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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第四章 ~2年生 後期~

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4-1. 球技大会の裏側

今日の朝の投稿、抜ててすみません。

季節はもう緑夏に差し掛かっていた。

もうすぐこの魔法学校での生活も一年を迎えようとしていた。

大地、天からのエネルギーが最高潮に達するまであと少しとなった。

そんな中、私たちの学校ではあるイベントが開催される。


その名も…「球技大会」


魔法学校にもかかわらず、球技大会は魔法の使用は禁止。

魔法使いたるもの、体力が資本であるという学校の方針だ。

魔法技術だけでなく、俊敏性、瞬発力、筋力、体力などが結局のところ大切であるからだ。

確かに、魔法で一時的にスキルを上げることはできるが、それを持続することはできない。

結局のところ、身体の資本の基礎を底上げしなくてはいけないのだ。


種目はバスケットボール、バレーボール、サッカー。

7才から12才までの基礎教育時代にプレーするスポーツだ。

クラスのメンバーが3種に分かれて、クラス対抗の試合となる。


バレンシャン王国からの留学生たちは、球技大会で素顔を見せることになっている。

さすがに、動物の骨の仮面をつけてスポーツをするのは危険すぎるからだ。

そろそろ一年経っているし、次はこちらの文化に適応するタイミングなのでは?とも思う。

これまでずっと仮面をつけ続けていることが、そもそもあり得ないと思う。


女子生徒の中では密かに楽しみの一つになっている。

あの仮面の下の素顔を見られるのだから。

ずっと見たかった留学生たちの顔面が露わになるのだ、興奮してしまう気持ちはとてもよくわかる。

だって、みんなこの国では珍しい黒髪で、ガタイが良くて、身長が高い人ばかりなのだから。


でも、わたしはハオの顔を知っている。

アメジストの美しい瞳。

整った顔立ち。


ハオはかっこいいってみんなに伝えたい。

でも、誰もハオの素顔を見ないでほしいとも思う。

ハオのかっこよさは、わたしだけ知ってるのがいい。

こんなのわがままだってわかってる。

でも、二つの感情が私の中で渦巻く。


ハオはバスケに出るらしかった。

学年別、クラス別だから、もちろん、この球技大会は上級生が有利だ。

ハオは4年生だから、5,6年生とも対等に戦えるはず。

普段魔法を使うところしか見る機会がないから、魔法なしの能力が観れるまたとない機会。

女子生徒の興奮がわたしにも伝わってくる。


わたしもバスケに出るから、ハオの試合が観れる!ラッキーと思った。

わたしは、バスケがとっても得意というわけではない。

バスケのクラブチームに入っていた子たちはうまいけど、わたしは学校で習った程度。

スポーツをするのは好きだから、苦手なわけではないけど。


わたしはハオのバスケが観られればいい。

わたしは運動できますアピールなんてしなくていい。

そんな感じで軽く考えていた。


ハオのバスケの試合が始まった。

魔法なしだから、個人の才能がそのまま現れるのだけど、ハオってば、ここでもかっこよすぎ!!!

スピードが速いし、球さばきもすごい、敵チームを切り裂くようなプレイで、シュートもどんどん決めちゃう。


周りで見ている観客も盛り上がる。

特に女子生徒たちから黄色い声援がとんでいる。

私もあの中に入って叫んでこようかしら。


それにしても……

ちょっと、ハオ!

運動神経もいいなんて聞いてないんですけど…!


「ハオー!ナイスー!」


もう、抑えられなくて、わたし一人で叫んでました。


仮面なしで女子生徒の心を奪い、プレーでくぎ付けにし…

バレンシャン王国の人たちって、みんな運動神経バツグンなのかな?

まあ、ハオが誰よりも輝いているけどね。


さあ、次はわたしの番。

女子のバスケの試合が始まると、やっぱりダメだった。

始まる前は気軽に考えていたのに、やっぱり全力で試合をしちゃう。

バスケは身体的接触があるから、女の子同士でもけっこうぶつかって倒れたりしていた。

チームの女の子が他チームの子とぶつかって倒れてしまった。


大丈夫かな…?と思いながら試合の再開を待っていると、後ろから強烈な膝カックンにあった。

わたしは体勢をくずし、床に崩れ落ちた。

みると、ホッケーのラケットが近くに転がっているし、膝裏に強烈な痛みを感じ始めた。

何がどうなっているのかわからないでいると、近くで見ていた男子やチームメイトが駆け寄ってきた。


「ネネルーナ、大丈夫?」


「ネネルーナ王女、怪我はないですか?」


みんなが心配してくれる中、なじみの声が聞こえた。


「ネネルーナ、大丈夫か?」


そういって屈んで、私の肩に手を置いたのはレオハルド王子だった。


「何が起きたのかわからないですが、とりあえず痛いです。」


「ここは、コートの中だ。いったんコートの外へ移動しよう。」


そういって運ぼうとする王子に、


「王子の手を煩わせるわけにはいきませんので。」


と、王子の後ろに立っていたハオが私をお姫様抱っこした。


急な展開に驚いたけど、足が痛くて立てなかったから、すごく助かった。

しかも、ハオに抱きつけるまたとないチャンス!

そう思ったわたしはハオの首に手をまわして思いっきり抱きついた。


「ネネルーナ、痛い」


めんどくさそうに言うハオのことは無視する。

いいじゃんちょっとくらい。

その代わり、お礼を言っておこう。


「ハオ、ありがとう」


そういってハオを見るけど、ハオの顔は全然赤くなってない…

少しくらいドキドキしてくれたら良かったのに。


治癒の先生がいるところに運んでくれた。

ベットにわたしを優しく座らせると、何が起きたのかを説明してくれた。


わたしが試合中の接触で倒れていた子たちを見ていた時、隣のコートのボールが飛んできたらしい。

そのボールはホッケーのラケットが置いてあるところに勢いよく飛んでいき、一本のラケットに命中。

そのラケットが回転しながら飛んでいき、わたしの膝裏に見事に直撃したらしい。


聞いていて、そんなことあるの?と思った。

それ、リアルピタゴラスイッチじゃん。


強烈な膝カックンをお見舞いされた私の姿は、さぞ滑稽だったことだろう…

自分でその場面を想像して笑いが止まらなくなる。

わたしが一人で笑っていると、


「ネネルーナはほんと、見てて飽きないよな」


とハオがポロっと言った。

え?わたしのこと、見てて飽きないの?

それ、最高の誉め言葉!


「わたしのこと、見てて飽きない?

ほんと?うれしい!」


と喜んでいると、


「いや、ドジって言いたかっただけ」


といって、ハオがふっと笑った。

そういえば、彼がこんなに自然に笑うのを見たのは初めてかもしれない。

仮面がない分、その笑顔はいつもよりずっと柔らかくて、眩しすぎて目がくらみそうだった。

前髪の隙間からのぞく、紫の瞳が細くなり、まるで宝石が瞬いているみたいだ。


恥ずかしそうに腕で口元を隠す仕草も、なんだか愛おしくて、つい見とれてしまう。

仮面の影が消えて、素の彼だけがそこにいる

――そんな瞬間を、わたしはひとりじめしたいと思った。


今のこのシーンを切り取りたいと思った。

いつでも私の中で思い出せるように。

仮面を外した素顔を見ることのできる今日のハオは、いつも以上に近くに感じられた。


この時間がずっと続けばいいのにって、胸が締め付けられるように思った。

そんな気持ちを抱えながら、わたしはベットから立ち上がり、次の試合に向けてハオとコートへと歩いていった。


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