13-6. それぞれの想いが回る場所で
休む暇もなく、次々とアトラクションを制覇していった私たちは、ようやく休憩タイムに入った。
私はイルサと一緒に、お手洗いに向かう。
5つのアトラクションに乗ったから、ペアを組んだのは男子の半分。
次は誰とペアになるんだろう、とぼんやり考えていた時だった。
二人きりになったイルサが、少し照れながら口を開いた。
「わたし、騎士団のキーンさんがドタイプすぎて…」
「そうなの!いいね!イルサはキーンさんが気になるんだね」
「話をふってくれたり、目を見て話しを聞いてくれたり、もう好きになっちゃうよ」
「うんうん。ドタイプな人がそうだと、好きになっちゃうよね!」
私たちはキャッキャと恋バナで盛り上がりながら、お手洗いから戻った。
イルサの話を聞いたからには、全力で応援したい。
そんな気持ちがふくらむ。
お昼ごはんは20人では大人数すぎるため、10人ずつテーブルをくっつけて座ることに。
イルサがキーンさんと別のグループになりそうだったので、私はさりげなく彼女と席を代わった。
(はぁ〜、恋を応援するのって楽しい!)
内心でニヤニヤしながら、ご飯を食べ終えた。
次に乗るアトラクションは、食後を考慮して優しめのもの。
「メリーゴーランド」と呼ばれる、可愛い馬に乗ってくるくる回る乗り物だ。
私のペアは、なんとキーンさん。イルサが気になってる人だ…!
キーンさんはダンディーで、アイドル事務所ではなかなか見ないような大人の魅力があるタイプだった。
イルサが好みそう…そう思っていたら、話題は思わぬ方向へ。
「一度、訓練中に魔法が当たってアドリアンのズボンが消えて、下着だけになったことがあってさ。でも、アドリアンは全く動じることなく対処したんだよ」
「俺は、あの姿を見た時、こいつは絶対、騎士団団長になるって確信したよ」
そんな話をしてくれた。
想像してしまって、私は笑いのツボに完全に入ってしまった。
私の笑いにつられて、キーンさんも笑い出して、待ち時間はあっという間に過ぎていった。
でも――私は気づいていなかった。
イルサが、少し悲しそうな表情をしていたことに。
*
次のペアは、お兄様だった。10人全員と組むので、いつかは来ると思っていたけれど…。
「お兄様、遊園地楽しんでますか?」
「ああ。こんなにはしゃいだ気持ちになったのは久しぶりだ」
太陽に照らされたお兄様が、髪をかき上げる。
赤い瞳が細められても、その輝きは変わらない。
お兄様って、こういう自然な仕草をするから、モテるんだろうな……。
妹としては複雑だけど、お兄様のかっこよさは私が一番よく知っている。
妹溺愛系じゃなければ、もっとモテすぎて大変なことになってたと思う。
「そういえば、今日の髪型、似合ってるな。ピンク髪のネネも新鮮でいいな」
「ありがとう。お兄様の今日の私服も、爽やかで素敵ですね」
「ネネに褒めてもらえると嬉しいよ。ありがとう」
ふとお兄様が目を落とし、
「お守り、今日も付けてるんだな」
と、私の靴についているお守りに気づいた。
「毎日つけてるよ」
私はそう言って、遠くを見つめた。
ずっとずっとその先にあるバレンシャンに想いを馳せながら。
「ネネはモテるけど、とっても一途だよな」
「ん?モテる?そうかな…わかんない」
「あいつはネネから離れて、さぞ不安だろうな。俺は、あいつを“紳士な男”として認定したから…応援したいとは…思っているんだが…」
お兄様の言葉に驚いた。
お兄様が、私とハオの恋を応援してくれてるの…?
ふと、クスッと笑ってしまった。
あの“紳士認定”の場面を思い出して――
お兄様の気持ちが、嬉しくて。
私の心は、ふわっと温かくなった。
「お兄様、ありがとう。今日、遊園地にお兄様と来ることに正直戸惑ったけど…でも、一緒に来られてよかったよ」
私の言葉に、お兄様は一瞬動きを止めて、
「ネネは本当に可愛いな」
と、そっと頭を撫でてくれた。
「アドリアンは相変わらず溺愛だな〜」
と、騎士団のメンバーにからかわれていたけれど、私もお兄様も、顔を見合わせて笑った。




