四十七日目
俺は、日曜日になっても、金曜日に起こったことを思い出していた。
ゆうかは俺が彼女を泣かしたことを知っても、特に何も言わなかった。
そもそも、彼女は俺らの前の席に普通に座っていたが、ユイが声を出して泣いた訳では無かったので、すぐには気づかなかったようだった。そして、五限が終わってから他の人間から話を聞いていたようだったが、放課後になっても、なにかメッセージが飛んでくる気配は無かった。
一方で桜からは、その日の夜、「電話しよう」とメッセージが来た。
なんと返そうか迷って、そのまま返信をせずに風呂に入ると、あがる頃には通話に失敗した履歴が五件ほど残っていた。
俺は急用だと思い、あわてて折り返しの電話をかけると、一秒経たずに彼女は出た。
「もしもし」
「…………」
彼女は始め、何も喋らなかった。
「も、もしもーし。聞こえますか?」
俺は、回線が悪くなっているのだと思って、何度も何度も呼びかけた。
「もしもーし」
「なんでユイを泣かせたの?」
スマホ越しに、ぐすっ、ぐすっ、と鼻をすする音が聞こえてきた。
彼女は、泣いていたのだ。
「なんでユイを泣かせたの?」
俺は、彼女に返す言葉を見つけることができなかった。
我ながら、なさけなく思った。彼女がすすり泣く声を聞いて、俺はようやく、自分が問題を起こしたことに気づいたのだから。
「なんでなの? 私のせい? 私が『変わらないでね』って言ったから?」
彼女はなぜ、自分を責めていたのだろうか。
彼女は何も悪いことをしてないのに。
「ねえ、なんで!? ヒロトくん! 答えてよ!」
そして彼女は、すがるように俺の返答を求めた。
「……わ、悪いのは、ユイの方だ!」
気がつけば、とっさに口走ってしまっていた。
「ゆ、ユイが、俺のことハメたんだ! お互いに質問をし合って、その質問には正直に答えなきゃいけないゲームなのに、あいつは答えなかったんだ!」
決壊した川の水のように、一度溢れ出した言葉は止まることなく、そして次第に、自分自身をも蝕んでいった。
あたかも自分が正義で、ユイが悪であるかのように錯覚してしまったのだ。
「悪いのはあいつだって! あいつが――」
「そんな言葉聞きたくない!」
彼女は、俺の全身を震わせるほど、大声をで叫んだ。
俺はそこで、我に返った。
俺は今、何を言っていたのだろうか? 一瞬、自分が何を言っていたのか分からなくなった。
「あれっ? 俺は――」
「ヒロトくんが、そんな人だと思わなかった」
混乱する頭の中で、唯一、彼女が怒っていることだけが分かった。
「ヒロトくんは、変わって。変わらなきゃいけない」
変わらなきゃいけない?
そんなこと、俺は考えたこともなかった。
「じゃあ、また学校で」
そのまま、彼女は通話を切った。
俺はしばらくの間、放心状態だった。スマホを持つ手の力が抜けて、部屋のベッドの上にスマホが落ちた。




