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炎は氷を解かすけど、水は炎を消しますよ


6・雪女の困りごと


   ラータは、そりに乗る前から浮かれ切っていた。


   サンタクロースが、大きな赤いそりを物置から引っ張り出すと、真っ白いしっぽの先が、ぴくっと動いた。


   興奮し過ぎて白猫に戻っていたが、当の本人は気付いていなかった。


   サンタクロースが、トナカイたちを一頭一頭そりに繋いでいく様子を食い入るように見つめて、しっぽを左右にパタパタさせた。


   赤ちゃんアマガエルたちは、タタンの肩に乗って、準備が整うのを静かに見守っていた。

   

   「さあ、これで良し!」 


   サンタクロースは、満足げに頷くと、ラータたちが乗り込むのを待った。


   ラータは、美少女に化け直して、タタンの後ろに大人しく座った。


   赤ちゃんアマガエルたちが、ラータの隣に並んで座ると、サンタクロースは、トナカイの名前を一頭ずつ呼んだ。


   「キューピー、バッデン、ロッチ、コッテ、テリサ、ゴーナン、フォーテ、ココット。さあ、急げ!風より早く、急いで走れ!さあ、飛び上がれ!」


   そりは、サンタクロースの号令で舞い上がると、流れ星より速く走った。

   冷たい風が、ビュービュー吹いて、タタンは思わず身震いした。 

   

   タタンは、ラータがはしゃいで落ちはしないか心配した。

   しかし、今回は全く心配いらなかった。


  「き、きもちわるい……」


   ラータが、乗り物酔いを起こしたからだ。

   再び白猫に戻ってしまった。顔面蒼白になって、目をつぶっている。


   赤ちゃんアマガエルたちは、気の毒そうに見つめて、時折ゲコッと鳴いた。


   (かわいそうだが、これで安全だ)


   タタンは安心して手綱を引いた。

   引いたというより持ったと言う方が正しい。

   トナカイたちが、元気よくそりを引っ張ってくれたのだ。


   雪山の頂上に辿り着いた時、いの一番に喜んだのは、ラータだった。

   ラータは、タタンに支えて貰って、何とかそりを降りた。

   その時、ぼそりと言った。


  「雪女さんの家に、酔い止めがあったらいいなぁ……」


   そりから降りて、ラータは、ようやく喋れるようになった。


   しかし、化ける気力は戻らなかったので、四本の足で身軽に歩いた。

   やはり、本来の姿が一番動きやすい。


   降り積もった雪の上に、小さなかわいい足跡が、三メートルほど続いた。


   「あっ!!雪女さん!!」


   ラータが声を上げると、白い着物を着た、長い黒髪の女性が、くるりと振り向いた。


   「私に、何か御用?」


    低く優しい声音だった。

    けれど、青く澄んだ美しい瞳は、今にも泣き出しそうに見えた。


   表情も悲し気で、プリンを貰いに来たと言うのが、ためらわれた。


   一人と一匹、それと肩の上の七匹は、枯れ木の下にぽつんと立つ雪女と向き合ったまま動けなくなった。しかし、タタンが、思い切って口火を切った。


「僕たち、サンタクロースに頼まれて、雪のプリンを受け取りに来たんです」


  これを聞くと、雪女の青白い顔が、みるみるうちに赤く染まった。


「まあ、どうしましょう!私は、なんて情けない雪女でしょう!お客様に取りに来させるだなんて!ああ、どうしましょう!プリンはまだ出来ていないの」


  「出来ていない!?」


   タタンもラータも、赤ちゃんアマガエルたちも、みんな呆気に取られて、雪女を凝視した。


 「雪の月花げっかが摘めなくて、雪のプリンが作れないの。その花はね、ちょうど鈴蘭に似ているの。白い芽が出たら、雪を糧に月の光を浴びて咲く美しい花なの。それでプリンを作るのよ。でもね……」


  雪女が苦し気に顔を歪めた。


 「三か月前から、大きな大きな炎ネズミが花畑に住み着いて、私に花を摘ませてくれないの。私が、吹雪を起こしてすごんでも、瞬く間に、炎に呑み込まれて、氷の矢を放っても溶かされてしまうの。ああ、どうしましょう!子供たちが、毎年楽しみにしてくれているのに!!」


  雪女は、両手で顔を覆って、しくしく泣き出した。


  タタンは困って眉を寄せたが、ラータは、すっかり元気になった。


 「丸焼きにして食べましょう!でも、熱すぎても困るから、焼き終えたら、水で消しましょう!炎は氷を解かすけど、水は炎を消しますよ」


  「あんな巨大な炎ネズミを消す水なんて、うちにはないの」


   雪女が、悲痛な面持ちで絶望的な声を上げたが、ラータは、つぶらな瞳に闘志を燃やして言った。


 「水なら、ありますよ。ここにたっくさん!雪は解けたら、水になります!」


  いたずらを思い付いた子猫のように、にんまり笑って両手を広げた。


「溶かして貰いましょう、この雪を!」


赤ちゃんアマガエルたちは、不安気にゲコッと鳴いて、タタンは首をすくめた。


「お願いだから、溺れないでね」



  


  


  次は、四月一日に投稿する予定です。


  6話も、炎ネズミが登場していないのですが……。


  今日から遂にMLBが始まりました。

大谷選手がホームランを打った記念の良いスタートなので、前作の胸キュン・ホームランの続き、新連載を始める事にしました。


  でも、先に仕上げるのは、白猫ラータです。

  ラストは決まっているので、あと2話くらいで完結させようと思っています。


  雪女と仲良く雪のプリンを作るシーンなど色々、今回は省いて、【イーリス探偵事務所ストーリー2】に入れようと考えています。

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