6-2. 怒らせたら、どうなるか教えてあげる
寮まで帰ってきたけれど、わたしの気持ちは、まだ収まってなかった。
普段、ほとんど怒ることがないのに、わたし、どうしちゃったんだろう…
わたしはハオの服のそでを掴んで話さなかった。
「ねぇ、いい加減にしないと怒るよ」
ハオは離そうとしてくるけど、誰が離してやるもんですか、と睨みつける。
はぁーと大きなため息をつくと、掴んでいたわたしの腕をハオが掴んでぐっとわたしを引き寄せる。
「後悔しても知らないから」
そういうと、ぐっと顎を掴まれて彼の唇がわたしの首に吸い付いた。
今まで、手を出してきたことはなかったのに、急にどうして…
「ちょっと待って、いたっ…ねぇ…」
「やめない。煽ってきたのはそっちだから」
再び唇が触れたかと思うと、すぅーっと舐められた。
わたしの耳に吐息がかかる。
ゾワゾワした。
まるでわたしの体じゃないみたい。
王子はわたしの足の間に片足を踏み出してぐっと強く抑えてきた。
「あっ…やめ…っ」
抑えられない声がわたしから出てしまう、恥ずかしい。
口を手で一生懸命押さえてもダメだった。
耳元でボソッと囁かれた後、シュルシュルと魔法の跡が見えた。
なに?なにか魔法をかけたの?
「ねぇ、今何したの?」
痛みが走った首元を抑えて王子に聞いた。
「刻印の魔法」
「え…?…刻印?!」
「跡をすぐに魔法で消されたら、何のために付けたのかわからないだろ」
「何の話?何を付けたの?」
「何って、キスマに決まってんだろ」
固まってしまった。
キスマークってこんなふうに付けるの?
あのピリっとした痛みってキスマだったんだ…
「ちょっと待って。
キスマをつける方法を知ってたの?
そういうことを前にしたことがあるってこと?」
自分にキスマをつけられたこともそうだけど、それよりそんなことを誰かにしたことがあることが大問題に思えた。
「あるよ、そんくらい」
「なにそれ!ヤダ!知りたくない!」
「いや、聞いてきたのそっちだから」
キスマを抑えた状態で膨れっ面をしてみせた。
するとわたしのほっぺを両手で挟んでぎゅっと押してきた。
ぶっと音がしてしまう。
恥ずかしくて思わず笑ってしまうわたしをみて、おかしそうに見ているハオ。
「したことあるよ。自分の腕に…」
ボソッと呟く声が聞こえなかった。
「何?今、何て言ったの?」
「別に」
わたしの顔から手を離して引っ張られた服を正している。
何もなかったのように帰ろうとする背中を見て、また服を掴みたいと思ってしまった。




