ダメと言っても、君は聞かないだろう?
大事な設定を書き忘れている事に、五話目で気が付きました。
サンタの国では、時刻が、クリスマスイブの午後、まだ日さえ暮れていません。
しかも、トナカイ八頭です。七頭にしていたので、修正しました。
5話
ラータは、外に出て驚いた。
驚いた理由は、トナカイの立派な角に、ではない。
もちろん角は、素晴らしく、かっこよかったが。
「ラータ!無事だったんだね!」
タタンと赤ちゃんアマガエルくんたちが、八頭のトナカイたちと一緒にいたからだ。
ラータは、ぱっと赤毛の美少女に戻ると、喜び勇んで駆け寄った。
「皆も無事ね?」
「もちろんだよ」
タタンが頷くと、赤ちゃんアマガエルたちも、ゲコゲコゲコッと嬉しそうに鳴いた。
「さあ、事務所に戻ろう。サンタには会えたよね?もう見張りは御仕舞いだよ」
タタンは、ラータの無事を心から喜ぶと帰宅を促した。
しかし、ラータは、少し気まずそうに言った。
「実は、サンタさんにお願いして、村まで来て貰う事になったんです。帰るのは、明日でもいいですか?」
「何だって!?」
タタンは、びっくりして口を開けたり閉じたり、数回繰り返した。
そして、やっと声を取り戻した。
「サンタクロースと一緒に帰るっていうの?」
「あの、いけませんか?子猫たちにも会わせてあげたいんです」
ラータが、上目遣いにチラチラ見ると、タタンは大きく溜息を吐いて、肩をすくめた。
「ダメと言っても、君は聞かないだろう?」
「……はい」
蚊の鳴くような声で、申し訳なさそうに首をすくめた。
「……これも何かの縁だ。最後まで付き合うよ」
赤ちゃんアマガエルたちも、ゲコッゲコッと賛同した。
「ありがとうございます!!」
愛くるしい顔がぱあっと輝いたのを見て、タタンと赤ちゃんアマガエルたちは、顔を見合わせてにっこり笑った。
その様子を温かな目で見守っていたサンタクロースは、突然、慌てた声を上げた。
「これは、したり!!袋の穴を縫うのが、まだ終わっとらん。大急ぎで縫わな、夜までに間に合わん」
「私も、お手伝いします」
ラータが申し出ると、サンタクロースは、申し訳なさそうに言った。
「気持ちは嬉しいがのぅ。プレゼントの袋は、わしにしか縫えんのじゃ」
そう言って肩を落としたが、ふいに思い付いたかのように言った。
「そうじゃ!雪女の所へ、雪のプリンを貰いに行ってくれんかのぅ」
「ええっつ!?雪女がいるんですか!?」
ラータだけではなく、タタンと赤ちゃんアマガエルたちも仰天した。
「そうじゃよ。毎年、親切に届けてくれるんじゃが……今年は、どうしたわけか、まだ届いとらんのじゃ。わしのかわりに、受け取りに行ってくれんかのぅ。トナカイたちを走らそう。そりに乗っていきなさい」
そりに乗れると聞いて瞳を輝かせ、うっとりしているラータと違い、タタンは険しい目付きで言った。
「そりに乗らないと、今日中に戻れない場所ですか?」
サンタクロースは、朗らかに笑って答えた。
「ほっほっほっ。遠いと言えば、遠いのぅ。行き先は山の頂上じゃが、そりを走らせば、十分も掛からん距離じゃ。しかし、無理には頼まんよ」
タタンが断ろうと口を開いた時、
「私、行きます!!」
ラータが元気よく返事をしたので、赤ちゃんアマガエルたちは悲し気にゲコッと鳴いた。
すっかり春なので忙しくて更新が遅くなっています。
雪女のシーンも次回にしました。