14-2. バレンシャン、初ステージ
ついに、私たちのワールドツアーは最終目的地
——バレンシャン王国へとやってきた。
どこかで、もしかしたらハオが来てくれるかもしれない。
そんな小さな期待が、まだ胸の奥で消えないまま灯っている。
サーラーン王国をはじめ、これまで訪れた二つの王国では、どこでも温かい声援が待っていた。
国が違っても、文化が違っても、歌で想いを伝え合えるということを、わたしはこの旅で確信した。
ハオと最後に会ってから、もう二年半が経っている。
アイドル活動と学業を両立した一年。
そして卒業後は、アイドルとしての活動に全力で取り組んできた。
毎日が慌ただしく、彼のことを考える時間は以前より減ったかもしれない。
でも、ふとした瞬間に浮かんでしまう。
ステージの眩しいライトの向こうに、あの紫の静かな瞳が見える気がして——。
もちろん、わたしは今、とても充実している。
素晴らしい仲間と、大切なファンに囲まれて、毎日が幸せでいっぱいだと、胸を張って言える。
今回のバレンシャンでの公演のために、実はお父様が動いてくださっていた。
「ネネルーナの夢は、もう夢じゃないんだな」
そう微笑んだお父様は、現地で協力してくださる方と密に連絡を取り合い、ツアーが実現できるよう尽力してくれていた。
元・王子という立場を越えて、父として、全力でわたしの背中を押してくれていたのだ。
その事実を知ったとき、驚きとともに、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
さらに、騎士団にも協力を要請してくれて、ツアー中は護衛として同行してもらえることになった。
お兄様もその中に含まれている。
お兄様が一緒にいてくれる
——それだけで、どれほど心強いことか。
バレンシャン王国は軍事国家で、ほんの一年前までは国内情勢も不安定だったと聞いている。
今は以前よりは落ち着いているけれど、それでも緊張感は残っている。
そんな国でライブを行うというのは、きっと不安に思う人もいるだろう。
でも、わたしは思う。
だからこそ、そんな国にこそ、わたしたちの歌を届けたい。
歌を通して、ほんの少しでも心が軽くなるように。
前を向くきっかけになるように。
そして、会場にいるみんなと、感動を分かち合いたい。
わたしがいつも歌に込めている想い——
わたしたちのパフォーマンスで、目の前の人の心に火を灯す。
その温もりが、次の人へ、そしてまた次の人へと巡っていくように。
そう信じて、祈って、願って、エネルギーを届けている。
きっと、いつか——その想いは、ハオにも届く。
そんな想いが、さらにわたしの気持ちを奮い立たせた。
ハオの故郷でステージに立てることへの喜び。
彼を育ててくれた国への感謝。
この二日間を、全力で「創造」していこう。
✳︎
初日の公演は、無事に終えることができた。
どの国でもそれぞれに盛り上がり方の違いがあって面白いけれど、バレンシャンの会場は特別だった。
驚くほど観客のエネルギーが高くて——
ただ盛り上がっているというより、わたしたちの歌を「待っていてくれた」「渇望していた」、そんな印象を受けた。
争いの多い国。
だからこそ、音楽が光になることもあると信じたい。
ほんの少しでも、人生が明るく感じられたなら、それだけでわたしたちはここに来た意味がある。
ライブを終えたわたしは、ヒーリングを受けたあと、すぐに深い眠りに落ちた。
——でも、その夜。わたしは怖い夢を見た。
夢の中で現れた魔物の目は、まるで何かを見透かしているようだった。
「見つけた」と言われた気がして——
ぞっとするような冷たい感覚が胸を貫いた、その瞬間、わたしは飛び起きた。
寝汗をかいていた。
たぶん、暑かったせい。
これはただの夢。
そう、自分に言い聞かせて、怖さをなんとかごまかした。
——まさか、そんなことあるはずがない。
デジャヴなんて、今まで一度も見たことないんだから。




