7. 応援された恋が、切ないなんて
ハオが、これからわたしの護衛になる。
嬉しくて、心がホクホクしていた。
お母様が、そっとわたしの肩に手を置いて寄り添ってくれる。
お母様は、いつも優しい。
「ネネ、あのね……
あなたが夢を叶える未来を、わたしたちは応援しているわ。
でもその未来には、きっと“恋愛禁止”が待っている。
だから、学生の今だけは――心のままに人を好きになって、恋をしてもいいのよ」
その言葉を聞いた瞬間、呼吸が止まりそうになった。
浮かれてる場合じゃなかったんだ。
お父様もお母様も、わたしの夢を心から応援してくれている。
それが、嬉しくてたまらなかった。けれど──
同時に、胸がぎゅっと苦しくなった。
そう、これは「期間限定の恋」なんだ。
わたしがアイドルになれば、きっと恋なんて許されない。
今だけだって、わかってる。
それなのに……わたしはハオを好きになってしまった。
身勝手に、彼を巻き込んでしまっている。
だからこそ、余計に怖くなる。
この関係が、いつか終わってしまうことが──。
わたしは少し気分が落ち込んでしまった。
その後のお父様とお母様の話はこれっぽちも聞いていなかった。
「ハオ君を側に置くことで、レオハルド王子の動向を把握できる。
レオハルド王子にとって、ハオ君は大切な従者の1人だからね。
よい牽制になるはずだ。」
「あら、そこまで考えていたの?」
「もちろんだ。
バレンシャン王国は何を企んで使節団を送り込んできたのかわからない。
表では、国交の良好にする目的だが、警戒するに越したことはない」
「そうね…」
両親の会話は上の空で聞いていなかった。
ハオと一緒に学校へ戻ってきて、寮までの道を歩く。
「どした?
俺が護衛になるのがやっぱり嫌になったか?」
寮の部屋まで送る時、わたしが無言だったからか、ハオが質問してきた。
「いや、ちょっと考え事してて」
始まったばかりの恋なのに、期間限定とわかって苦しいですなんて、言えるはずない…
「明日には元気になってるから待ってて」
手を振って別れようとすると、ハオがわたしを見つめて止まっている。
どした?
わたし、寮に着いたよ。と首を傾げた。
ハオはさっとわたしの元にやってくると、頭にゆっくり手を回して、わたしのおでこにそっとキスを落とした。
キスマークをつけられた時は強引だったのに、今は愛しい人を大切にするかのような…
ボフっと時間差で顔に熱が溜まっていくのを感じる。
廊下が暗くて良かった!
「元気出せよ」
そう言ってハオはマントを翻して、転移魔法したのだった。
廊下の静けさの中で、わたしの胸の鼓動だけが、やけに大きく響いていた。




