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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第14章 ~卒業後 アイドル3年目~

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14-9. ハオ視点:禁断の契約、選ばれし継承者

父上はついに——

“意思を持った魔物” を操る禁断魔法へと手を伸ばした。


その魔法の核心は、人間と魔物を融合させるという、おぞましい術式。

人間の心が闇に支配されたとき、魔物の波動と同調し、一体化してしまう——


黒魔法を学んでいた頃、フェル先生に勧められて読んだ

『エテ・コリントスの禁断書』に書かれていたものと、まったく同じだ。

だが当時は「偶然の条件が重なっただけ」とされていた現象。

…父上は、その“条件”を解き明かしてしまった。


そして今、人間を魔物へと変質させる術を再現し、

さらにはその“新たな魔物”と血の契約を結ぼうとしている。


しかも一体ではない。

まずは十体——。


胸の奥で何かが軋んだ。

俺は王族にのみ伝わる古代変身魔法を使い、

小さな虫となって“血の契約の儀式”へ潜入した。



薄暗い広間。

床の中央に、青紫の光がぎらつく巨大な魔方陣。

父上と側近、護衛騎士たちがその周囲を取り囲んでいる。

魔方陣を見つめる父上の眼光は、

……もう人のものではなかった。


「父上は……どこまで行くつもりなのか」


俺が声に出さなかった問いは、胸の奥に沈み続けた。

止められなかった自分への悔しさも、どうしようもなく湧き上がってくる。


——今、俺にできることは何だ?



後日。

父上の書斎へ忍び込み、俺は厳重に保管された契約書に触れながら、自問した。


「…俺はどうしたい?」


何度もこの問いを繰り返してきた。

だが、答えはいつも同じだ。


——大切な人を守るために、恐怖政治を終わらせる。

それが、俺が選んだ道。


父を倒す。

その選択肢は一度も考えなかった。


サーラーンで聞いた“戦ってはダメだ”という言葉が、胸に稲妻のように走ったからだ。

戦えば、次の憎しみを生む。

どれほど悪事を重ねた者であれ、命を奪う道だけは選ばない。


だが、魔物との血の契約を解除するには、

——致死量の血液を失うという代償が必要。

それは魔法でも防げない。

父上に“償わせる”こともできた。

だが、それは俺が望む未来とは違う。


禁断魔法を調べ続けているうちに、一つの可能性にたどり着いた。

『契約は……上書きできる』


ただし、条件はひとつ。

契約者と血縁であること。


つまり——

俺にしかできない。


父上は支配を続けたい。

俺は恐怖政治を終わらせたい。

願う未来はまったく違う。

そして、その選択の責任は俺が取るべきだ。


——俺が禁断契約を上書きし、解除する。

その代償を、俺が支払う。

父にも、弟にも背負わせる気はない。



静かに深呼吸し、俺は魔方陣の中央へ歩み出た。


薄紫の光が、足元からじわりと皮膚を刺す。

まるで俺の覚悟を試すかのようだ。

ここで一滴の血を流した瞬間、

もう後戻りはできない。


「……行くぞ」


息を鋭く吐き、俺は自らの肌に刃を当てた。


小さな傷から、赤い滴が光に落ちた瞬間——

魔方陣が激しく脈打ち始めた。


扉が開く音。

運命の歯車が。



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