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からっぽ  作者: てりやき
人間
9/95

八日目

 今日も相変わらず、二人で話していた。

 話の内容は…………もはや覚えてすらいない。確か、税金がどうとか、総理大臣のハゲがどうとか、そんな感じだった気がする。

 人間(それら)を観察していて、気づいたことが(いく)つかあった。

 まず、二人のうち少なくとも桜は、何かを取り繕って話をしていることがあるということ。

 例えば、桜はゆうかからよく、

「桜はどうする?」

と聞かれることがあった。もちろん、将来についての真面目な話とかじゃなくて、「総理大臣になったら」とか、「警察官だったら」とか、そういう現実味を帯びていない「もしも」の話だった。

 桜は、その(たぐい)の質問をされる(たび)に、真面目な顔になって考え始めた。そして、喜怒哀楽をコロコロ顔に出しながら、最終的に悲しそうな顔で、

「わかんない」

と答えるのだ。

 ゆうかは、それまでおちゃらけた感じでニコニコしながら話していたが、わかんないと悲しげに言われてからは、どんな表情をしていいか分からなくなっているような反応を示していた。

 それから、シーンと静まり返らないように、ゆうかがたどたどしく話を続けるが、その度に俺は、ゆうかも桜に何か思うことがあるのかもしれないなと思うのだ。

 二人の距離感には違和感を感じるざるを得ない。




 次に、ゆうかは見た目と反して、知能が(多分かなり)高いのだということ。

 普通の中学生が使わないような言葉、例えば「杞憂(きゆう)」「(かんが)みる」「恣意的(しいてき)」などを、さも当たり前のように使うのだ。

 そして、桜は当然のように首をかしげて、俺の頭の中も「?」でいっぱいになって、そこでようやく、ゆうかが「あー、〇〇ってこと」と解説を入れるのが、最早テンプレートのようになっていた。

 さらに驚くことになったのは、今日の昼休みのこと。

 ゆうかはおもむろにスマホを取り出し、画面のロックを解除して桜の机に置いた。

 なんかの質問箱だったのだろうか? そこには、こう書いてあった。

「数学はすべての科学における公理や理論の記述言語で哲学や宗教の理論でさえ数学で記述できると聞きました。 その一例をぜひ皆様にご教示して頂きたいのです」

 見ての通り、とても中学生が調べてたどり着けるような内容では無いが、驚くのはまだ早かった。

 ゆうかは、「ここ!」と言って、「ご教示して」のところを指差した。そして、

「『ご教示』じゃなくて、『ご教授』じゃない?」

と言ったのだ。

 なんのことだか、一ミリも理解出来なかった。ゴキョウジュがどんな漢字なのかすら、スマホで調べるまで全く分からなかった。

 その後のゆうかの解説によると、「ご教授」はより専門的なものを教えて時に用いるもので、この質問の場合は数学という専門的な学問について教えてもらおうとしてるから、こっちの方が適切なのだそうだ。

 なぜ、どうやって、この知識を得たのだろうか。未だに不思議に思っていた。

 不良は頭が悪いという先入観のせいで、普通の人より評価が高くなるという話はよくあるが、それを加味しても、ゆうかは異常なほど頭がいいのかもしれない。




 最後にもうひとつ。

 二人は、いよいよ俺の扱いに困っているということ。

 俺は正直、二人と話したいとは到底思えなかった。そもそも俺は人生を豊かにするような有意義な話をしたいのであって、愚痴り合いたい訳では無いのだ。

 にもかかわらず、二人は容赦なく、俺に質問を浴びせてきた。家がどこら辺なのか、通学はチャリか歩きどっちなのか、日頃買い物をするのか、先週末何をした、帰ったらいつも何をしているのか、etc……

 答えるのが面倒くさいので、大抵の質問になるべく素っ気なく答えるようにしている。

 当然その場が盛り下がるので、その度にゆうかが盛り上げようと頑張っていた。まだ二日しか経っていないけど、そろそろ()りて、そして、俺と関わるのは無理だと諦めて欲しい。

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