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彼女が祟りに堕ちた日から、俺は祓師になった  作者: なぽりまん
人生の終わりと祓師のはじまり
14/21

緊急事態

 

「あ、そうそう。あと一人、まだ紹介してなかったね。名前は蘆屋 樒(あしや しきみ)──」


 その名が口にされた瞬間、ミヒロくんの肩がびくりと跳ね、カタカタと小刻みに震え始めた。



「や、やめろ……あいつの名前を出すな……」


 じわじわと青ざめていくミヒロくん。

 その瞳には恐怖と怯えが滲んでいる。



「え、そんなに怖い人なんですか?」


「ヒロくん、完全に研究対象としてロックオンされちゃってるもんね〜」


 トワさんは怯えきったミヒロくんの肩をバシバシと叩き、哀れみつつも面白がっているようだった。



(研究対象って何!? 解剖でもされるの!?)



「まあ樒は自由人だし、かなりの異端児だからね」


「ははっ!しきみんはね〜突然現れて、意味わかんないこと言って、勝手にどっか行っちゃうんだよね〜。ま、そこが面白いんだけど!」


「ちっとも面白くねぇ……」



 どこか苦笑するように眉を下げる柊華さんにあまりにもポジティブな水無瀬さん。

 どこからも救いの手が及ばないと悟ったミヒロくんは、「ダメだこいつら……」と頭を抱えている。



「あの子……確かに変わってるけど、天才なのは確かなの。ただ、倫理観って言葉は辞書にないけどね」



 見かねた様子の彩葉さんが、カオスな状況をフォローするように俺に話しかけてくれた。



(”倫理観がない異端児”……ヤバい匂いしかしない)


 俺はミヒロくんの怯えように恐れおののきつつも、まだ見ぬ“欠位”の最後のメンバーへと想像を巡らせた。



「……なんかとんでもない人な気がする」


「気がするんじゃなくて、とんでもねぇよ」


 体を震わせながら、ミヒロくんが俺に向かって皮肉るようにぼそりと呟いた。


「いやマジで、見つかる前に逃げとけ」


「ヒロくん、次に会うときはGPSでもつけてもらいなよ〜?」


「……それ、笑いごとじゃねぇからな」



 トワさんが励ますように肩をぽんぽんと叩くと、ミヒロくんはシャーっと威嚇した猫のように殺気を放っている。


 そんなやりとりに、俺はここに来てようやく口元が緩んだ。


 この空気にも少しずつ慣れてきた気がする。

 そう思った、まさにその時だった。


「と、まあ、自己紹介はこれくらいにして──」


 柊華さんが軽やかに手を打ったと同時に、部屋の照明が一瞬、チカっと不自然に揺れた。



「……停電、ですかね?」


 そう俺が発した瞬間──床が、ビキリ、と音を立ててひび割れたように崩れ始めた。



「え! 地震!?」


 壁の向こうから轟音が響く。

 施設全体が軋み、警報がけたたましく鳴り出した。



「災厄反応。区域内、Bランク相当」

「くそっ、よりによって今かよ……!」


 淡々と状況を説明する透さんに対し、すぐに戦闘態勢に入るミヒロくん。


 それぞれのメンバーも瞬時に動き出す中、柊華さんは瞬時に指示を飛ばす。



「全員、封鎖装の顕現準備!透、京弥。晃太郎くんを連れて後方へ──」


「えっ、俺も!?」


 動揺して行き場を失った俺の手は、透さんによって無言で引っ張られる。


 だがその途中──真下の床が崩れた。



「お、おわ!? うわああああ!!」


 体が重力に従うように呑まれていく。

 視界の中心に映る地上は、だんだんと小さくなっていった。


 代わりに視界に入ってきたのは、果てしない闇と黒い瘴気。



「──ッ……うぁ、ぁぁあああ!!!」


 身体の奥底が焼かれるような感覚。

 視界が真っ白に染まる。



(これからって時に……ふざけんなよ……ッ!)


 このまま底まで落ちていくかと思われた。が、ふと感じる抵抗が弱まった。



「落下のスピードが落ちてる……?」


 それどころか、むしろ磁石が反発し合うように上へ、上へと上っていく気さえする。

 重力と反発するような、本来ならありえない下からの力に、俺の理解は追いつかなかった。



「……初期覚醒反応。対象、折笠晃太郎。潜在能力の発現を確認」

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