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彼女が祟りに堕ちた日から、俺は祓師になった  作者: なぽりまん
人生の終わりと祓師のはじまり
12/21

ロボとショタ


「折笠 晃太郎。16歳。区立南ヶ丘高校・普通科3年1組に在籍中。出席率89パーセント。成績は学年平均よりやや下」


「ちょ、え? なに……?」


突然、自分の個人情報が履歴書のように読み上げられていくという状況に、俺の口は縦に開いていった。



目の前に立つのは、銀髪を風でひらりと揺らした美少年。無表情で淡々と、息継ぎも感情も一切ない声で喋り続けている。



「身長174.3センチ。体重61キログラム。右利き。家族構成は父・母・妹の4人。好きな食べ物は焼きそばパンとミネストローネ。嫌いな食べ物はピーマン」


「いやいやいや! ちょ、待って!?誰!? なんでそれ知ってんの!?」


「趣味はホラー映画の視聴。だが一人で観ると夜トイレに行けなくなるため、妹を誘って誤魔化している」


「おい!?」


「好きな異性のタイプは明るくて優しい。が、少し天然な──」


「やめてぇぇぇ!!」



かぁっと顔が熱が集まって、俺の顔はリンゴのように真っ赤になっていることだろう。


そんな俺を見て、首を傾げた少年はぴたりと喋るのを止めた。



「データ通りのはずですが?」


「うっ……その通りだから恥ずかしいんですッ!」


「なお、深夜帯の動画履歴や過去の検索ワードから、性癖的傾向も──」


「それだけはマジで勘弁して!!」


絶叫するように叫ぶと、目の前の少年は一瞬瞬きすらせず静かに応えた。


「やめて、との要望を確認しましたので、自己紹介に移行します」


「いやちょっと! その前に説明して!? なんでそんな恥ずかしい情報まで把握してんの!?」



俺の必死の問いかけも虚しく、銀髪の少年は顔色一つ変えずに、



鞍馬くらま とおる。特別祓師及び異常災厄封鎖処理部隊所属。識別コード・A-11-SK。戦闘及び情報収集処理はお任せください」


この難解で小難しそうな文章を一息で澱みなく言い切るのはもはや才能だと思う。



「透は……感情を失ってるからいつもこんな感じなんだよね」


「悪気はないんだ〜」と柊華さんは困ったように笑うが、それよりも自分の個人情報がなぜ漏れているのかの方が気になってしょうがない。



「あなたは支援対象に指定されています。以後、よろしくお願いします」


その表情は変わらず、まるで“ロボット”のようでまったく人間味を感じられなかった。



(怖すぎる……情報源どこだよ!?)



「……ギャーギャーうるさいんだけど」


すると、奥の扉からベレー帽を被った小さな男の子がひょこり。寝起きなのか、ぽわぽわとした様子で寝ぼけまなこを擦っている。



(か、かわいいぃぃ!)


癒されるな〜、なんて呑気なことを考えると同時に、こんなにも小さい子を起こしてしまって申し訳ないなという罪悪感が溢れてくる。



「あ、ごめんね! 起こしちゃったかな?」


しかしその少年は、じっと無表情に俺を睨んでいる。少なくとも、好印象を持たれていないということは確実である。



(なんか……想像してた反応と違うな)



「誰、このちんちくりん」


「ち、ちん……ちく……っ!?」


一瞬、何を言われたのか理解できず、俺の思考はフリーズ。愛らしい顔から空気のように毒を吐く少年に、思わず頬はひくついた。



「……ボク?お兄さんそんなこと言われると悲しいな〜?」



(落ち着け。子供相手だ。優しく。優しく──)



「は?ボク、お前より長く生きてるんだけど」


「……え?」


何を言っているんだこの子は。



「ガキ扱いすんな、失礼だぞ」


「あ、ご、ごめんね……?」



(……いや、見た目はどう見ても小学生だろ!?)


戸惑う俺の横に、すっと柊華さんが歩み寄ってくる。



「ごめんねミヒロ。寝起きで機嫌悪かったのかな?」


優しく諭すような声。けれどその目の奥は笑っていない。



「……別に。ギャーギャーうるさかっただけ」



そっぽを向くミヒロくん。

柊華さんは変わらぬ笑顔のまま、俺に向き直った。



「ミヒロは“成長”を差し出してるからね。だから、見た目はずっとあのままなんだよ」



「ピーターパンみたいなこと、ですか?」


俺が思わずミヒロくんを二度見すると、



「ジロジロ見んな」


「あ……ごめん」


やはり、見た目と態度のギャップに、脳が追いつかない。



「実年齢は……んー、私たちよりちょっと上でしたっけ?」


彩葉さんが首をかしげて柊華さんに話を振ると、ミヒロくんがすかさず口を挟んだ。



「ま、ボクから見たら全員オッサンとオバサンだけど」


「……あっはは、ミヒロくんなかなか毒舌だね……?」


「事実だし」


「……ミヒロ?」



柊華さんが微笑みを貼り付けたまま、スッ……とその目だけで“圧”をかける。その笑みは優しいのに、逃げ場がない。


空気が一瞬で凍りついたのを肌で感じた。


ミヒロくんの眉がぴくりと動く。睨むようにそっぽを向いていた顔が少しだけこちらを見たかと思うと、唇をきゅっと結び、ぷるぷると肩を震わせた。



「……っ、う……わ、わかってるし……」


じわじわと目元が赤く染まり、瞳がうるんでいく。

言葉とは裏腹に、今にも泣き出しそうな顔だ。


「仲良くしてあげてね、ミヒロ。“お兄さん”なんだから、ね?」


その言葉に、ミヒロくんは耐えかねたように目を伏せ、小さく、



「……莇原(あざはら) ミヒロ」


「よくできました〜♡」



満面の笑みを浮かべながら、ミヒロくんの頭をわしゃわしゃと撫でる柊華さん。



(……この人が一番恐ろしいんじゃないか?)


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