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からっぽ  作者: てりやき
ゆうか
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九十四日目

 桜が昨日、「あんなにやさしかったゆうかが人殺しなんて!」と言った時、俺は怒りで頭の中が燃えたぎっていた。

 本当は叫び出したかった。

 お前はゆうかの何を知ってるんだ、って。

 普通の人間は、自分の理解できないことは思考放棄する。それがどうしても、俺にはできないことだった。いや、やりたくないことだったのだ。

 桜や結は、一度でも、異常者の本当の気持ちと向き合ったことなど無いのだろう。けど、普通に生きていても何も言われないお前らにはわからない。

 自分の考えが、根っから全て否定される恐怖を。

 自分という人間が、社会にとって不良品であると知った時の絶望感を。

 俺はずっと、日記にその気持ちを意地でも書かなかった。

 結に「犯罪は、バレなくても犯罪」だと言われたときも、本当は書きながら泣いていたけど、日記内ではきょとんとしていた。

 なんでだかわかるか?

 それを書いてしまったら、自分が他の誰にも理解されない存在だと、認めてしまうことになるから。

 現実逃避をしてでも、せめて、せめて自分だけは、自分を鼓舞し続けなければいけないのだ。そうしなければ、自分の存在自体が間違っていることになってしまうから。

 俺やゆうかが人として「生きる」ということは、それほど険しい道なのだ。

 だからそんな簡単に決めつけないでほしかった。

 あんなにやさしかった、って言うけど、その日常的なやさしさは全部演技だったのだ。なんでそれに気づかない! なんで理解できる部分だけが都合よく本物の性格になるんだ!

 桜は知らない。ゆうかのその行動は、本当はやさしくしたいけど、やさしさが何かわからないから、そうするしかなくて不本意でやった演技だということを。

 これが、どれだけつらいかわかるだろうか?

 本当の気持ちとは真反対なことを毎秒のようにやっていって、自分の表用の性格ばかりが自分の「顔」になっていく感覚。言うたびに自分の考えを少しずつ否定していくから、時間が経てば経つほど、本当の自分は間違いだと洗脳されてしまうのだ。

 そりゃ、死にたくもなる。

 だって、本当の自分の顔で他の人と接することはできないんだから。




 でも俺らはこんなこと、人前では絶対に言わない。

 世の中のほとんどは、その思考放棄した普通の人間たちでできてるから。

 言わない。

 言っても理解されないから。理解されるかもしれないけど、リスキーすぎる。

 俺達はもう、これ以上、理解されない苦しみを味わいたくないのだ。

 だから、頑張って適応しよう。

 ゆうかみたいに、普通の人に化ける努力をしよう。




 こうやって、普通の人のふりをしていくうちに、本当の自分などそのうち捨ててしまうのだろうか。

 捨てられるものなのだろうか。

 そうなら、ぜひとも捨てたいところだけど。

 ただ、そうして残った偽物の自分は、果たして自分と呼べるのだろうか?

2月15日現在。無事、書き終えました。

最後の方、自分で書いてて泣きそうになりました。最近涙もろくて……

最終話の投稿は二週間ぐらい先になるのかな?

もう既に別の長編シリーズを書き始めているので、お楽しみに。

おやすみなさい~

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