14-5. ハオの正体
わたしたちが避難した後は、サーラーン騎士団、バレンシャン騎士団、王子2人が無事に魔物を退治することに成功していた。
お兄様は忙しいみたいで、あれから会えていなかった。
わたしたちは宿へ戻り、心と体を休める。
ライブの日は体力の消耗が激しい。
でも、精神的にも大きい出来事が続いた。
ライブの成功目前で魔物が襲撃したこと、お守りから防御の魔法が発動したこと、ドラゴンに乗ったハオを見かけたこと…
あまりにもいろんなことがあった。
ハオに会いたかったな…
いろんなことが頭を巡っているうちに、いつのまにか深い眠りに落ちていた。
✳︎
「ネネ!ネネ!起きて!」
遠くの方でヒヨナの声がする。
「ん〜眠いよ…」
わたしはまだ寝ていたくて枕に抱きつく。
「ネネ、新聞に大変なことが載ってるの!早く起きて!」
“大変なこと”という言葉がわたしの耳に響き、すぐに飛び起きた。
「大変なことって何?」
「ちょっと、これ見てよ!」
ヒヨナが持っているのは、バレンシャンの新聞だった。
写真から映像が浮き出てくる魔法新聞の表面には衝撃の見出しがついていた。
『アイドルコンサート──漆黒のドラゴン レオハルド王子が民衆を救う』
新聞からはドラゴンに乗ったハオが飛び出していた。
頭が真っ白になる。
「レオハルド王子」「漆黒のドラゴン」――この並びに、なぜか胸がざわつく。
わたしは記事に目を走らせた。
-----
昨日、バレンシャン国立競技場で行われたサーラーン王国の人気アイドルグループLUMINAの公演中、魔物が突如出現。観客数万人の中に混乱が広がった。
現場ではサーラーン王国の騎士団が応戦したが、苦戦を強いられるなか、漆黒のドラゴンを駆るレオハルド王子とルーク王子が急行し、会場の空を裂いて出現。
その瞬間、群衆からは驚きと歓声、そして悲鳴が入り混じったという。
また、メインステージに立っていたアイドル・ネネの足元からは王家の紋章が浮かび上がる巨大な防御魔方陣が発動。魔物から民衆を守る決定打となった──
-----
読み進めるほど、頭の中に「?」が積み重なっていく。
レオハルド王子? 漆黒のドラゴン?
アイドル・ネネから発動した防御魔法?
王家の紋章……?
心臓がドクンと鳴る。
昨日、わたしが見たあの光。
あのドラゴン。
ハオは……ドラゴンに乗っていた。
あの子だった。
確かに。
じゃあ……ハオは……
漆黒のドラゴンに乗っていたのはレオハルド王子?
ハオじゃなくて?
あの防御の幕は、王家の紋章が浮かび上がった魔方陣?
ハオはどうしてその魔法がかけられたブレスレットをわたしにくれたんだろう…
頭に血が上っていく。
体がどんどん熱くなる。
わたしの中で、さまざまなピースが一つずつはまっていく気がした。
ハオは自分の聖獣をかたくなに見せなかった。
それは、王家と何か関係があるから…?
そう思うと、すべての辻褄が合う。
ハオは…まさか、そんなはず…でも……
すると、わたしたちが泊っている部屋の外が急に騒がしくなった。
ドアベルが鳴り入口へ向かうと、そこに立っていたのはお兄様だった。
同室のヒヨナに、お兄様が来たことを伝え、ドアを開けてもいいか聞いた後、扉を開けると、お兄様も新聞を片手に持っていた。
「ネネ、これ見たか?」
「はい…」
「ハオの本当の正体は、レオハルド王子だ」
わたしの中にドーンと鐘が鳴り響いたようだった。
頭の中でかすかに思っていたことを、今、お兄様が口にしたことで…
「ハオは本当はレオハルド王子ってことなのね…」
「俺は下へ行ってホテルの人と話をしてきた。すると、バレンシャンでは王族のみ、ドラゴンの聖獣がつくそうだ。あの防御の魔方陣も、誰もが一発で王家の紋章だとわかると言っていた。」
ハオが王子だから、わたしにとって何かが変わるわけではない。
でも、想像以上の展開だった。
そして、心の中に浮かんだのは、ハオが背負ってきたものの重さだった。
ハオはきっと、たくさんのものを背負っている。
バレンシャンが保守派と和平派に分かれていることも、和平派は王子の新政権だということも…
ハオ…
わたしの心は不安でいっぱいになった。
そして、無力だった。
何もできない私が…
あのとき、笑ってくれた彼の笑顔の裏に、こんなにも重いものが隠されていたなんて──




