14-4. 紫の光が意味したもの
ピシッ…ピシッ…!
空気がビリビリと震え、光の壁がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。
――保護結界が、壊された。
ゾクリと背筋が凍る。
「ゴォォォ……ッ!!」
地の底から響くような唸り声が、空気を震わせる。
見上げたその瞬間、巨大な影が観客席の端からヌゥッと現れた。
暗い紫に輝く眼が、まっすぐステージを睨んでいる。
巨大な角、黒い鱗、地を這うような巨体……。
「うそ……」
言葉が喉に詰まる。
夢で見たあの光景と、同じだった――。
魔物は会場の違うところにも発生していて、計3体いた。
観客は逃げまどい、悲鳴が聞こえる。
騎士団の護衛たちはすぐに戦闘態勢に入るが、3体いるため、騎士団も分散せざるを得ない。
こんな巨大な魔物が3体も…
わたしは恐怖で足がすくんでしまう。
ステージ横の魔物がこちらを見ている気がする。
怖い…
誰か助けて…
突然、魔物の口が大きく開いた。
ギィ……ッと音がして、禍々しい魔力が一点に集中していく。
「くる…!」
ドオオオオッ!!!
炎の塊が、真っ直ぐこちらへ向かって飛んできた。
熱風が肌を刺し、ステージの床がバチバチッと焦げる。
メンバーが叫びながら防御魔法を展開する。
「間に合わない…!」
わたしは思わず、目をぎゅっと閉じた。
まるでスローモーションのようだった。
だんだん大きくなる火の玉、必死で防御幕を張るメンバー、
もうダメだ…
炎のかたまりが迫り、ぎゅっと目をつむった瞬間
パーン
まばゆい紫色の光が広がった。
みると、わたしの足のお守りから巨大な防御の壁が出現していた。
あのブレスレットには、防御の魔法が込められていたんだ…
『君に必要だから』とブレスレットを渡してくれたハオの顔が浮かぶ…
ハオがこのお守りを渡してくれたことに泣きそう…
「あれは王族のエンブレムだ!」
「どうしてネネからあの紋章が出るんだ!」
観客から驚く声が届く。
確かに、この防御の壁は普通のものと違う文様をしている。
この防御の壁に守られたんだ’…
良かった。
でも、ここからどうすれば…
そのとき、空が割れたように雷鳴が轟いた。
キィィィィ――――ッ!!!
上空から、光の槍のように降下する二体の影。
黒くしなやかな翼を広げた、漆黒のドラゴンが一閃するように魔物の背を掠める。
「ドラゴン!?…助けに来てくれたの…!?」
漆黒の体にアメジストの瞳がきらめくドラゴン。
そして、その背には――
仮面をつけた騎士。
それが誰なのか一瞬でわかってしまった。
心臓が跳ねた。
ハオ……!
わたしがずっと会いたかった人。
ーハオ、助けに来てくれたんだ…
どんな時も、あなたは助けてくれるんだね…
胸があつくなる。
そして、もう一体のドラゴンは漆黒に緑の目が輝いていた。
緑の瞳…
どこかで見たことあるような…
「王子だ!王子が助けに来てくれたぞ!」
「レオハルド王子だー!」
「ルーク王子も来てくれた!」
悲鳴ばかりだった会場から希望の声も上がり始めた。
どうしてドラゴンに乗ったハオのことを王子と呼んでいるんだろう…
ルークって、ハオの弟くんの名前だよね…
ドラゴンに乗って先にやってきた二人が加わったことで、戦況は大きく変わった。
バレンシャンの騎士団も加わり、連携しながら魔物を退治していく。
ハオが番の連携魔法を発動させている。ということは、騎士団の中のあの人はレオハルド王子だ。
ステージの上から見守っていたが、お兄様が聖獣に乗ってこちらにやってきた。
「ここは危険だ。安全な所へ避難しよう」
わたしたちは誘導されてステージを去る。
わたしは後ろ髪をひかれる思いで従った。
危険なことはわかってる。
でも、大切な人が目の前にいるのに、この場を去ることがとても苦しかった。
どうか、みんなが無事でいますように。
またハオに会えますように…




