異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~
異世界美少女エリス<イコライザーの魔法>
山田一郎は平凡な男だった。人生に特筆すべき出来事はなく、ありふれた日々を送っていたが、それを特に不満にも思わずに生きていた。
ある日、仕事帰りに寄った公園で、彼は奇妙な女性と出会った。
彼女の名はエリス。まるで絵画から抜け出したかのような美貌を持つその女性は、異世界から来たと名乗った。
「あなたの人生、少しだけ変えてみない?」
彼女はそう言うと、小さな銀色の球体を差し出した。それはピンポン玉ほどの大きさで、光を反射してきらきらと輝いていた。
「この“イコライザーの魔法”を授けるわ。簡単に言うと、世の中のバランスを調整する力よ。ただし、何を選んでも、それと釣り合う代償が必ずあるから気をつけてね」
そう言い残し、彼女は微笑みながら姿を消した。
「イコライザーの魔法」とは何か。
一郎がその力を試したのは、何気なく財布を開いた時だった。中身は予想通りすっからかんだ。給料日前で、飲み会の支払いが重なったせいだ。
「これで少し増えたりしないかな……?」
冗談半分で球体に向かってつぶやいた。すると、球体が淡い光を放ち、一瞬で一郎の財布は数万円で膨らんだ。
「おお、これが魔法か!」
だが、彼はすぐに違和感を覚えた。自分のポケットからは、さっきまで履いていた靴の片方が消えていたのだ。
この魔法の仕組みは簡単だった。何かを得れば、何かを失う。手に入るものと失うものは釣り合っている――それがイコライザーの原理だった。
一郎は、はじめはこの魔法を慎重に使っていた。失っても惜しくないものを選んで、それと引き換えに日常を少し便利にする程度だった。
例えば、家の使い古したフライパンを失って、急に頭痛が治る。古いスマホケースを差し出して、明日の天気が晴れるようになる。そんな使い方だ。
しかし、次第に一郎はこの魔法に依存するようになった。
きっかけは、会社での大失態だった。重要な会議で資料を忘れ、上司から怒鳴られた帰り道、一郎はとうとう堪えきれず、魔法に助けを求めた。
「どうにかこの状況を挽回できないか……」
球体が輝き、一郎の脳裏に鮮明な記憶がよみがえる。消えたと思っていた資料の内容が、一字一句そのまま浮かび上がったのだ。
翌日のプレゼンテーションは大成功に終わり、一郎は表彰されるほどの評価を受けた。
だが、その晩、ふとポケットを探ると、彼の家の鍵が消えていた。鍵がなくなったせいで自宅に入れず、深夜まで寒空の下で待ちぼうけを食う羽目になった。
それでも、一郎は魔法の力を手放すことができなかった。
やがて、彼の使い方は復讐へと向かっていった。
彼を見下し、蔑ろにしていた元婚約者のSNSアカウントが炎上するよう仕向け、彼のアイデアを盗んで上司に媚びていた同僚が、重要なプロジェクトから外されるように画策した。もちろん、魔法の代償もその都度支払った――大切だった時計が消えたり、趣味のギターが突然弦を失ったり。しかし、それらを惜しいと思う気持ちは薄れていった。
「ざまぁみろ……!」
一郎の胸には、そんな暗い快感が広がるばかりだった。
やがて、一郎は魔法に代償があることすら忘れるようになった。そして、ある日、決定的な事態を招く。
重要な商談の場で、ライバル会社の提案を潰すために魔法を使ったのだ。結果、ライバル会社は契約を失い、一郎の会社が大成功を収めた。
だが、その直後、一郎の視界がぼやけ始めた。
最初は気のせいだと思った。しかし、翌日になっても改善せず、むしろ悪化していった。医者に診てもらったところ、なんと彼の視力が徐々に失われているという。
「そんな……どうして……?」
泣き叫ぶ一郎の前に、久しぶりにエリスが現れた。
「言ったでしょ? 何かを得れば、何かを失う。それがこの魔法のルールよ」
「返してくれ!俺の目を……!」
一郎は球体をエリスに突き返そうとしたが、彼女は首を振った。
「それはもう無理。あなたが欲をかきすぎた結果よ。でも、最後のチャンスをあげる」
エリスは手を差し出した。
「この魔法を使って、何かと引き換えに視力を取り戻すことはできるわ。ただし、その代償はあなた自身で選ぶの」
一郎は震えた手で球体を握りしめ、そして――最期の「イコライザー」を使った。
数日後、一郎は駅のホームで物売りをしていた。盲目のままだが、穏やかな表情で、周囲に愛想よく接している。
彼が失ったものは、「成功を追い求める欲望」そのものだったのだ。