2話 新学期の憂鬱
少し遊んで家に帰り、スマホを見るとさっきのカラオケ店からの採用メールが来ていた。
採用されたのは嬉しいのだが、これから働くと思うと素直に喜べない。
初勤務日については新学期が始まった時にしよう。
バイト開始日まで思いっきり遊ぶことを胸に、買ってきたコンビニ弁当を食べその日を終えた。
「4月6日ついにきてしまった。新学期が」
いつまでも休みたいという淡い期待とは逆に時間は残酷なもので新学期が来てしまった。
気づけばもう高校2年生。
貴重な若さが数字で表され消えてゆく、なんと酷いものか。
若さを失って悲しめるほどの青春はしてないが…
学校に着くと新しいクラス割りが下駄箱前に張り出されていた。
俺は自分のだけ確認して教室に向かった。
教室に着くと黒板に貼られた席を確認し自分の席に着くと、机に顔を向け腕を組みそのまま俯した。
そろそろ朝のHRの時間が来そうなので、顔を上げイヤホンを外し、なるべく周りの音を聞かずに黒板の上の時計を眺めた。
一限目はクラス全員の自己紹介から始まった。
「もと1年C組、境 政人です。これから2年間同じクラスとして仲良くしてもらえるとありがたいです。趣味は音楽とゲームです。よろしくお願いします」
特に粗もなければ特徴もない普通の挨拶を済まし席に座った。
そのまま進み女子の紹介になった。
「桜月 美心です、珍しい苗字なのでミコとかサクラって呼んでください。これから2年間みんなと楽しいことを沢山できたらいいなと思います!
えっーと、趣味はカラオケに行くことです。こらからよろしくお願いします」
(今紹介していた子どこかで…
あー、確かバイト先でいたような気がするが、間違っても嫌なのでバイト先で会ったらネーム確認して挨拶するか)
おそらく間違いがないのだが、本人の前に行く勇気も気力もまた合わせていない俺は、1時限目が終わっても机に突っ伏している。