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からっぽ  作者: てりやき
人間
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四十日目

 火星人のスミスが「人間って、なんです?」と質問するシーンで、質問された男は頭を抱えた。羽のない二足獣。髪の姿をうつしたもの。適者生存の偶然の結果。どれもこれも、男にとっては人間の説明として不十分に思えたのだ。

 なぜなら、火星人(スミス)にとっては人間も他の動物も同じ「動物」で、なぜ「人間」と「その他」に別けられるのかが分からなかったから。

 そのうち男は、考えるうちに、人間にしか無い習性を見つけ出した。

「人間は笑う動物だよ」

 男は、人間のことを、痛めつけて互いを迷惑な存在にすることには、無限の才能を発揮する生き物だと言った。そして、生存と矛盾したその行動が、ユーモアの土台となっているから、人は笑うのだとか。

 するとスミスは、すかさずこう答えた。

「では、わたしは人間ではありません

 わたしは笑いません。笑い声は聞いたことがあるし、あれにはぞっとしました」

 そして、彼は笑おうとしたが、しゃがれた声が出るだけだった。




 俺は、不合格通知を受け取った日の、母親の笑い声を思い出していた。

「アッハッハッハ!」

「ヒャーオモロい! アッハッハッハッハ!」

「ハー、ハー、アッハッハッハ……!」

 母親は、なぜ笑っていたのだろうか。

 俺の不合格を、蔑んでいたのだろうか。

 ……本当に、そうだったのだろうか。

 最近になって、「もしかしたらそんなことなかったのかもしれない」と考えるようになった。

 俺は、桜や、ゆうか、映画オタクと関わりを持って、人間の複雑さを知った。

 前まで俺は、人間は正直な生き物だと思っていた。桜は極端だが、言いたいことを言い、笑いたい時に笑い、怒りたい時に怒る。そういう生き物だと思っていた。

 だが、ゆうかのように、頭の良さを隠して俺らと付き合おうとする人間や、映画オタクのように、色々な人格を使い分けるような人間がいるということを知って、俺は、表面的なことだけでその人間のことを知ることが出来ないのだと悟るようになったのだ。

 そして、母親がなぜ笑っていたかも、彼女を表面的にしか見たことが無い俺には、知りようが無かった。

 けれども、今はまだそれで良いんじゃないかと思ったりもした。

 別に、無理して今すぐ知る必要はないんじゃないか、と。

 今知らないだけで、後になったら簡単に分かるかもしれないから。だから、その時をじっくりと待ってみるのも、案外いいのかもしれない。




 それより、今は桜のことを知るべきだろう。

「多分桜が怒ったのは、オレのやつとは別件だぞ」

「桜はオレとお前が気まずくなってるからって、そんなブチ切れたりしない」

 明日、学校で本人に聞いてみよう。

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