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からっぽ  作者: てりやき
人間
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三十九日目

 せっかくの休日、ゲームばかりでは飽きてしまうということで、俺は小説を読んでいた。

 短くて面白い本を何冊も読んでみようかとも思ったが、結局、「異星の客」というSF小説に()()することにした。

 これは、俺がまだ小さかった頃、家の本棚から引っ張り出してきたものの、あまりにも難しくて読むのを諦めた本だった。

 普通の小説は、漢字が読めなかったり、表現が複雑だったりするが、これは純粋に、読んで理解するのが難しいのだと思う。

 例えば、物語の最初の三文を抜き出してみる。

「むかしなかしあるとろに、ヴァレンタイン・マイケル・スミスという火星人がいた。

 最初の人間による火星探検には、最大の危険は人間に対する人間自身であるという理論から人選された。(ルナ)での最初の人類植民地が建設されてから地球年で八年という当時は、人間による惑星間飛行は無重力落下軌道にたよらなければならなかった」

 こんなのが、小さな字で八百ページ近く書かれているのだ。中学一年生でスラスラと読める方がおかしいだろう。

 当然、俺はスマホを片手に、いつでも調べられる状態で読み進めていった。

 読み進めていく時は、音読するように頭の中で言葉を反芻していった。分からないと思った時には、すぐに前の方から読み返して、何とか理解できるように努力した。

 だが、いかんせん複雑で長い文章をずーっと目で追っていたので、だんだん疲れが溜まっていってしまった。そして、句点「、」が少ないせいで、文の区切りも次第に分からなくなっていき、最終的には数ページ前に読んだ内容を忘れたりしてしまっていた。

 そのせいか、だいぶ経っただろうと時計を見ても、一時間も経っていなかったりした。

 小学校の時から、語彙だけには自信があったが、今日、この本を読んだせいで、寧ろ今までを恥ずかしく思ったりもした。

 とにかく、読むのが大変だった。




 そんなこんなで、とりあえず半分ほど読み進めた。

 大変だったが、その分、色々な発見があった。

 まず、この本が、宇宙探査が本格的に行われる前の時代に、「火星はこうなっているだろうなー」という予想で書かれたものだということ。

 小説の中で、火星人は火星に文明を築いていて、その中で「水の儀式」を行っていた。けれども、実際の火星には、生命体も水も目視で確認できるほど存在していない。特に水に至っては、液体の水は全く無いと言われているので、作者の妄想だったことになる。

 ……いや、それとも、火星の探索が進んでいて、生命体もロクに居ないと分かっていたけど、その上で「もしも火星人が居たら」と仮定して物語を書いたのかもしれない。

 そこらへんの詳しいことは、作者にしか分からない。

 次に、この小説の時代設定は、かなり未来だということ。

 物語には、空飛ぶ車や自動料理マシン、立体的なビデオ通話マシンが当たり前のように出てきた。現実でも技術が日々進歩しているので、これらが完成される日もそう遠くないのかもしれない。

 そして、最後に、作者のハインライン氏のことについて。

 彼は、ものすごく頭が良いのだろう。

 感服だった。

 彼は、火星人が地球にやってくることで起こる、ありとあらゆる政治的問題を予想することで、火星人が地球にやってくるという設定を、初めて物語に組み込むことに成功したのだ。例えば、火星人に人権が有るか無いかの問題だったり、火星の所有権は誰にあるのかという問題だったり、彼の両親が地球人だった場合の相続問題だったり。

 とにかく、読んで「すげぇ」と声に出してしまったほど、俺は感服してしまった。




 今確認したら、まだ半分も読んでなかった。

 読むのは大変だけど、一回読んで終わるなんてもったいないから、最低三回は読みたい。

 この興奮を誰かと共有できないのが、少し残念に思った。

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