1話 嘘つくことは悪くはない
「信じさせてあげられなくてごめんね」
母の声はひどく震えていた。
「でもこれだけは言わせて、この世で一番愛してる」
そう言い強く抱きしめはなすことはなく、俺はいつの間にかに眠っていた。
これが最後にあった母との記憶だった。
物心つく前から人の嘘がわかってしまう。
それは天からの贈り物なのか、はたまた呪いなのか。
一人の人間には重すぎる代物だ。
こんなもの・・
ピピピピッ!
トラウマじみた音で最悪な朝を迎える。
「なんで休日なのにこんなに早く起こされなきゃいけないんだよ」
軽い愚痴を言いながら寝ぼけた頭のまま顔を洗い、朝食を作りながら思い出す。
「あっそうだ、今日バイトの面接だ」
一人暮らしさせてもらっている身、自堕落な生活をしてるのも世間的にどうかと思いバイトの面接に申し込んだ。
別に金銭には困っていないが、親の金で趣味のものに使うのがなんか嫌だし、親にばっかり頼りたくない。
「働きたくねぇ、が致し方なし」
そう言い聞かせて、イヤホンを耳につけ最寄りのカラオケ店に向かった。
「早く着きすぎてしまった」
まだあと面接時間まで20分近く時間がある近くのゲーセンで時間をつぶしてもいいが、数十分でやることもないだろう。
ポケットからスマホを取り出し、溜まってる通知を消化した。ほとんどは公式メールかグループ通知だ。
「よしそろそろ行くか」
重い足取りを気合いで動かしカラオケ店に入った。
「すいません今日面接に来たものなんですけど」
入ってすぐ目についた女性定員に聞いた。
「あっ、今日面接の境君だよね、奥の扉が事務所だからそこに行って面接してきて。頑張って!」
励ましをもらってしまった。
「お仕事中失礼しました。ありがとうございます」
どこかで見た顔だが今はとりあえず面接に集中しよう。
「ふぅ〜」
一息ついてドアをノックした
コンコン
「どうぞー」
「失礼します」
入ると30代後半の男性が座っていた。
「今日面接に来た境です。よろしくお願いします」
面接の定型分を言った。
「私はこの店の店長の奥倉です。まぁ座って」
いたって普通の面接が続いた。
「今日はありがとうございます。合否についてはメールにてお伝えします」
「失礼します」
面接が終わり緊張感とやり切った安堵感で気分は高揚していた。
「ゲーセンでも寄ってくか」
面接が終わった後なら何にも縛られないしやりたい放題だ。俺は早足でゲームセンターへ向かった。
ゲームをやろうと1000円札を両替していると隣のプリクラの機械から声が聞こえてきた
「この粒々のエフェクト可愛くない?」
「そうだねー」
明らかにそう思ってない相槌が返ってきていた
ズキッ
耳の奥が痛む比喩的なものではなく実際に痛みを感じる。
「くそ、イヤホンつけ忘れてた」
いつもならすぐつけるイヤホンを開放感のせいかつけ忘れていた。
なぜか俺は人が嘘をついているかわかる体質なのだ。
嘘を聞くと耳の奥が痛む。大した痛みではないがそれでも不快なものは不快だ。
晴れやかな気分はなくなりながらも俺は筐体にイヤホンを刺してゲームに勤しんだ。